110 / 202
第三部 父と子
第10話 面影② ※
しおりを挟む静まり返った夜だった。
中空には、大きな丸い月が浮かぶ。月の光が穏やかに庭のあちこちに満ちている。
青白い光は木々の輪郭を浮かび上がらせ、夜の中に咲く花の白い花弁が輝いていた。どこからか甘い香りが漂ってくる。
どうにも眠ることが出来ずに、イルマは一人、寝台から起き上がった。窓の外を見れば、月明かりが思ったよりもずっと明るい。上掛けを羽織って、そっと部屋を抜け出した。
昼間は見知った庭も夜は別の顔を見せる。一人だけで立っていると、まるで見知らぬ場所に来てしまったかのようだった。
「⋯⋯イルマ」
「わっ!」
イルマは驚きのあまり、叫び声をあげた。振り向けば、シェンバーが立っている。
「ど、どうしたの、シェン」
「どうしたのはこちらが言いたい。窓の外にイルマが一人で歩いているのが見えたから、驚いて外に出たんだ」
「何だか眠れなくて。月がすごく綺麗だったから、庭に出てみようと思ったんだ⋯⋯」
イルマは胸を押さえながら大きく息をついた。するりと頬を撫でられて、シェンバーの顔が近づく。
唇に柔らかい感触があった。何度も口づけられているうちに、お互いに息が熱くなっていく。シェンバーの胸の中に強く抱きしめられて、体から力が抜けそうになる。
「イルマ、⋯⋯久しぶりすぎて、とても我慢できそうにない」
ドクンとイルマの胸が鳴った。
顔を上げると、シェンバーの瑠璃色の瞳が目の前にあった。美しい瞳に見つめられていると、何だかたまらない気持ちになる。
最近はずっと忙しくて、二人の時間もゆっくり取れなかった。口を開けば、王宮に行く準備や夜会のことばかりだ。このまま王宮に向かえば、もっと慌ただしい日々が続くのだろうか⋯⋯。
イルマは、シェンバーの手を取った。
「へ、部屋に行こう。シェン⋯⋯」
歩き出したイルマの手を逆に引き寄せ、シェンバーは一階の自分の部屋に誘った。入った途端に、イルマは素早く服を剥ぎ取られる。
何ひとつ身に着けないままで寝台に寝かされ、雄茎をいきなりシェンバーの口に含まれた。
「あっあっ! シェン!」
イルマが逃げようとしても、シェンバーは体でイルマの足を割り開く。じゅぶじゅぶと音を立てて出し入れされ、鈴口を舌先で突かれた。シェンバーの熱い口内で竿をねっとりと舐め上げられて、イルマの足先までびりびりと快感が走る。
あまりに強い刺激だった。
指に力が入らず、シェンバーを押しのけることもできなかった。
「や、あっ! い、いっちゃう」
シェンバーの喉奥まで咥え込まれた時に、イルマはこらえきれずに吐精した。シェンバーはさらに根元を擦り上げ、雄茎に残る精液も一滴残らず飲み下す。
びくびくと跳ねるイルマの体に、シェンバーは満足げに笑った。
「可愛い、イルマ。ああ、嬉しいな」
シェンバーの手が、ゆっくりとイルマの胸を撫でる。イルマの体はシェンバーに触れられるたびに反応し、緩やかな快感が続く。
シェンバーが小卓に置いてあった香油の瓶を手に取った。
手の平にたっぷりとって温め、指にも纏わりつかせる。シェンバーはイルマの後孔をゆっくりと撫でた。
「久しぶりだからね、ゆっくり解さないと」
そう言いながら、シェンバーはイルマの胸を舐め上げる。膨らみを口に含まれると、イルマの体はすぐに快感を拾い上げた。
小刻みに震えるうちに、後孔にシェンバーの指がつぷりと入ってきた。探るように気持ちのいい場所を見つけられて、そこばかりを何度も擦りあげられる。シェンバーの指が増やされ、奥へ奥へと肉襞をかき分けていく。解された場所全てがじんじんと痺れて、イルマは自分が何を求めているのかを知った。
「シェン⋯⋯!」
「なぁに、イルマ」
イルマが必死で名を呼べば、シェンバーがとびきり優しい声で応える。
「も、もう、欲しい⋯⋯」
シェンバーは満足気に微笑んで、イルマの膝裏をすくった。
イルマの後孔に己の怒張をぴたりと当てて、ゆっくりと中に押し入れる。じわじわと進んでいく怒張を肉襞が包み、シェンバーの体がぶるりと震えた。堪らぬ快感に、馴染むまで抑えようと思っていた腰を思わず動かしてしまう。
「ん! まって、まっ、ああっ」
イルマの声に、シェンバーの腰の動きは一層早くなる。止まらぬ律動にイルマは思わず、ぎゅっと中を締め付けた。
シェンバーの口から熱い息がこぼれる。
「イルマ、すごい。絡みついてくる」
「シェン、あ、あっ!」
肉襞に強く締め付けられ、シェンバーの怒張は限界まで膨れ上がった。自分を制することが出来ずに、奥まで精を叩きつける。
イルマの中に、どくどくと熱い子種が注がれていく。広がる熱が体に染み込んでいくかのようだった。
シェンバーとイルマは、深く繋がったまま唇を重ねた。
お互いを強く強く抱きしめる。指を絡め合って、二人の間に何者も入り込めないように。
⋯⋯この先何があっても、離れない。
シェンバーが呟けば、イルマがぼくも、と頷く。
どちらからともなく唇を求めあい、甘く切ないため息がこぼれた。繰り返される口づけの合間に、想いが溢れ出る。
───愛してる
夜の中にひっそりと、二人の言葉が溶けていく。
夜明けまではまだ遠い。
部屋の中には、蝋燭の柔らかな明かりだけが揺れていた。
68
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです!
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
【完結】100回生まれ変わっても心のないオレの心を奪ったのは黒い竜
MINORI
BL
100回生まれ変わり、98回黒い竜に殺され、99回の人生の記憶を持つ、心と感情を持たない主人公が、唯一の記憶がない初回人生をすごした6体の竜が統べる異世界に、自分の魂を確実に消し去る方法を探す旅に出るお話。
竜が主人公を取り合い、BLになる・・・はず・・・ですが、大分遠いかもしれません・・・。
※このお話は、ムーンライトノベルズ様の方で先行投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる