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第四部 婚礼
第25話 続 初夜① ※
しおりを挟む冷たい布が体に触れて、イルマは、ほっと息をついた。寝台に自分の体がゆっくりと沈みこむ。布が替えられたのだろう。たくさんの花弁はもう見当たらず、少し残念な気がした。
心配そうに自分を見つめる瑠璃色の瞳がある。両手を伸ばして滑らかな頬を撫でると、片手を取られて口づけられた。濡れた髪が色っぽいな、とうっとりする。
シェンバーが啄むような口づけを何度も繰り返す。逞しい胸の中にぎゅっと抱きしめられ、しっとりした肌が重なる。湯殿でぼうっとした頭は楽になったものの、イルマの中に違う熱が生まれた。
「⋯⋯シェン、んッ⋯⋯」
口づけは深くなり、だんだん性急なものへと変わる。息が荒くなり、火がついたように体が熱くなる。イルマの体に触れるシェンバーの手が下へ下へと降りて、求める場所へ向かった。背中から腰、そして、閉じた場所へと。
互いの中心は、もうとっくに硬く張りつめていた。シェンバーの指が入り口に触れ、侵入を試みる。そっと指先を押し込むと、温かいものが中から零れて指先を濡らした。
「あッ⋯⋯。湯⋯⋯」
イルマの体が揺れ、縋るようにシェンバーの背中にしがみつく。
シェンバーは、沸騰しそうな頭と心を必死でなだめて、指を進めた。くちゅくちゅと水音が立ち、潤んだ場所は柔らかいままだった。指を引き抜き一旦体を離すと、イルマの切なげな瞳が自分を見ている。
「ああ、もう⋯⋯!」
イルマの入り口に、必死で昂ぶりを当てる。ゆっくりと腰を進めれば、たちまちしっとりと吸いついてくる。
「あッ⋯⋯あ! ああッ!」
「イルマッ!」
背を弓なりに反らすイルマを、シェンバーは力を込めて寝台に押しつけた。危うく、欲望を吐き出してしまうところだった。うねるような中に進むほど、イルマの口から甘い吐息が漏れる。その姿に自身の熱杭が膨れ上がるのを、シェンバーはもう、どうにも止めることができなかった。
この淡く色づいた肌に口づけて、全身を貪りたい。
脈打つ自分を刻みつけて、名を呼ぶ声が聞きたい。両手で縋りつかれて、自分が欲しいと求められたい。
これは独占欲なのだろうか。いつの間に⋯⋯と思うほど、日に日にイルマへの想いばかりが強くなる。
「シェン。あっ! やだ、大きく⋯⋯」
「⋯⋯そんな姿を見せられたら⋯⋯止められない。⋯⋯イルマ」
シェンバーが腰を揺すれば、目の前の滑らかな肌が赤く染まる。たまらず口づければ、角度が変わって、深く中を抉る。
イルマの体が跳ねて、目尻にうっすらと涙が浮かんだ。必死に舌を絡めてくる姿が健気で、シェンバーの中の火を煽っていく。緩めることもできずに奥まで突き上げれば、強い締め付けに息が止まりそうだった。
「くっ! ⋯⋯イルマ!!」
「ふっ⋯⋯あ! ぁあんっ!」
イルマの手がシェンバーの背に回り、小さく爪を立てる。無意識なのだろう。少しでも体を離そうとすれば必死で縋りついてくる。黄金の瞳が快感に蕩けるのを見て、シェンバーは堪らず、一気に最奥まで突き入れた。
「あっ! あ⋯⋯ふぅッ⋯⋯!」
イルマ自身が弾けて、互いの腹をぱたぱたと白い雫が濡らす。快感に震えている唇をシェンバーの舌が舐めた。瞼に、頬に、首にも熱い舌が這う。仕草は優しいのに、瞳には激しい欲が宿る。
⋯⋯まるで猛獣が獲物を食らう前みたいだ。
イルマは快感に溶けたまま、止まらぬ愛撫を受けていた。自分の奥では、シェンバーが今も熱く脈打っている。体はひくひくと震え続けて、少しも力が入らない。シェンバーはイルマの両足を緩く広げると、荒い息をこぼして、ゆっくりと自身を手前に引き抜いた。その姿に、ぞくりとイルマの背が震える。
「あぁあッ! シェン! 待って!」
シェンバーの熱杭は少しもイルマの言葉を聞かなかった。イルマを寝台に縫い留めて、思いきり何度も奥まで突き上げる。イルマの甘い悲鳴に、シェンバーの昂ぶりは増して、思うままに腰を進めた。
「は⋯⋯ッ! イルマッ!」
イルマの体を折り畳むように、シェンバーは強く腕の中に閉じ込める。余すことなく、イルマの全てを自分のものにしたかった。そして、自分もイルマのものなのだとわからせたかった。
燃え滾るような己の熱を、最奥まで迸らせる。どくどくと注ぐたびに、イルマの中が震え、満ちて、シェンバーの熱をただ一心に受け止めた。
互いに息を詰まらせ、震えながら抱きしめあう。見つめあった瞳は、唯一つの存在だけをその中に宿していた。
ぱちりと目を開けた時に、イルマの目の前には厚い胸板があった。ついと顔を上げれば、すやすやと眠るシェンバーの顔が見える。長いまつ毛が閉じられて、前髪が額に零れている。
ぐっすりと眠っている姿を見るのは、なんだかとても珍しいことのように思えた。あどけない子どものような顔に、自然に笑みがこぼれてしまう。唇に触れたくて指を伸ばそうとするが、少しも自由にならない。自分の体は抱きしめられ、指は絡められて、しっかり握られたままだった。
⋯⋯まるで幼い子どもが大事な玩具を抱きしめて眠っているみたいだ。
そう気がついて、イルマは思わず笑った。
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