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第四部 婚礼
第45話 シェンバー、子どもになる⑧ ※
しおりを挟むシェンの手が伸びて、ゆっくりとぼくの背に回る。腕の中に抱きしめられて、確かな温もりにほっとした。
髪に瞼に優しい口づけが降ってきて、ぼくはシェンの頬を両手で包んだ。白い肌のどこにも、柔らかな丸みはない。頬骨は高くなり、精悍で見惚れるほどに美しい顔に変わった。
幼いシェンの名残を探すようにすりすりと頬を撫でていると、シェンが小さく笑う。
「ずいぶん大きくなった、と思っているだろう?」
「うん⋯⋯。よくわかったね」
「幼子を愛おしむような目をしている。でも、やっぱり今の私を見てほしい」
シェンがぼくの体を引き寄せた。
甘い吐息がかかり、そっとぼくの唇が塞がれる。体から力が抜けると、開いた唇の隙間から柔らかな舌が入ってきた。互いに舌を絡め合ううちに、少しずつ体の奥に火がついていく。
口中にたまった唾液を飲み込めば、瑠璃色の瞳は確かな欲を宿してぼくを見た。
シェンの唇がぼくの首から鎖骨、胸へとゆっくり下りていく。愛撫はどこまでも優しく執拗だった。無骨な指に優しく乳首を捏ねられて、体中に甘い痺れが走る。ぼくの反応を楽しむように、今度は熱い舌が乳首を舐めた。
「⋯⋯ッ!」
「我慢しないで、声、出せばいいのに」
「だって、恥ず、かしい、から⋯⋯」
くすりと笑ったシェンは、手を伸ばして、既に勃ちあがっていたぼく自身に触れた。
「あッ! シェン!!」
もう蜜をこぼしているのに大きな手で扱かれて、たまらず高い声が出た。シェンの口元に妖艶な笑みが浮かび、手の動きが早くなる。頭の芯がぐずぐずに溶けていく。
「シェン、シェ⋯⋯!」
「⋯⋯いい声。もっと聞かせて」
ぼくがシェンの手の中であっけなく極めると、シェンは深い口づけをくれた。舌が柔らかく食まれ、耳元で甘い囁きが聞こえる。
──イルマ、いい子。もっと、感じて、と。
言葉は官能を引きずり出し、あっという間に本能が全てを飲み込んでいく。汗ばんだ肌と肌が重なれば、自分の中に留めていた理性は瞬く間に消えた。
シェンの手が触れたところは、まるで甘美な毒に痺れるようにすぐに熱を持つ。膝を開かれ内腿にもゆっくりと口づけられた。チクリと痛みを感じた柔らかな場所に次々に赤い花が咲いていく。シェンはそこに指でそっと触れる。
「⋯⋯ここに痕があるのを知っているのは私だけだね」
「そこだけじゃな⋯⋯んッ! ⋯⋯シェン」
「ああ、そうだね。イルマの体の、全部に⋯⋯」
シェンはそう言いながら、ぼくの唇を塞ぐ。息もできないほど強く舌を吸われ、シェンの指がたっぷりの香油を纏って中に入ってくる。ぐちゅぐちゅと水音が響けばびくびくと体が跳ね、瞬く間に快感が引き出された。指が増やされ、柔らかく綻んだ場所がもっと、と縋りつく。
「っあ! シェン⋯⋯、シェン、すき」
シェンの熱く昂った楔がゆっくりと中に入ってくる。中へ中へと進むたびに声にならない快楽に揺さぶられた。
「⋯⋯イルマ、知ってる?」
──⋯⋯イルマはね、感じた時にすごく舌っ足らずになるんだ。
そう言いながらシェンの抽送はどんどん激しくなる。ぼくの快楽が何度目かの絶頂を迎えた時に、ひときわ強く穿たれて、奥に熱いものが満ちた。
「イルマ⋯⋯愛してる」
力の抜けた体に、何度も優しい言葉が囁かれる。たしかに、シェンの言うとおりだ。ぼくはまるで小さな子どものように、好き、とだけ返し続けた。
「イルマ、口を開けて」
シェンの腕の中でまどろみながら、言われるがままに開けた口に、小さな欠片が落とされる。
「⋯⋯あま、い。マォン?」
「そう、好きでしょう?」
たった一つだけ、あの子が残していったもの。柔らかな小さな手が渡してくれたもの。
マォンの甘みがあの子の笑顔に重なる。
シェンの胸にすり寄れば、腕の中にぎゅっと抱きしめられた。
「⋯⋯シェン、もう一度ガゥイに⋯⋯孤児院に行こう。今のシェンが見たものは、きっと、あの子に届く」
シェンはぼくの髪を撫でながら、瞳を瞬く。そして、わかったと花のように微笑んだ。
【シェンバー、子どもになる 了】
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