17 / 66
17話 翌朝(1)
しおりを挟む
穴ぼこだらけの石壁から差し込む朝の光に、僕は目を覚ました。
体を起こした。体中がきしんでいる。
でもすっきりもしていて。
僕は見慣れない部屋の中を見回して、ああそうか、異世界転生?ってやつをしたんだっけ、と思い出す。
今、小屋の中には僕しかいなかった。
レンはどこにいったんだろう、と思いながら立ち上がり、僕は思い出した。
昨日の夜、ここで起きた出来事を。
昨日僕は、急に体が疼きだして、どうしようもなくなって、それで……。
レンにたくさん気持ちよくしてもらって、僕は女の子みたいによがって、変な声をあげて……。
血の気が引いていった。
自己嫌悪に押し潰されそうになる。
なに、あれ。
僕は外の空気を吸いたくなった。
僕は情事の現場から逃げるように、その小屋を出た。
外は森だった。ここは森の中にある小屋なんだ。隠れ家としては最適なんだろう。
僕は家の周りを一周してみることにした。壁伝いに裏側に回ると、庭のように開けていた。
庭の向こうにもうひとつ木造の小屋があり、庭には赤い実をつけた樹が生えていた
樹の下でレンが赤い実をもいでいる。
僕はレンを見てうろたえる。
どうしよう、いったいどんな顔をすればいいんだ。
僕の気配に気づいた様子で、レンがこちらに振り向いた。
「お、起きたかヨウ」
「うっ……。お、おはっ……」
僕はしどろもどろになってうつむいてしまう。
レンはくすっと笑った。僕に近づいてきて、赤い実を差し出す。
りんごによく似た形の、でも柔らかくて感触はさくらんぼみたいな不思議な木の実。
「これうまいぜ、食えよ」
言ってレンは、大きな切り株に腰を下ろした。赤い実を受け取った僕もその隣に座る。
僕が黙っていると、
「昨日のことは気にするな、転生者は『飢餓』状態になるとみんな、ああなるんだ」
「飢餓?」
「そっ。エロいことしたくて仕方なくなる飢え。あれは地獄の苦しみだよな。こまめにオナニーして体の中の精液……『転生者液』抜かないとあの状態になっちまう。あの状態は危険なんだ」
「き、危険って?」
「誰でもいいからセックスしたい、って気持ちになって、せっかく潜伏してたのに現地人のいるところに自ら出ていっちまう。で、つかまって、奴隷さ」
「なるほど……」
「さらに極限まで液を溜め続けると、本当に気が狂って廃人になっちまうとかなんとか」
「ええー!?」
射精しないと廃人になっちゃう体ってなにそれ怖い!
「まあだから、昨日のことは忘れちまえ。俺も忘れるから」
「う、うん……」
ありがたいけど、でもなんでだろう、それはそれでちょっと寂しい気もしてしまった。
だって昨日確かに僕は、幸せだったから。
「食えよ、皮ごと食えるぜ」
「あ、ありがとう」
赤い実をかじってみた。甘さがじゅわっと口の中に広がる。本当においしかった。
「わ、おいしいね!皮も甘いんだ」
「だろ?」
「僕ほんと、君に会えてラッキーだった」
僕はしみじみとつぶやいた。
現地人から助けてもらって、いろいろな情報を教えてもらって、食べ物も寝床も提供してもらえて。性的な「飢餓」まで解消してもらえて……。
「それは俺も同じだ。ずっと一人で心細かったからさ、仲間できて本当に良かった」
そう言って僕に微笑みかける瞳がとても優しくて、僕は胸がドキドキしてしまう。
やっぱり、かっこいい。
僕はレンが好きだ。
向こうの世界では絶対に独り占めなんて出来なかったレンを、今、僕は独り占めできているんだ。
そう思うと嬉しくて仕方ない。
そういえば……。
「ね、ねえレン。あっちの世界……日本に、彼女とかいた?」
体を起こした。体中がきしんでいる。
でもすっきりもしていて。
僕は見慣れない部屋の中を見回して、ああそうか、異世界転生?ってやつをしたんだっけ、と思い出す。
今、小屋の中には僕しかいなかった。
レンはどこにいったんだろう、と思いながら立ち上がり、僕は思い出した。
昨日の夜、ここで起きた出来事を。
昨日僕は、急に体が疼きだして、どうしようもなくなって、それで……。
レンにたくさん気持ちよくしてもらって、僕は女の子みたいによがって、変な声をあげて……。
血の気が引いていった。
自己嫌悪に押し潰されそうになる。
なに、あれ。
僕は外の空気を吸いたくなった。
僕は情事の現場から逃げるように、その小屋を出た。
外は森だった。ここは森の中にある小屋なんだ。隠れ家としては最適なんだろう。
僕は家の周りを一周してみることにした。壁伝いに裏側に回ると、庭のように開けていた。
庭の向こうにもうひとつ木造の小屋があり、庭には赤い実をつけた樹が生えていた
樹の下でレンが赤い実をもいでいる。
僕はレンを見てうろたえる。
どうしよう、いったいどんな顔をすればいいんだ。
僕の気配に気づいた様子で、レンがこちらに振り向いた。
「お、起きたかヨウ」
「うっ……。お、おはっ……」
僕はしどろもどろになってうつむいてしまう。
レンはくすっと笑った。僕に近づいてきて、赤い実を差し出す。
りんごによく似た形の、でも柔らかくて感触はさくらんぼみたいな不思議な木の実。
「これうまいぜ、食えよ」
言ってレンは、大きな切り株に腰を下ろした。赤い実を受け取った僕もその隣に座る。
僕が黙っていると、
「昨日のことは気にするな、転生者は『飢餓』状態になるとみんな、ああなるんだ」
「飢餓?」
「そっ。エロいことしたくて仕方なくなる飢え。あれは地獄の苦しみだよな。こまめにオナニーして体の中の精液……『転生者液』抜かないとあの状態になっちまう。あの状態は危険なんだ」
「き、危険って?」
「誰でもいいからセックスしたい、って気持ちになって、せっかく潜伏してたのに現地人のいるところに自ら出ていっちまう。で、つかまって、奴隷さ」
「なるほど……」
「さらに極限まで液を溜め続けると、本当に気が狂って廃人になっちまうとかなんとか」
「ええー!?」
射精しないと廃人になっちゃう体ってなにそれ怖い!
「まあだから、昨日のことは忘れちまえ。俺も忘れるから」
「う、うん……」
ありがたいけど、でもなんでだろう、それはそれでちょっと寂しい気もしてしまった。
だって昨日確かに僕は、幸せだったから。
「食えよ、皮ごと食えるぜ」
「あ、ありがとう」
赤い実をかじってみた。甘さがじゅわっと口の中に広がる。本当においしかった。
「わ、おいしいね!皮も甘いんだ」
「だろ?」
「僕ほんと、君に会えてラッキーだった」
僕はしみじみとつぶやいた。
現地人から助けてもらって、いろいろな情報を教えてもらって、食べ物も寝床も提供してもらえて。性的な「飢餓」まで解消してもらえて……。
「それは俺も同じだ。ずっと一人で心細かったからさ、仲間できて本当に良かった」
そう言って僕に微笑みかける瞳がとても優しくて、僕は胸がドキドキしてしまう。
やっぱり、かっこいい。
僕はレンが好きだ。
向こうの世界では絶対に独り占めなんて出来なかったレンを、今、僕は独り占めできているんだ。
そう思うと嬉しくて仕方ない。
そういえば……。
「ね、ねえレン。あっちの世界……日本に、彼女とかいた?」
10
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる