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10話 転生者(5)

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 僕はまだこの世界のことをちゃんと聞いていなかったことを思い出す。

「一体、なんなのこの世界は。それに体まで、めちゃくちゃな変化してるし」

 言ってから疑問に思う。体が化け物になってしまったのは、僕だけなのだろうか。

「あ、あの、レンは体に変化、あった?」

 レンはふっと皮肉げに笑った。

「変化って、乳首が射精したり?」

 僕は無言で頷いた。レンもなのか、と思いながら。僕だけじゃなかったのだ。

「はっきり言うぜ、この世界は俺たち『転生者』にとって地獄、いやそれ以下だ。奴ら現地人にとって、俺たちは極上の性的嗜好品なんだ」

「性的……嗜好品……」

 人ではなくモノ、と言うことか?

「現地人を抱くより千倍『いい』んだってよ、転生者とのセックスは。でやつらが転生者液って呼んでる俺たちの精液、あれは現地人にとって最高級の麻薬だ。ひと舐めするだけで、脳の快感中枢ぶっ壊して限界突破の快楽を与えるんだってよ」

「な、なんだ、それ……」

「大昔この世界では邪神が信仰されていて、その邪神に捧げる性的な供物として召喚の儀を行ったのがはじまりらしい。邪神の力で時空にぽっかり穴を開けちまった。その穴を通して俺たちの世界から、性的魔改造を施された人間がやってくるってわけだ」

「時空の落とし穴、ってこと?」

「そんな感じだな。もうこっちの世界で邪神信仰は廃れてる。でも時空の穴は縮小しつつも残された。召喚の儀を行わなくても、その穴は空間を漂って、たまに人を飲み込んじまうんだ。で邪神信仰の廃れたこっちの世界では、たまにやってくる転生者を邪神に捧げることもなく、ただ人々が競い合って我が物にしようと躍起になるようになった」

 背筋が寒くなった。転生者は元々は邪神への供物。そして今は麻薬であり、性的嗜好品。

「ほ、他の転生者の人たちはどこに?」

「俺みたいに潜伏してるか、囚われて首輪つけられて性奴隷になってるか」

「首輪……」

 レンはガラクタの中を漁って、黒い首輪を取り出した。

「これだよ、これ。俺は持ち主から逃亡してきた、逃亡奴隷だ。持ち主を殺して鍵を奪って外したんだが、まあなんかの役に立つことがあるかもって思って、とっといてある」 
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