転・精・者/邪神の生贄 ~地獄みたいな異世界で、僕は憧れの彼に会う~

空月 瞭明

文字の大きさ
19 / 66

19話 現地人の街へ(1)

しおりを挟む
 レンはジュダ……えっと、ウマに乗って森を抜け、草原を走った。
 僕はフードつきローブを羽織り、レンの前にまたがらせてもらった。レンの腕の中にすっぽり納まって、初めての乗馬体験に感動してしまった。
 王子様みたいなレンと一緒に、草原を馬で駆けるなんて、お姫様にでもなった気分。……なんてアホなことを考えてしまった。

 やがて前方に丸い城壁が見えてくる。
 レンはその城壁の門前でウマから飛び降りた。そして不器用な僕が、ほとんど落っこちるような形で降りるのを、下で抱きとめてくれた。
 恥ずかしいやら嬉しいやら。

 門は開け放たれていて、その中にぞろぞろと現地人たちが入っていく。門番たちは黙視するだけで、特に質問を寄越すようなこともない。
 ウマを引いて僕達は、なんなく城壁の中に入れた。

「簡単に入れちゃうんだね」

「ああ、このアイロウって街はでかいからな、こういう人の出入りの多い街は検問がほとんどないことが多い」

「へえ。それにしても賑わってるねえ」
 
 僕はきょろきょろ、その賑わいを見渡した。
 石畳の通りが迷路のようにあちこちに伸び、赤い洋瓦の屋根を頂く石造りの建物が所狭しと立ち並んでる。ヨーロッパ風の街並みだ。
 そして通りの上には、青空市場のテントが軒を並べていた。
 青菜や果実、肉や魚、工芸品や衣料品などなど、色鮮やかで目にも楽しい。

 そして色々な人種がいた。耳が尖ってる種族が一番多かったけれど、耳は普通で頭に角が生えている人もいたし、肌が緑色の人もいたし、尻尾が生えてる人もいた。

「色んな連中がいるだろ。でも転生者にとっては全員敵だ。『無印』とバレるとすぐ襲ってくるぜ」

 人混みの中を歩きなあら、レンが小声で囁いた。

「無印?」

「そっ、尖り耳もない角もない尻尾もない、そういうのが無印で、転生者の特徴だ」

 付け耳は本当に大事なんだなと思った。僕はフードをより深く被り直した。絶対に外れないように気をつけなければ。緊張する……。
 
 レンは路地から路地に曲がり、表の喧騒から奥まった静かな一角にまでやってきた。
 僕に読めない文字で書かれた看板のある店の扉をくぐる。扉のベルがからんからんと鳴った。
 暗くてホコリっぽいが、表の見かけより奥行きのある店だった。カウンターの向こう側、様々な種類の武器や鎧が並んでいた。

 誰もいないかと思ったが、奥のほうから一人の老人が出てきた。かぎ鼻と尖った耳、曲がった腰。ほとんど髪は抜け落ちていて、顔中しわだらけだった。
 老人はレンを見て、目をきらりと光らせる。

「おお、久しぶりじゃのう、レン。忘れられたかと思って、わしゃ寂しかったぞ。なんじゃい、その連れは」

 老人は僕をじろじろと見た。そしてにやりと笑う。人差し指を上にむけて、くいと曲げた。

「ちょっと来い」

「えっ……」

 僕はためらいながらも、カウンターに近づく。カウンター越し、老人がいきなり僕のフードをばっと外した。
 僕の尖っていない耳が晒される。

「やはりの、おぬしも転生者か」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...