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『へんなの』
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もう30年くらい前、祖父母の家で体験した話。
今でもアレが何だったのかはわからないし、わかりたくもない。
当時、中学生だった自分は、夏休みに両親の里帰りに付き合わされる格好で、他県にある祖父母の家を訪れていた。自分が住んでるとこからは車で軽く4時間はかかる、結構な遠方で、しかも兄と姉は同行せずに留守番をするという。
中学生という難しい時期、そろそろ受験も頭の片隅にチラつき始めていた当時の自分には、遠方の田舎で数日過ごす、なんてことは耐え難い苦痛で、行きの車の中でずっと両親に毒づいていたことを覚えている。
祖父母の家は山のふもとに建つ、古いが立派な家だ。母屋の他に蔵もあり、庭はそのまま山とつながっている。
小学生の頃なんかは、地元では見ない虫やトカゲなどに興奮し、日が暮れるまで山の中まで入って遊んだもんだったが、思春期真っ盛りの中学生ともなれば、話は別。
到着するなり、祖父母との挨拶もそこそこに、俺は道中、親が気を遣って珍しく買ってくれた、数冊のマンガを手に、客間に閉じこもった。
襖を隔てた居間からは、母が取り繕うように、難しい年頃だから、とか話している声が耳に入ってくる。それがまた、当時の俺の神経を逆撫でした。
俺は畳に横になり、苛立ちを収めるようにマンガを読み耽った。
しばらくマンガを読むうち、気持ちも落ち着いてきた俺は、何の気無しに、口笛を吹いた。
すると、直後、襖が勢いよく開き、母が眉を顰めながら、強張った顔で俺を見つめ、
「それ、今はいいけど、夜は絶対、やめなさい」
と、やや強い口調で言った。普段は温厚で、ヒステリックに叱ることもない母が、珍しく怒っているようだった。
どうせ、さっきの祖父母への態度が気に入らなかったのだろう、と思った俺は、思春期ならではの反抗心から、素直にハイと言うことができず、思わず言い返した。
なんで?夜、口笛吹いたら、なんかあんの?と。
「夜に口笛を吹くと、山から『へんなの』が降りてくるって、ずっと言われてたからよ」
母はそう言い、俺を睨んだ。
母の神妙な様子とはかけ離れた、子供じみた理由に、俺は思わず吹き出した。
おおかた、躾の為にそんな迷信めいた脅しをかけていたのだろう。
「夜に爪を切ると親が早死にする」とか、そんな類のよくある戒めだ。
客間の窓から見える庭と、その奥に広がる山の緑はとてものどかで、蝉の鳴き声が遠くで渦を巻くように聞こえている。
「はいはい」
庭から視線をマンガに戻し、母をあしらうように返事をした俺は、そのまま夕食の時間まで、マンガを読むことに没頭した。
ご飯よ、と俺を呼ぶ声が居間から聞こえた頃には、陽が長い夏とはいえ、外はもう真っ暗になっていた。
普段使わないであろうテーブルを出して繋げて、その上に並べられた祖母の手料理の数々。
ほぼほぼ野菜で構成されたそれらを見た俺は、「肉じゃねえのかよ」という思いをぐっと堪え、食卓についた。
思春期特有の理由なき両親への苛立ちと、一年に一回も会わない祖父母への気恥ずかしさから、最低限の会話に徹しながら、俺はテレビをぼんやりと見ていた。
巨人戦が始まり、実況の甲高い声が、その場の居心地の悪さを僅かに緩和してくれている。
1時間程経って、祖父母と両親の談笑も無くなり、皆それぞれ食卓を後にした。
母と祖母は台所、父は風呂、祖父はトイレだったと思う。
ひとり食卓に残された俺は、枝豆を食いながらぼんやりと、ナイターを観ていた。
打席には落合が入って、大きくバットを寝かせ構えている。
ピィィィィーーッ……
本当に何気なく、俺は口笛を吹いていた。
昼間の母からの戒めも忘れ、無意識に、落合の応援歌に合わせて。
自分の発した音に、ハッと気づき、慌てて唇をへの字にした。時間にして、2秒かそこらの出来事だ。
すると、
ザザザザザザザザ…………
庭に面した窓の向こう、山の奥から、物凄い勢いで、駆け降りてくる何ものかの足音が、一直線に、自分を目掛けて向かってくる。
バンバンバンバンバンバン!!!!!
窓を激しく叩く音が、居間に響いた。庭に面した窓は、暑さを和らげようと開けたままの外窓と、閉め切った内窓の雪見障子。
その雪見障子のガラスを、猪のような獣の前足が、激しく叩いていた。
息を吐く間も無く、吸い寄せられるようにガラスの向こうに視線を向けた俺は、その前足とは似つかわしくない、異様な何ものかの姿に、短い悲鳴をあげた。
大きさは中型犬ほどだっただろうか、四足歩行の毛皮に覆われた身体に、顔の潰れた赤ん坊のような、奇怪な頭部が付いている。
更に奇怪だったのは、そいつの背中にはいくつも、木の枝が突き刺さっていた。
そいつがガラスを叩きながら、潰れた口元からピィィ、ピィィ、と、まるで俺の口笛を真似るかのような、声とも音ともつかないものを吐き出している。
恐怖に凍りついた俺は、立ち上がることすらできず、ただ呆然とそいつを見ていた。不思議なことに、そいつのピィィ、という声が聞こえるたび、頭の中に何故か「懐かしい」という感情が込み上げてくる。
「耳、塞げぇっ」
トイレから出た祖父の、突き刺すような声にハッと我に帰った俺は、慌てて両手で耳を塞いだ。
祖父は、普段の柔和な表情からは想像もできない鬼の形相で、叫びながら駆け寄ってきた。
「けえるんど!けえるんど!」
塞いだ耳にもはっきりと聞こえる、祖父の怒鳴り声。
台所から転げるように飛び出してきた祖母も、大声で周囲の音をかき消すように、念仏を唱えている。
「けえるんど!!」
祖父は一際大きな声で叫ぶと、雪見障子をガラッと開け、庭先に落ちていた木の枝を引っ掴み、そいつの背中に突き立てた。
ピギッッ!!
とそいつは悲鳴をあげ、祖父の顔を恨めしげに睨むと、山の奥へと走り去って行った。
荒い息を吐きながら、庭先に出た祖父母は、キョロキョロと辺りを見回すと、やがて居間に戻ってきた。
俺はガチガチと歯を鳴らして震えていた。
耳にはあの口笛のような、奇怪な音が僅かに残っていたが、落合のホームランに沸く実況の大袈裟な絶叫が、それを吹き飛ばしてくれた。
祖父母は何ごともなかったように、俺に優しく声をかけた。何を言われたかは覚えていない。
少しして、母が台所から、父が風呂場から相次いで出てきた。2人とも、震える俺の様子を見て、キョトンとしている。まるで、今の騒ぎが「無かった」かのように。
俺は、恐怖と安堵と苛立ちとがごちゃ混ぜになった感情から、大泣きした。
そして、客間にこもりタオルケットを頭から被って、数分前に起きた出来事を懸命に理解しようとした。
あいつは一体何だったのか?
あいつの発する音から感じた懐かしさは、何なのか?
祖父母の対処は手慣れている感じだった、あいつに刺さった無数の枝は、過去に祖父が刺したもの?
落合が打席に入ってホームランを打つまでの僅かな時間しか経っていない?
両親はなぜ全く気づいていない?
様々な疑問が頭の中をぐるぐると渦巻いているうちに、俺はいつの間にか眠ってしまったようで、気がついたときにはもう朝になっていた。
俺は雪見障子を開けて庭先に出てみた。
窓を取り囲むように大量に、塩が撒かれていた。そして、庭先から山へと、どす黒い染みが点々と続いていた。
昨晩の出来事が、おそらく事実だったのだろうと思わせる庭先の様子に、俺が息を呑んでいると、祖母が洗濯物を干す手を止め、俺に振り返りにっこりと微笑んだ。
「山だすけ」
俺の不安や疑問を包むように、ただ一言、そう言った祖母は、再び洗濯物を干し始めた。
山だから、で全てが説明できるわけもない。だが、昨晩の祖父母の、普段は絶対に見せない姿を目の当たりにしていた俺は、ストンと腑に落ちるものがあった。
山と共に生きる祖父母にとっては、ああいう化け物ですら日常の一部。野生動物と同じような扱いなのだろう。そう思えば、合点がいった。
それ以降、苛立ちや気恥ずかしさよりも、祖父母への畏敬の念が強まった俺は、他愛ない話をし、笑い合い、小さな頃のように無邪気に遊びながら数日を過ごし、帰路についた。
あいつが結局何だったのかは、今もわからないし、わかりたくもない。祖父母はとうに他界し、両親もそんなものは見なかった、と口を揃えて言っていた。
祖父母の家は、田舎ということもあり、親族で相続したがる人もいなかった為、売りに出された。今は、リノベーションされて、古民家カフェになっていると聞く。
現在のところはランチ営業のみとの話だが、そのままで良いと思う。
夜、うっかり口笛を吹いてしまったら、あいつが山から降りてきてしまうから。
今でもアレが何だったのかはわからないし、わかりたくもない。
当時、中学生だった自分は、夏休みに両親の里帰りに付き合わされる格好で、他県にある祖父母の家を訪れていた。自分が住んでるとこからは車で軽く4時間はかかる、結構な遠方で、しかも兄と姉は同行せずに留守番をするという。
中学生という難しい時期、そろそろ受験も頭の片隅にチラつき始めていた当時の自分には、遠方の田舎で数日過ごす、なんてことは耐え難い苦痛で、行きの車の中でずっと両親に毒づいていたことを覚えている。
祖父母の家は山のふもとに建つ、古いが立派な家だ。母屋の他に蔵もあり、庭はそのまま山とつながっている。
小学生の頃なんかは、地元では見ない虫やトカゲなどに興奮し、日が暮れるまで山の中まで入って遊んだもんだったが、思春期真っ盛りの中学生ともなれば、話は別。
到着するなり、祖父母との挨拶もそこそこに、俺は道中、親が気を遣って珍しく買ってくれた、数冊のマンガを手に、客間に閉じこもった。
襖を隔てた居間からは、母が取り繕うように、難しい年頃だから、とか話している声が耳に入ってくる。それがまた、当時の俺の神経を逆撫でした。
俺は畳に横になり、苛立ちを収めるようにマンガを読み耽った。
しばらくマンガを読むうち、気持ちも落ち着いてきた俺は、何の気無しに、口笛を吹いた。
すると、直後、襖が勢いよく開き、母が眉を顰めながら、強張った顔で俺を見つめ、
「それ、今はいいけど、夜は絶対、やめなさい」
と、やや強い口調で言った。普段は温厚で、ヒステリックに叱ることもない母が、珍しく怒っているようだった。
どうせ、さっきの祖父母への態度が気に入らなかったのだろう、と思った俺は、思春期ならではの反抗心から、素直にハイと言うことができず、思わず言い返した。
なんで?夜、口笛吹いたら、なんかあんの?と。
「夜に口笛を吹くと、山から『へんなの』が降りてくるって、ずっと言われてたからよ」
母はそう言い、俺を睨んだ。
母の神妙な様子とはかけ離れた、子供じみた理由に、俺は思わず吹き出した。
おおかた、躾の為にそんな迷信めいた脅しをかけていたのだろう。
「夜に爪を切ると親が早死にする」とか、そんな類のよくある戒めだ。
客間の窓から見える庭と、その奥に広がる山の緑はとてものどかで、蝉の鳴き声が遠くで渦を巻くように聞こえている。
「はいはい」
庭から視線をマンガに戻し、母をあしらうように返事をした俺は、そのまま夕食の時間まで、マンガを読むことに没頭した。
ご飯よ、と俺を呼ぶ声が居間から聞こえた頃には、陽が長い夏とはいえ、外はもう真っ暗になっていた。
普段使わないであろうテーブルを出して繋げて、その上に並べられた祖母の手料理の数々。
ほぼほぼ野菜で構成されたそれらを見た俺は、「肉じゃねえのかよ」という思いをぐっと堪え、食卓についた。
思春期特有の理由なき両親への苛立ちと、一年に一回も会わない祖父母への気恥ずかしさから、最低限の会話に徹しながら、俺はテレビをぼんやりと見ていた。
巨人戦が始まり、実況の甲高い声が、その場の居心地の悪さを僅かに緩和してくれている。
1時間程経って、祖父母と両親の談笑も無くなり、皆それぞれ食卓を後にした。
母と祖母は台所、父は風呂、祖父はトイレだったと思う。
ひとり食卓に残された俺は、枝豆を食いながらぼんやりと、ナイターを観ていた。
打席には落合が入って、大きくバットを寝かせ構えている。
ピィィィィーーッ……
本当に何気なく、俺は口笛を吹いていた。
昼間の母からの戒めも忘れ、無意識に、落合の応援歌に合わせて。
自分の発した音に、ハッと気づき、慌てて唇をへの字にした。時間にして、2秒かそこらの出来事だ。
すると、
ザザザザザザザザ…………
庭に面した窓の向こう、山の奥から、物凄い勢いで、駆け降りてくる何ものかの足音が、一直線に、自分を目掛けて向かってくる。
バンバンバンバンバンバン!!!!!
窓を激しく叩く音が、居間に響いた。庭に面した窓は、暑さを和らげようと開けたままの外窓と、閉め切った内窓の雪見障子。
その雪見障子のガラスを、猪のような獣の前足が、激しく叩いていた。
息を吐く間も無く、吸い寄せられるようにガラスの向こうに視線を向けた俺は、その前足とは似つかわしくない、異様な何ものかの姿に、短い悲鳴をあげた。
大きさは中型犬ほどだっただろうか、四足歩行の毛皮に覆われた身体に、顔の潰れた赤ん坊のような、奇怪な頭部が付いている。
更に奇怪だったのは、そいつの背中にはいくつも、木の枝が突き刺さっていた。
そいつがガラスを叩きながら、潰れた口元からピィィ、ピィィ、と、まるで俺の口笛を真似るかのような、声とも音ともつかないものを吐き出している。
恐怖に凍りついた俺は、立ち上がることすらできず、ただ呆然とそいつを見ていた。不思議なことに、そいつのピィィ、という声が聞こえるたび、頭の中に何故か「懐かしい」という感情が込み上げてくる。
「耳、塞げぇっ」
トイレから出た祖父の、突き刺すような声にハッと我に帰った俺は、慌てて両手で耳を塞いだ。
祖父は、普段の柔和な表情からは想像もできない鬼の形相で、叫びながら駆け寄ってきた。
「けえるんど!けえるんど!」
塞いだ耳にもはっきりと聞こえる、祖父の怒鳴り声。
台所から転げるように飛び出してきた祖母も、大声で周囲の音をかき消すように、念仏を唱えている。
「けえるんど!!」
祖父は一際大きな声で叫ぶと、雪見障子をガラッと開け、庭先に落ちていた木の枝を引っ掴み、そいつの背中に突き立てた。
ピギッッ!!
とそいつは悲鳴をあげ、祖父の顔を恨めしげに睨むと、山の奥へと走り去って行った。
荒い息を吐きながら、庭先に出た祖父母は、キョロキョロと辺りを見回すと、やがて居間に戻ってきた。
俺はガチガチと歯を鳴らして震えていた。
耳にはあの口笛のような、奇怪な音が僅かに残っていたが、落合のホームランに沸く実況の大袈裟な絶叫が、それを吹き飛ばしてくれた。
祖父母は何ごともなかったように、俺に優しく声をかけた。何を言われたかは覚えていない。
少しして、母が台所から、父が風呂場から相次いで出てきた。2人とも、震える俺の様子を見て、キョトンとしている。まるで、今の騒ぎが「無かった」かのように。
俺は、恐怖と安堵と苛立ちとがごちゃ混ぜになった感情から、大泣きした。
そして、客間にこもりタオルケットを頭から被って、数分前に起きた出来事を懸命に理解しようとした。
あいつは一体何だったのか?
あいつの発する音から感じた懐かしさは、何なのか?
祖父母の対処は手慣れている感じだった、あいつに刺さった無数の枝は、過去に祖父が刺したもの?
落合が打席に入ってホームランを打つまでの僅かな時間しか経っていない?
両親はなぜ全く気づいていない?
様々な疑問が頭の中をぐるぐると渦巻いているうちに、俺はいつの間にか眠ってしまったようで、気がついたときにはもう朝になっていた。
俺は雪見障子を開けて庭先に出てみた。
窓を取り囲むように大量に、塩が撒かれていた。そして、庭先から山へと、どす黒い染みが点々と続いていた。
昨晩の出来事が、おそらく事実だったのだろうと思わせる庭先の様子に、俺が息を呑んでいると、祖母が洗濯物を干す手を止め、俺に振り返りにっこりと微笑んだ。
「山だすけ」
俺の不安や疑問を包むように、ただ一言、そう言った祖母は、再び洗濯物を干し始めた。
山だから、で全てが説明できるわけもない。だが、昨晩の祖父母の、普段は絶対に見せない姿を目の当たりにしていた俺は、ストンと腑に落ちるものがあった。
山と共に生きる祖父母にとっては、ああいう化け物ですら日常の一部。野生動物と同じような扱いなのだろう。そう思えば、合点がいった。
それ以降、苛立ちや気恥ずかしさよりも、祖父母への畏敬の念が強まった俺は、他愛ない話をし、笑い合い、小さな頃のように無邪気に遊びながら数日を過ごし、帰路についた。
あいつが結局何だったのかは、今もわからないし、わかりたくもない。祖父母はとうに他界し、両親もそんなものは見なかった、と口を揃えて言っていた。
祖父母の家は、田舎ということもあり、親族で相続したがる人もいなかった為、売りに出された。今は、リノベーションされて、古民家カフェになっていると聞く。
現在のところはランチ営業のみとの話だが、そのままで良いと思う。
夜、うっかり口笛を吹いてしまったら、あいつが山から降りてきてしまうから。
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