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第26話 桜岡さん視点②

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 どうして|パンツ<これ>を渡さなくてはイケないの?!頭おかしいんじゃないの?!
 そう思っているのに!

「……はい。これで良い? 」

 片手に収まる様に小さく丸め、当たり前の様に男子生徒に手渡した。

「……はい。これで良い? 」

 もう嫌。早く此処から逃げたい!私はその一心だった。

「ねぇ、もう帰って良い? 」

 パンツも渡したんだし、もう用はないでしょ?!

「ん――、良いけど。桜岡ちゃん、ノーパンで帰るの? 」

 確かにそうだ。どうしてだろう。そんな当たり前の事も気付かないなんて。

「ねぇ、もう良いでしょ? それ、返してよ」

「良いよ。でも、一つだけお願い聞いて欲しいな」

「分かったから返して! 」

「ほら、あんまり大きい声出すと誰か来ちゃうよ? 良いの? ノーパンなのに」

 この男の言う通りだ。
 この場所に居る事自体問題だけれど、|ノーパン<こんな状態>で戻って、もし万が一に誰かに見られてしまったら?

「何をすればいいの? 」

 この男からパンツを取り返さないと。そう思った。冷静に考えれば何故さっき素直にパンツを手渡したのか。

 分からない。それが当然だと思ったから?

「うーん、難しい事は言わないよ。とりあえず声は出さないで、目を反らさないで、逃げ出さないでね」

 何かお願いされてるけど、とにかく返してもらえるなら。

 そして、男は躊躇する事無くズボンを脱ぎ、一緒に下着まで脱いだ。

「ひっ……」

 私は思わず小さく悲鳴を上げた。叫べば誰か助けに来てくれるかも知れないのに、何故か声が出なかった。
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