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第1章 【異世界召喚】アグストリア城
第5話 アリアのお願い。
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「お願いがあるのですが」
アリアさんの話を聞くために、俺達は移動する事にした。フローラが寝てるから、起こしちゃうと可哀そうだしね。
調理場として用意された部屋には、アリアさん用の簡易的なベッドと、そのすぐ横に簡素なテーブルが置いてある。本当は此処で食事をするつもりだったらしい。一人で。
3人で食べて良かったよ。メイドは基本こうやって主から見えない所で食事をし、寝るのも勿論主とは別部屋なんだけど。アリアさんが良くても、俺が何か嫌だよ。日本の一般庶民の感覚だもん。
アリアさんは俺にベッドに座らせ、自分はスツールの様な腰掛けを持ってきて座っている。
メイド服の寝間着なのかな。薄い生地のワンピースの様な服を着ている。脚が…アリアさんの生足で御座います!有難う御座います!
昼間はまとめて結い上げている髪も、今は胸元まで下ろされている。
レッドブラウンの髪。まぁ俺がそんな色知ってる訳ないんだけど。誰の知識だろうか。
大人しい感じだが、光に照らされるとほんのり赤っぽくも見える。
急に大人っぽく見えて…昼間とのギャップがあり過ぎて、ちょっとドキドキしてしまうのは気のせいではない……ハズ。
さて。
「アリアさんのお願いって何でしょう。何かお手伝いですか?」
力仕事とかなら喜んでお手伝いしますとも。煩悩?下心?そんなもの在りませんよ?
「いえ、申し上げにくいのですが……」
少し困った顔をして、言い淀む。何を遠慮しているんだか。
あっ、エッチな事ですか?
「試しに言ってみて下さいよ。協力できる事なら何でもしますよ」
「何でも…ですか?」
アリアさんの目が怪しく光った……気がした。
「え、ええ。そうですね。大丈夫ですよ?……多分」
何だろう、ちょっと背中に寒気が……。
「あの……一緒にお酒を飲んで頂けないでしょうか」
「ん~と――、はい?」
「えっと、ですから……先程、久々にワインを頂きまして……その、きっとアオイ様がいらっしゃる間しか飲めないと思いまして……」
エッチな事じゃなかった―!恥ずかしい――!
「良いですよ、そんな事で良ければっ」
メイドさんて普段お酒とか飲めないんだね。いや、勤務中に何を言っている!って怒る人もいるかもしれないけど、俺は夜なんだし気にしないし、そんな日が在ったって良いと思う訳ですよ。
「有難う御座いますっ、アオイ様!あのワイン、シグマウリス国のストーンブリッジ領でしか作られてないんです!」
「何て?どこだって?」
「シグマウリス国です!此処から3つ程国を渡った先にある王国です。ご存じ無いですか?」
「ご存じ無いです」
何処だよ。とりあえず遠い国って事なんだね。
確かに凄く美味しかった。成程。貴重なワインって訳ね。
「あの芳醇な香りの中にしっかりとした芯のある味わい。口に含んだ瞬間に、まるでブドウ畑に居るかの様。そしてスゥッと染み込む様にくち「待て待てまて」…はい?」
「それ、長くなる?」
「3時間位は語れますね」
怖いよ!怖いって!つーか、何その感想。俺からしたら【美味しくて飲みやすい】って感想以外出てこないって。
「アリアさん。時間は限られています。……飲みましょう」
3時間もワインについて語られて、俺にどうしろと?
「そうでした。私としたことが」
恥ずかしそうにするポイント間違えてるよ?
「ワイン、好きなんですね」
「ええ、申し訳ありません。お恥ずかしい。エールもいけます」
いや、違う。何かが違う。エール(ビール)も好きって情報が追加されただけだった。
「あはは、エールもあるんですね。とりあえずワインにしましょうか」
俺は何となく疲れて、そう言うだけで精一杯だった。
☆☆☆☆☆
ワイングラスにさっきの飲みやすいワインが注がれ、お互いグラスを持ち上げて『乾杯』の合図をとった。
ワインだけではって事で、木の実や干し肉をおつまみに用意してくれた。
「はぁ……幸せ……」
アリアさんはワインを口に含み、グラスを眺めてウットリしてる。
昼間とは違い、少し色気出すもんだから気を反らすのが大変。
「確かにこのワイン、今まで飲んだ事ない位美味しいですね。高そうですしね」
「アオイ様もこのワインを気に入って頂けて良かったです。このワインボトル1本で、そうですね。この国の一般的な家庭なら1年間は暮らせるのではないでしょうか」
「はっ?」
俺のグラスを持つ手が止まった。というか、震えた。
「1年間……すか……ははっ……」
体中から変な汗が噴き出る。
いや、俺とアリアさん何年分消費した?!夕食でも飲んだし、少なくとも今2本目が無くなりそうだ…。そりゃ飲みたいよな…。
ワイン好きからしたら、最高のご褒美なんじゃないだろうか……。
「最も、裕福な貴族位しか手に入れられませんので。あくまで嗜好品です」
いや、いきなりブルジョアになった気分だよ。酔いが覚めた気もするな。
普段ならとっくに酔い潰れていても可笑しくない位飲んでると思うんだけど…。これ、スキルのお陰かな?
ちょっと確認
『健康』LV3
ユニークスキル。転移者のランダムスキル。
効果:かなり疲れづらい。風邪をひかない。体力の回復が早まる。毒耐性。
うん、これだわ。多分毒耐性の効果だな。お陰で超高級なワインを堪能する事が出来てるよ。有難う。
「アオイ様。本日は本当に有難う御座いました。お陰で思い残す事はありません」
「ははっ、そんなに喜んで貰えて良かったです。まぁ、まだ数日残ってますから、良ければまた一緒に飲みましょうよ」
「ふふ、アオイ様ったら。そうですね…機会があれば…ですね」
そう言ってアリアさんは空きボトルとワイングラスを片付け始めた。
「じゃあ、明日もご一緒しましょっ、明日はエールとか飲みましょ」
俺がそう言うと、アリアさんは何故だか少し悲しそうに笑った……気がした。
「あ、そういえばアオイ様。傷みやすいお酒が在ったのを忘れてまして、最後に如何ですか?」
「ん?勿体ないですね。頂きますよ」
捨てる位なら飲みますよ。量にもよるけど。
暫くして、アリアさんがお猪口位のグラスを2つ持ってきた。
しっかり自分の分も確保しているのか。流石っす。
「では、どうぞ。アオイ様……」
「あ、はい。頂きます」
俺は少し口に含み、味を確かめた。あ、これも飲みやすいかも。少しクセがある様に感じるけど、日本酒みたいな感じか。
「うん、美味しかったです。ご馳走様でした。って、アリアさん。どうして泣いているんですか?」
アリアさんは俺を見つめ微動だにしない。両方の目から涙を一筋流している。
少しずつ意識が遠のく感覚。意識を失う前の様な。もう直ぐ熟睡できそうな……、
俺はアリアさんのベッドに倒れた。
「アオイ様……。っく、っぅ、アオイ様っ……」
アリアさんは泣きながらベッド際まで来て、小さなナイフを取り出した。
「お嬢様を…助けて頂いて…感謝しています…心から…」
誰も聞く事の無い言葉が紡がれる。
ギシ
万全を期す為だろう。
ワンピースの様な服の裾を持ち上げ、俺の腰の上に馬乗りになる様に跨る。
「もし出来るなら…やり直せるなら……」
「……私の事も……助けて……下さい……」
「ごめんなさい」
手にしたナイフがアリアの頭上まで振り上げられ、俺の胸に向かって振り下ろされた。
アリアさんの話を聞くために、俺達は移動する事にした。フローラが寝てるから、起こしちゃうと可哀そうだしね。
調理場として用意された部屋には、アリアさん用の簡易的なベッドと、そのすぐ横に簡素なテーブルが置いてある。本当は此処で食事をするつもりだったらしい。一人で。
3人で食べて良かったよ。メイドは基本こうやって主から見えない所で食事をし、寝るのも勿論主とは別部屋なんだけど。アリアさんが良くても、俺が何か嫌だよ。日本の一般庶民の感覚だもん。
アリアさんは俺にベッドに座らせ、自分はスツールの様な腰掛けを持ってきて座っている。
メイド服の寝間着なのかな。薄い生地のワンピースの様な服を着ている。脚が…アリアさんの生足で御座います!有難う御座います!
昼間はまとめて結い上げている髪も、今は胸元まで下ろされている。
レッドブラウンの髪。まぁ俺がそんな色知ってる訳ないんだけど。誰の知識だろうか。
大人しい感じだが、光に照らされるとほんのり赤っぽくも見える。
急に大人っぽく見えて…昼間とのギャップがあり過ぎて、ちょっとドキドキしてしまうのは気のせいではない……ハズ。
さて。
「アリアさんのお願いって何でしょう。何かお手伝いですか?」
力仕事とかなら喜んでお手伝いしますとも。煩悩?下心?そんなもの在りませんよ?
「いえ、申し上げにくいのですが……」
少し困った顔をして、言い淀む。何を遠慮しているんだか。
あっ、エッチな事ですか?
「試しに言ってみて下さいよ。協力できる事なら何でもしますよ」
「何でも…ですか?」
アリアさんの目が怪しく光った……気がした。
「え、ええ。そうですね。大丈夫ですよ?……多分」
何だろう、ちょっと背中に寒気が……。
「あの……一緒にお酒を飲んで頂けないでしょうか」
「ん~と――、はい?」
「えっと、ですから……先程、久々にワインを頂きまして……その、きっとアオイ様がいらっしゃる間しか飲めないと思いまして……」
エッチな事じゃなかった―!恥ずかしい――!
「良いですよ、そんな事で良ければっ」
メイドさんて普段お酒とか飲めないんだね。いや、勤務中に何を言っている!って怒る人もいるかもしれないけど、俺は夜なんだし気にしないし、そんな日が在ったって良いと思う訳ですよ。
「有難う御座いますっ、アオイ様!あのワイン、シグマウリス国のストーンブリッジ領でしか作られてないんです!」
「何て?どこだって?」
「シグマウリス国です!此処から3つ程国を渡った先にある王国です。ご存じ無いですか?」
「ご存じ無いです」
何処だよ。とりあえず遠い国って事なんだね。
確かに凄く美味しかった。成程。貴重なワインって訳ね。
「あの芳醇な香りの中にしっかりとした芯のある味わい。口に含んだ瞬間に、まるでブドウ畑に居るかの様。そしてスゥッと染み込む様にくち「待て待てまて」…はい?」
「それ、長くなる?」
「3時間位は語れますね」
怖いよ!怖いって!つーか、何その感想。俺からしたら【美味しくて飲みやすい】って感想以外出てこないって。
「アリアさん。時間は限られています。……飲みましょう」
3時間もワインについて語られて、俺にどうしろと?
「そうでした。私としたことが」
恥ずかしそうにするポイント間違えてるよ?
「ワイン、好きなんですね」
「ええ、申し訳ありません。お恥ずかしい。エールもいけます」
いや、違う。何かが違う。エール(ビール)も好きって情報が追加されただけだった。
「あはは、エールもあるんですね。とりあえずワインにしましょうか」
俺は何となく疲れて、そう言うだけで精一杯だった。
☆☆☆☆☆
ワイングラスにさっきの飲みやすいワインが注がれ、お互いグラスを持ち上げて『乾杯』の合図をとった。
ワインだけではって事で、木の実や干し肉をおつまみに用意してくれた。
「はぁ……幸せ……」
アリアさんはワインを口に含み、グラスを眺めてウットリしてる。
昼間とは違い、少し色気出すもんだから気を反らすのが大変。
「確かにこのワイン、今まで飲んだ事ない位美味しいですね。高そうですしね」
「アオイ様もこのワインを気に入って頂けて良かったです。このワインボトル1本で、そうですね。この国の一般的な家庭なら1年間は暮らせるのではないでしょうか」
「はっ?」
俺のグラスを持つ手が止まった。というか、震えた。
「1年間……すか……ははっ……」
体中から変な汗が噴き出る。
いや、俺とアリアさん何年分消費した?!夕食でも飲んだし、少なくとも今2本目が無くなりそうだ…。そりゃ飲みたいよな…。
ワイン好きからしたら、最高のご褒美なんじゃないだろうか……。
「最も、裕福な貴族位しか手に入れられませんので。あくまで嗜好品です」
いや、いきなりブルジョアになった気分だよ。酔いが覚めた気もするな。
普段ならとっくに酔い潰れていても可笑しくない位飲んでると思うんだけど…。これ、スキルのお陰かな?
ちょっと確認
『健康』LV3
ユニークスキル。転移者のランダムスキル。
効果:かなり疲れづらい。風邪をひかない。体力の回復が早まる。毒耐性。
うん、これだわ。多分毒耐性の効果だな。お陰で超高級なワインを堪能する事が出来てるよ。有難う。
「アオイ様。本日は本当に有難う御座いました。お陰で思い残す事はありません」
「ははっ、そんなに喜んで貰えて良かったです。まぁ、まだ数日残ってますから、良ければまた一緒に飲みましょうよ」
「ふふ、アオイ様ったら。そうですね…機会があれば…ですね」
そう言ってアリアさんは空きボトルとワイングラスを片付け始めた。
「じゃあ、明日もご一緒しましょっ、明日はエールとか飲みましょ」
俺がそう言うと、アリアさんは何故だか少し悲しそうに笑った……気がした。
「あ、そういえばアオイ様。傷みやすいお酒が在ったのを忘れてまして、最後に如何ですか?」
「ん?勿体ないですね。頂きますよ」
捨てる位なら飲みますよ。量にもよるけど。
暫くして、アリアさんがお猪口位のグラスを2つ持ってきた。
しっかり自分の分も確保しているのか。流石っす。
「では、どうぞ。アオイ様……」
「あ、はい。頂きます」
俺は少し口に含み、味を確かめた。あ、これも飲みやすいかも。少しクセがある様に感じるけど、日本酒みたいな感じか。
「うん、美味しかったです。ご馳走様でした。って、アリアさん。どうして泣いているんですか?」
アリアさんは俺を見つめ微動だにしない。両方の目から涙を一筋流している。
少しずつ意識が遠のく感覚。意識を失う前の様な。もう直ぐ熟睡できそうな……、
俺はアリアさんのベッドに倒れた。
「アオイ様……。っく、っぅ、アオイ様っ……」
アリアさんは泣きながらベッド際まで来て、小さなナイフを取り出した。
「お嬢様を…助けて頂いて…感謝しています…心から…」
誰も聞く事の無い言葉が紡がれる。
ギシ
万全を期す為だろう。
ワンピースの様な服の裾を持ち上げ、俺の腰の上に馬乗りになる様に跨る。
「もし出来るなら…やり直せるなら……」
「……私の事も……助けて……下さい……」
「ごめんなさい」
手にしたナイフがアリアの頭上まで振り上げられ、俺の胸に向かって振り下ろされた。
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