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第2章 【異世界召喚】冒険者

第31話 先輩冒険者 訓練①

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「はい、毎度ー。また宜しくな」

 とりあえず必要そうな物として、リュックと、動きやすそうな服装を揃えて、まぁ使うか分からない短剣を購入した訳で……。

 正直リュックとか要らないんだけど、流石に手ぶらだと怪しすぎるからね。

「結構出費が嵩むな。早く依頼受けないとヤバイぞ」

 焦りから、知らず知らずのうちに独り言ちながら「銀のかまど亭」へと帰って来た。

 これじゃあ、その日暮らしのアルバイトみたいじゃないか。いやまぁ、実際そうなのか。あ、でも、まだ収入無いからニートじゃん。

 先に宿代を払って置いて良かったよ。ホントに。食事と寝床の心配が無いってのは大きい。主に精神的に。

 だけど、それでも早いところ安定した収入を得ないとな。

 少し早めに夜食を食べ、明日の訓練とやらに備えて寝るとしよう。

「っと、その前に……」

 自分のステータスを確認してみたんだが。

「あれ?俺ってLV64だったっけ?んー」

 確か最後に確認した時は、LV61位だったと思うんだけどな。まぁ、考えても仕方ない。大した問題じゃないか。

 チュートリアルが終わったから、これからのLV上げは、戦闘と訓練メインになるんだっけ?

「明日また確認すれば良いか」

 冒険者の先輩とやらの訓練で、どの位LVが上がるのか楽しみではあるしな。


 やばそうな人じゃなきゃいいなぁ。なんて思いながら、早めに就寝した。



☆☆☆☆☆



 いくつも夢を見ていた気がする。

 やたらとリアルな夢だったんだよな。

 何か、可愛い子とセックスする夢だった。

 何回もその子の膣内なか射精して、愛おしくて仕方なくて……。


「……あぁ。夢か……」

 のそっとベッドから起き上がり、時計を捜す。

「……」

 いつもは目覚ましの音で起きてたから、ついつい癖でね。

 で、意識が徐々に覚醒していって。

「夢だけど、夢じゃなかった……」

 何を言っているんだ。俺は。

 全部が夢落ちで、目覚めたら自宅のベッドなんて。そんなことは無く、宿屋のベッドだった訳で。

「異世界かぁ。改めて考えると、ありえんよな」

 とは言え、夢落ちで現実復帰も叶わぬ今、出来る事をやるしかない。

「って、今何時くらいだ?」

 この世界にも時計はあるが、中々高価な物で、勿論俺の部屋には置いていない。

「はぁ…とりあえず、1階したに行ってみるか」

 一人で居ると、誰に言うでも無く独り言が増えるのはなんでだろか。

 とか考えながら、1階の空いているテーブルに座り、おばさんに朝食をお願いした。


「もう昼だからね。昼食だね」

 そう言って、俺の昼食を用意してくれる様だ。そうか、もう昼時なんだな。約束の時間には間に合いそうだ。

 初日から寝坊で遅刻とか、後で何を言われるか分からないもんな。
 
 いつもよりテーブルが埋まってるのは昼時だからか。っという事は、ここに居る人も冒険者だろうな。きっと。全員じゃないだろうけども。

 冒険者じゃない人は、普段何してるんだろうな。とか考えていると、

「はいよ、これは朝食べてない分のサービスにしておいてやるよ」

 おばさんが俺の分の食事を持って来たくれた。それと昼食の他に、果実水をサービスしてくれた。

「あ、すみません。有難うございますっ」

 何だろ、朝食の分損してるはずだけど、得した気分になるよね。しかも美味しいし。





「さて。行きますか」

 昼食を済ませ、ギルドに向かう。昼過ぎって言われてるから、丁度良い時間かな?

 とりあえずリンダさんに聞けばいいかな?

 昨日はこんなに人は居なかったけど、ちらほらとギルドに出入りしている人が居るな。

 ウエスタン扉を開き、ギルドの中に入るとリンダさんと目が合った。

 リンダさんは昨日みたいに立ち上がり、俺に手を振ってくれる。

 若干の気恥ずかしさもあったが、俺も遠慮がちに手を振り返す。

「あれがリンダの推薦したヤツか?いかにも駆け出しって感じじゃねーか」

「ほんとだな。何でリンダちゃん俺を推薦してくれなくてあんな奴を」

「お前は顔が駄目なんじゃね?」

「はぁ?ふざけてんのか?!」

「いや、俺に切れてる場合じゃないだろ?」

「そうだったな、くそがっ」

 何か感じの悪い冒険者達が、俺の事見て何か話してるよ。

 いやぁ、いい感じに注目されてますやん。めっちゃ聞こえてるし……。

 これ異世界のテンプレなんじゃないんすか??

 さっきの感じの悪い冒険者が俺の方に歩いて来る。

「おい、お前」

 来たー!どうする?!とりあえずぶっ飛ばせばいいのか?!

「何でしょうか」

 ここは冷静にいこう。先に手を出すのは駄目だな。

「お前、あんま調子に乗んなよ?リンダちゃんが推薦したからって……」

 その冒険者がリンダさんの名前を出して、

「リンダがどうしたって?」

 俺の後ろから声が聞こえて来た。

 振り返ると、輝くような金の髪の毛を後ろに流し、片目を瞑った男の人が立っていた。

 180cmはあるか。俺より背が高く、がっちりした体格だった。

「な、なんであんたがこ、ここに居るんだよっ」

 さっきの感じの悪い冒険者が狼狽えている。と言うか、明らかに怯えている。

「んあぁ?決まってるだろ。これから此奴を鍛えるんだよ。文句あんのか?」

 そう言いながら俺を親指で指さす。

「え、俺?まじっすか」

 あ、この人かぁ。冒険者ってより、戦士って感じなんですけど?

「おう、まじだ」

「あー、そうなんですね。お手柔らかにお願いしますね…」

「あぁ。それはお前次第だな。じゃ、先に行って準備しとくからよ。早く来いよ」

 そう言うと先に何処かに行ってしまった。


 感じの悪かった冒険者の方に向き直ると、

「お前……死ぬなよ」

 そんな不吉なセリフと憐みの表情を残して、じゃあな。と言わんばかりに片手を上げて去って行った。

 いやいや、待て待て。テンプレどこ行った?

 って、死ぬの?え、訓練だよね?


 と、とりあえず、リンダさんの所まで行くか……。



「こんにちはっ!アオイ様!」

 めっちゃ笑顔なリンダさん。「ねぇ、俺死ぬの?大丈夫だよね?」なんて聞けるわけも無く、今日のスケジュールについて話した。

「この後、訓練所にご案内しますね。それが終わりましたら……どうしましょう。簡単な依頼とか受けてみますか?」

 有難い!少しでも収入を得たいところだ!

「是非お願いします!」

「はい、では私の方で良さそうな依頼を選んでおきますね!」

 リンダさんのヤル気が凄いな。余り期待しないでおくれよ?

 まぁ、しかし、本人がそれで良いなら俺がとやかく言う事ではないしな。

「では、ご案内しますねっ」

 リンダさんの後について行くと、地下に続く階段だった。

 結構な深さを下りた所で、大きいホールの様な空間に出た。

「ここ地下ですよね?随分広いですね」

 そうなのだ。地下室みたいな場所を想像していたんだけど、どちらかと言うと地下街って感じ。
 高さもそこそこあって、圧迫感は皆無だった。

「そうですね。私も何でこんなに広いのかは知らないんですけど、奥ももっと広いみたいですよ?あ、こっちです」

 リンダさんの案内の元、幾つかの通路を通り、ひと際大きい扉を開け、中に入った。

「おう、おせーよ。びびって逃げたのかと思ったぜ」

 あ、さっきの人だ。逃げる訳ないじゃないですかー。やだなー。

「改めて、暫くの間、宜しくお願いします」

「はいよ。まぁ俺は報酬貰ってるからなんでも良いんだけどな」

「では、アオイ様。私は先に戻ってますので……また後でお会いしましょう」

 リンダさんは小さく手を振りながら言うと、受付に戻って行ったようだ。


「そういや、俺の名前は……そうだな。レオニードとでも呼んでくれ」

「あ、はい。アオイです、宜しくお願いします」

 お互い自己紹介したところで、

「じゃあ早速だけど、お前武器使えんのか?」

「いや、どうなんでしょう。剣?は少し使える気はしますけど」

 高校の授業で、剣道を少しやった事がある程度だから、剣が使えるとは言えないんだけど。

「そっか。それじゃあこれ使ってくれ」

 渡されたのは、木剣だった。両刃の剣をイメージして作られている。

 長さは、ロングソートと呼ばれる物と同じ長さらしい。結構重い。

「俺の剣を目掛けて打ち込んでみてくれ」

 レオニードさんが、頭上に木剣を地面と水平に構えた。この刀身目掛けて打ち込めって事らしい。

「はい、いきますっ」

 構えも何もあったもんじゃないけど、面を打つ感じで木剣を振り下ろした。

 カンっ

「……本気でやって良いぞ?」

 いや、結構力入れて振ったんですけど??

「あ、じゃあ、もう一回行きますね」

 もう一度、レオニードさんの面を打つ感じで、木剣を振った。今度はさっきよりも力を入れて。

 カンっ

「……成程な」

 そしてその後、胴に向けてだったり足元にだったり、木剣を振るう位置を変えて打ち込んだ。

 レオニードさんは、一歩も動かなかったな。

「はぁはぁはぁ……」

 ちゃんとした?運動は久々だったから、少し息が上がってしまった。

「お前、力はあるみたいだけど、スタミナ無ぇな。走り込んだ方が良いぞ。後、実践的な剣の動かし方をした方がいいな。よし、じゃあ次」


 そう言って次に出て来たのは、木斧だった。で、次は木槍…弓…棍棒…皮鞭…鎌…短剣…杖…。

「いや……はぁはぁ……流石に疲れましたよ……はぁ……」

 次々に得物・・を代えて、軽いレクチャーを受けた。アドバイスも多少貰いながら。


「アオイ、お前すげぇな」

「え、何がですか?」

「初めてって言ってただろ?武器使うの」

 あれ、何か褒められてる?

「そうですね、何かと戦った事とか無いですからね……」

 現代において、格闘技でもやってれば違うんだろうけど。

「そうか、そうだよな。しかし恐ろしいな」

「恐ろしい……ですか?」

 どうしよう、めっちゃ才能発揮しちゃったかな。

「あぁ、どれも恐ろしく才能が無いな」

 真顔でそう言われた。

「は?」

「いや、普通ならどれかしらピンと来るもんなんだが……。無いな」

 おぅ。いや、言い訳するとどれもこれも馴染み何て無いからね??

「ま、これから暫く鍛えてやるから、その間に使えそうな武器を使えば良いか。あ、お前体術派か?」

「体術って言っても……」

 格闘技の動画とか好きで見てたけど、とりあえず思い出しながら真似して動いてみるか。

 なんとなくボクシングみたいに構える。

「あ、ちょっとやってみます?こんな感じですかね」

 左ジャブからの右ストレート。スイッチして、右ジャブから右フック。自分の身体じゃないみたいに早い動きだ。

「まぁ、魔物には効かなそうだけどな。対人には良さそうだな。後はなんかあるか?俺に向けて打ってこい」

「えーっと、じゃあいきます」

 右のローキック。は、普通によけられて、そのまま右ストレートリードを繰り出す。レオニードさんの掌で受け止められた。

「おぉ、スゲエな。何か伸びた感じがしたなっ。もっとこいっ」

 なんだこの戦闘狂は……。

 そこからは、只のスパーリングみたいになっていた。

 

「成程ね。中々面白かったぞ。で、これ誰に習ったんだ?」

「え、ユーチューブです」

「あ?ゆーちゅぶ?誰だそれ」

「あ、いえ、人ではなくって、その人がやっている動きを見て、それ真似しただけなんですよ」

 ただ単に、動画で見たやつをやってみたら、思っているよりも体が動いただけなんだけどさ。ただ言えるのは、絶対LVのお陰で動きが良くなってる。って事か。

 とはいえ、実際に習ってる訳では無いから、これ以上の上達は無理。技術も何も知らない訳だし。

「そっか。見て覚えた訳か。つまり、その動きが出来る本人が居るって事だろ?今度会わせてくれよ」

 いやー、それはちょっと難しいかなー。俺だって会った事ないし。

「ま、まぁ、機会があれば…ですかね?」

「よし、じゃあ次は魔法か。魔法は使えるんだろ?」

「あ、いえ……。使った事ないんですよね……魔石もどうやって使うのか分からないんですよ」

「はぁ?どうやって今まで生きて来たんだ?魔石使えないと、便所の水も流せないだろうよ」

 そう、仰る通りで、城に居た時はアリアが後で流してくれてたしな……。今は、小の方は流さないで出て来ていたり。

「最悪だな……。そりゃマナー違反だわ」
 
 マナーって。こっちでも通じるの?いやそれより、めっちゃ白い目で見られてます。いや、だってねぇ?使い方分からないんだもん。

「魔石に魔力込めるのは、物心つくまえに出来る様になってるからな。改めて教えるとなると……。はぁ、仕方無えな。とりあえずそこに座れや」

 いや、何か申し訳ない。言われた通り座る。

 レオニードさんは何処からか、銀色の筒みたいな物を持って来た。







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