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第2章 【異世界召喚】冒険者

第63話 作戦会議。

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「アオイへの復讐を成す為に脱獄したのでは無いかと」

 宰相が言った事は、アリアが俺を迎えに来た時に聞いた内容と同じだった。

「いや、確かにあいつは俺に恨みが在るでしょうが、だからと言って脱獄出来る程の力は無かったですよね」

 あの時グズリンに特殊なスキルは無かった。だとしたら一体……。

「そうだ。だが、グズリンの怨念じみた呪詛を何者かが感じとり、手を貸した。というのが私の仮説だ」

「おいおい。そんじゃ、その為だけに何者かが協力したってのか?馬鹿馬鹿しい。そんなん、暇を持て余したハグレもんでもやんねーよ。悪魔でも召喚したんなら別だろーけどよ……それには憑代も生贄も足りねーだろうよ。
 ……まて、いや……。そんな真似できるか?話を聞く限り、そのグズにはそんな力が無いハズだ。だが、どうだ……」

 レオニードさんが自問自答の様に呟いている。

「悪魔の召喚って、簡単に出来るもんなんですか?」

 俺はふとした疑問を宰相さんに投げてみた。

「まさか。だが、異世界からの召喚と同じで確実では無いが方法はある。しかし、それも古い文献にある様な物だ。それに万が一成功してしまい、その悪魔が暴走したらどうする。その古い文献では国が2つ程その悪魔によって滅ぼされたとされている。後に名もなき英雄とされる者が討伐したとされているがね」

「名もなき英雄ですか……きっと、勇者みたいな人だったんでしょうね」

 悪魔を退治出来るのとか、勇者しかいないでしょう?いや、知らないけど。

「勇者であったかは兎も角、そんな危険な召喚は現実的では無い。余程の破滅願望の持ち主か、余程の恨みの持ち主か」

「いやいや、幾ら俺がグズリンに恨まれてるとしても、悪魔を召喚する程の恨みなんですか?」

「アオイ様、人の想いの深さはそれぞれです。人の恨みの深さ等、それこそ人それぞれです」

 アリアが真剣な表情で俺を見つめている。

 そうだよな。

 ここで過ごした時間はそれほど長い訳では無いけど、確かに想いの深さは計り知れない。俺がフローラやアリア、王妃様やマール。今はリンダもだけど。この女性達を想うのと同じ深さで、グズリンの俺に対する恨みが深まっているとしても、まぁ確かに無くは無いか。

「だけど、今ある仮設を整理すると……グズリンの俺への恨みを何者かが感じ取り、グズリンの復讐を成す為に手を貸した。そして、その何者かは、転移を行う事が出来るって事ですよね。で、その何者かは、何らかの理由で召喚された悪魔かも知れない、と」

「いや、まぁ、悪魔だとは言わないがな。だが、可能性としては捨てきれないという事だな。しかし、ローズィリアが派遣した可能性もあるだろう。が、そもそもあの地下牢の場所を知っている筈が無いからな」

 転移の原理がどういったモノなのかは分からない。けど、確かにグズリンの居場所も分からずに転移なんて出来るか?最悪、土中に転移して身動き取れない。なんて事もあるだろうし。

「グズリンの居場所を誰かが漏らしたって事は考えられないですか?」

 考えたくはないが、もしこの城に内通者が居た場合。

「仮に内通者が居たとしてだ、城の外からあの地下牢迄の距離を正確に知る術はない」

「グズリンを感知出来て、何かこう目印の様に感知出来る魔法とかスキルとか」

 マーカーみたいにピンポイントで居場所が分かる。みたいな。

「ふむ……興味深くはあるが、そんな能力は聞いたことが無いな」

「そうですか……」

 まぁ、ゲームの中って訳じゃ無いからな。いや、実際マッピングとか機能無いのかな。レーダーとか作ったらきっと便利だよな。


 先程迄自問自答してぶつぶつ言っていたレオニードさんが顔をあげた。

「まぁ何にせよ、仮説は仮説だろう。とりあえずこいつを狙って来るんだろうから、ある程度準備しておいて損は無いんじゃねぇか?あぁ、こいつをそのグズリンが居た地下牢に放り込んで置くのも良いかもな」

「え、嫌ですけど」

 何が悲しくてグズリンが居た地下牢で待たなきゃいかんのだ。

「だよな。そんじゃ、警備を強化するしかないな。とりあえず、今日の今日来る事は無いと思うがな」

「そうだな。私も同意見だ。だが、警戒は強化しよう」

 グズリンが姿を消したのは昨夜から見張りの交代の時間の早朝までの間。確かにそのまま何かしら行動を起こすのは考えづらいか。準備も何も無いだろうし。その協力者が、グズリンにどこまで協力しているのか……。

 まぁ、相手の出方が分からない以上、俺も警戒しておかないと駄目だろう。







 具体的な対策が打ち出せないまま、あの場は解散となった。

 
 ちなみに、解散した後にレオニードさんが城の警備について宰相さんと交渉していた。

「なぁ、宰相さんよ。俺が警備に回ってやっても良いぜ。まぁ明日の朝から・・・・・・だがな」

 レオニードさんの提案に宰相さんは少し思案してから答えた。

「客人にこんな事を頼むのも気が引けるが、頼めるだろうか。アオイにも依頼する予定ではあったのだがな」

「あ、俺もですか?も、勿論警備しますよっ」

「いや、お前には人質に取られたら困る嬢ちゃん護衛を頼みたい」

 と、レオニードさんに即答された。

「……成程。確かにそうですな。では、今夜はアオイとそのお嬢さんは同室で滞在してくれ。一応、警護の依頼という事にしておこう」

 あれ、良いの?まぁ確かにリンダの警護は重要だとは思う。でも、グズリンがあくまで街に情報収集に出ていたら。って前提なんだけどな。

 ……そうか、街まで俺の弱点に成り得る情報を集めに行っていると考えるのが普通か。流石にフローラが居るメウィザード領まで行って、フローラを探し出して攫ってくるのは無いだろうな。

「では、レオニード殿にも国からの正式な依頼として要請しよう。さて、報酬だが――……」



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