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NOISE
しおりを挟む季節は止まることなく流れ続ける
あっという間の秋が過ぎ、夏の暑さとは対照的な
冬の厳しい寒さが町を、世界を凍らしていく
空はまるで閉ざされてしまったように太陽の日を遮っている
植物は枯れ、動物もまた長い眠りに入る
すべての存在が春を待ち焦がれるかのように
大学入試という恒久平和を謳うこの国で唯一終わることのない戦争に
僕たちは挑んだ
結果?そんなものは神のみぞ知るところだ
やがて、神の気まぐれか、僕の元に合格通知というものが
届けられた
幸いにも、遥香さんの元にも暫くして同じものが届けられた
お互いの通知が届いたとき、互いに手を叩いて喜んだ
そして、僕が感じるNOISEも日ごとに大きくなっていった
そして、長かった冬も終わろうとしていた
凍てつく氷に閉ざせれた世界を冬将軍最後の悪あがきを切り捨てた
太陽が溶かしていく
僕たちが高校生と呼ばれる最後の日が訪れた
特に大きな感慨はなかった
親しい友人がいたわけでも
クラブ活動や趣味に青春を燃やしたわけでもなかった
でも、後輩や同級生と涙を流し、別れを惜しむ遥香さんを見ると
少しだけ、ほんの少しだけ、自分の過ごした無為な高校生活を
悔いた
卒業式の後、二人で最後となる帰り路を行く
この1年で色んな事があった
色んな話をした
今僕はイヤホンをしていない
まだ慣れないが、少しずつ慣れていこうと思う
世界に満ちる雑音、それは必要なモノだと
やっと分かったから
分かったというか、思い出したのだろう
もっと早く、思い出せていたら、そもそも忘れなかったら
でも、あの日遥香さんと出会って無かったら
今も僕は世界を拒み、雑音と称して色んな音を遮っていたのだろう
遥香さんには感謝してもしきれない
そんな話をした、遥香さんは時折うなずいて、笑っていた
そして、駅の改札に着くと
どちらともなく立ち止まった
お互いに分かっているからだ
これが最後になるということを
僕はこの町から電車で1時間ほど離れた大学に
遥香さんは関東の大学へ
全く正反対の二人が歩んだ奇跡のような1年が終わり、魔法が解ける時がきた
「遥香さん、今までありがとう」
「ううん、こちらこそ」
「あの日の言葉、覚えてる?」
「ええ、もちろん」
「僕はあの言葉、一生忘れないよ、遥香さんが僕にくれた宝物
絶対にわすれない」
「そう…ありがとう」
やがて、電車が駅に到着し、血液のように人が行き交う
「じゃあね、遥香さん、さようなら」
軽やかに右手をあげると遥香さんはいつものように笑い
同じように手を振った
そう、ずっと繰り返してきた行動
なのに胸がざわつく、このままでいいのか?と囁く声が聞こえたような気がした
階段を叩く革靴の音がやけに響く
胸のざわつきは痛みを伴ってきた
胸が痛い、周りの音は何も聞こえない
ただ機械的に響く足音と内側から伝わる鼓動が容赦なく襲い掛かってくる
階段を昇りきると丁度電車が来ていた
発車を告げるベルが鳴っている
僕は何も考えず、乗り込もうと車両に足をかけた
「行かないで!」
いつかのように遥香さんの声が響いた
腕を掴まれ、ホームに戻される、閉まるドアを僕はただ見送るしかなかった
大粒の涙を流しながら叫ぶ
「あの時、私はウソをついていたの、きょう君に話しかけたの、
なんとなくって、そんな事はないの、ずっときょう君の事
気になってた
私が委員長してた時、いつも退屈そうな顔して音楽聞いてる
きょう君をずっと眺めてた
あの日出会ったのも偶然なんかじゃない!
ずっとあとを追ってたの、でも勇気がなくて
でもあの日、いつも以上に退屈そうな、憂鬱そうなきょう君を見てると
我慢が出来なくて…」
気が付けば、僕も、涙が、止まらない
僕の感じたNOISEのイミ
やっと分かった
遅すぎた恋心に―
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