待ち続けて

闇猫古蝶

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幼き日の夢

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「ほら、早く行こうぜ!リリィ、カミア!」

「うん!」

遠く、草原を走り回るリリィ達。

三人で遊んでいる。

「リリィ、大丈夫?疲れた?」

カミアがリリィの顔をのぞき込み優しく話しかける。

「うん、大丈夫!」

「おーい、二人とも早くこいよー!」

先の方で二人に大きく手を振ると再びアスラは走り出す。

二人も遅れないように、手をつないで走る。

すると小高い丘にある色とりどりの花が咲く花畑に着いた。

「あ、二人だけ手繋いでずるいぞ!俺も混ぜろ!」

「うん!」

リリィもカミアも笑顔で頷く。

リリィの手にアスラの手が重なる。

今は遠くにいて触れられないアスラの小さな、けれど温もりは変わらない手。

「リリィは私のなんだから!」

「そんな決まりないもーん」

アハハと笑い声が響く。

花冠を作ったり、ごっこ遊びをしたり…

でも突然丘が崩れ出す。

辺りは闇に落ちていく。

「わっ!うわあ…!!」

「アスラ!」

アスラが闇に落ちていく…

手を伸ばす間もなく。

「アスラ!リリィ、逃げ…っ」

突如、カミアの体に銃弾が撃ち込まれその体も闇に消える。

一人残されたリリィは泣いていた。

丘が更に崩れていくのも構わずその場で泣き崩れた。

「…様!…ィ様!」

カミアの声が聞こえる。

「リリィ様…!」

ハッと目が覚めるとリリィ目の前には子供ではないカミアがいた。

辺りも草原ではなく、リリィの部屋だ。

部屋の中に月の明かりが差し込んでる。

「私…」

「随分うなされておりましたよ…?」

心配そうにするカミアの手をリリィはぎゅっと握る。

「ごめん、カミア。お願い、少しだけ…このまま…」

「…はい」

カミアは頷くとリリィの体を自身の方に寄せた。

リリィは泣いていた。

楽しい日々が崩れ去る瞬間、それがもし現実ならと思うと怖くて、泣いていた。

「リリィ様…私は、いつでもそばに、いますよ…?ですから…私のことも頼ってください…昔みたいに」

「…ありがとう。でもカミアには充分お世話になってるし迷惑もかけているわ。これ以上頼るなんて…」

「いいのです。私は、貴女の力になりたい」

「カミア…」

カミアの目には真っ直ぐな意志が宿っていた。

「本当にありがとう。今日はこのまま眠ることにするから、もう大丈夫よ」

それでも心配そうにカミアは見つめる。

「…わかりました。おやすみなさい」

けれどそれだけ言うとカミアは部屋を出ていった。

そしてリリィは再び眠りについた。

今度は悪い夢をみませんようにと祈りながら。




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