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縮まらない『15センチ』
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少し先を歩く貴方を、斜め後ろから追いかける。
二人の不揃いな足音だけが辺りに響く。
それをぼんやり聞きながら、私は貴方の背中を見つめていた。
不意に、貴方は歩く速度を上げた。
先に困っている人を見つけたらしい。
15センチの距離が遠くなる。
不安になって腕を伸ばすけれど、この手が貴方を掴むことはなかった。
今も、今までも、きっとこれからも。
いつも、そうだ。
ようやく勇気が降りてきた時にはもう遅くて、貴方は私の届かない位置に居る。
「来て」と願えば、「助けて」と乞えば、優しい貴方のことだから、駆けつけてくれるだろう。
でもそれじゃいけない。自分からいかなくちゃ。
それは、貴方に無理をさせたくないからでもある。
貴方はいつだって一人で抱え込もうとするから。
溢れて零れそうになっても、「大丈夫」と笑ってそれを飲み下す。
何でも一人でやろうとして、持ちきれなくなることだってあった。
私は貴方の限界がおもてにでるまで気づけない。
大好きなのに。本当はダメになる前に傍に寄って、そっと手を貸すべきなのに。
不器用な私にはそれができないから…いつまで経っても距離は縮まらない。
差は、詰まらない。
たとえ手と手が触れ合いそうな15センチの距離にいたって、心は噛み合わないから、自然に離れていく。
そうして、私の心は溶けていく。
甘い言葉に煮詰められ、とろとろと形を失くすのだ。
ジャムのようになった私の心は、瓶へと詰められる。
この瓶がいっぱいになった時、きっと私の心は原型を留めていない。
溶かされつくして、おしまいだ。
貴方に見つけられないままに。
そんな最後はもちろんいやだ。だけど。
ふわふわと宙に浮くような錯覚を、名前を呼ばれるだけで感じる幸福を、長く味わいすぎた。
あまりに心地よくて、抜け出せない。
壊れるのが、捨てられるのが、怖かった。
ふと、一つの足音が近づいてくる。
ハッとして顔をあげると、目の前には首を傾げる貴方がいた。
背中に感謝の言葉を浴びながら、笑顔で「どうしたの」と私に視線を向ける。
私が「何でもないよ」と返すと、貴方はまた笑った。
憎らしいくらいに愛おしい表情だ。
それに、また私の心が溶けていくのを感じた。ゆっくり、確実に。
再び歩き始めた貴方に、少しでも近づきたくて…大股に一歩を踏み出す。
けれどできたのは貴方を一瞬振り向かせるだけ。
貴方が次にだした右足は、私の一歩なんかよりずっと大きい。
心だけじゃなくて、この距離も解かせればいいのに。
そう、思った。
二人の不揃いな足音だけが辺りに響く。
それをぼんやり聞きながら、私は貴方の背中を見つめていた。
不意に、貴方は歩く速度を上げた。
先に困っている人を見つけたらしい。
15センチの距離が遠くなる。
不安になって腕を伸ばすけれど、この手が貴方を掴むことはなかった。
今も、今までも、きっとこれからも。
いつも、そうだ。
ようやく勇気が降りてきた時にはもう遅くて、貴方は私の届かない位置に居る。
「来て」と願えば、「助けて」と乞えば、優しい貴方のことだから、駆けつけてくれるだろう。
でもそれじゃいけない。自分からいかなくちゃ。
それは、貴方に無理をさせたくないからでもある。
貴方はいつだって一人で抱え込もうとするから。
溢れて零れそうになっても、「大丈夫」と笑ってそれを飲み下す。
何でも一人でやろうとして、持ちきれなくなることだってあった。
私は貴方の限界がおもてにでるまで気づけない。
大好きなのに。本当はダメになる前に傍に寄って、そっと手を貸すべきなのに。
不器用な私にはそれができないから…いつまで経っても距離は縮まらない。
差は、詰まらない。
たとえ手と手が触れ合いそうな15センチの距離にいたって、心は噛み合わないから、自然に離れていく。
そうして、私の心は溶けていく。
甘い言葉に煮詰められ、とろとろと形を失くすのだ。
ジャムのようになった私の心は、瓶へと詰められる。
この瓶がいっぱいになった時、きっと私の心は原型を留めていない。
溶かされつくして、おしまいだ。
貴方に見つけられないままに。
そんな最後はもちろんいやだ。だけど。
ふわふわと宙に浮くような錯覚を、名前を呼ばれるだけで感じる幸福を、長く味わいすぎた。
あまりに心地よくて、抜け出せない。
壊れるのが、捨てられるのが、怖かった。
ふと、一つの足音が近づいてくる。
ハッとして顔をあげると、目の前には首を傾げる貴方がいた。
背中に感謝の言葉を浴びながら、笑顔で「どうしたの」と私に視線を向ける。
私が「何でもないよ」と返すと、貴方はまた笑った。
憎らしいくらいに愛おしい表情だ。
それに、また私の心が溶けていくのを感じた。ゆっくり、確実に。
再び歩き始めた貴方に、少しでも近づきたくて…大股に一歩を踏み出す。
けれどできたのは貴方を一瞬振り向かせるだけ。
貴方が次にだした右足は、私の一歩なんかよりずっと大きい。
心だけじゃなくて、この距離も解かせればいいのに。
そう、思った。
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