恋愛物語り。

闇猫古蝶

文字の大きさ
2 / 17

溶けない雪

しおりを挟む
右耳にだけさしたイヤホンから、大好きだった歌が流れる。

白い息をはぁっと吐いて、クリスマス特有の雰囲気を遮断しようと、目を瞑る。

『私は今でも待っている いつか想いの溶けるまで』

私の耳に届く歌の歌詞は、まるで私そのものだ、と思った。

君を忘れられず、今もこうして、『二人の待ち合わせ場所』にいるのだから。

風の噂で聞いたが、君に彼女ができたらしい。

それなのに、待ってる。

「馬鹿らし…」

マフラーに顔を埋めて、小さく呟いた。

呟いて、その言葉が自分の心を刺すのだから、救えない。

いつか来てくれるんじゃないか、なんて期待しているのだから、笑えない。

こんなことしていたって戻らないのは、とっくにわかっているのに。

君と別れて三年の月日が流れた今でも、クリスマスの日にはこうして来てしまう。

我ながら気持ち悪いな、と思う。

「あ…」

不意に吹いた風に目を開けると、通りの反対に君の姿がみえた。

「ねぇ──」

声をかけるくらいなら…そう思って手をあげたけれど、声は届くことはなかった。

「私、は…」

君の背中に飛びつく小柄な女の子の姿が見えて、声は次第に小さく萎んでいく。

「はぁ…」

わかっていた。わかっていたんだ。諦める理由ができたじゃないか。これで、もう忘れよう。

「…っ、うぅ」

言葉にならない想いが、胸に渦巻く。

諦めようとする度、好きが溢れてしまう。

背を向けて立ち去りたいのに、視線は君を追いかける。

どうしようもなく、好きなんだ。

でもこれ以上苦しみたくないから、弱くなりたくないから。

「愛して、いたよ」

言い訳がましく君の背に呟き、涙を拭って…転びそうになるのも構わないで駆け出した。

君とは、反対の方向に。

いつの間にか降った雪は、私の頭に薄らと積もっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...