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繁火への旅
疑惑は繁火の城にて
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時計屋の男の事を役所に報告した後、私達は一旦宿屋に戻り李と灯と合流すると街で昼食を取った。その後、再度李と灯は宿屋に残ると私達は男が話していた繁火の城へと向かったのだった。
それにしても…
「黄蘭様、黄桃様…着替える必要ありますか?」
サスペンダー付きの黒のハーフパンツに白いシャツに白の靴下と黒の革靴姿の黄蘭と黄桃を凝視するなり問いかけると、二人は当然かのような口振りで返答した。
「当たり前じゃん!城に行くんだよ?正装しないと失礼だよ」
「繁火は着物じゃなくても大丈夫だから寧ろ、こういう服の方がいいんだよ。着物じゃなくてね」
もしかして、嫌味…?
ドヤ顔で言う黄桃を他所に遠回しに毒を吐く黄蘭に内心呆れた視線を投げかけた。
「私はこの服装でいいです。御二方の護衛ではありますが元は日華様の護衛兼、世話役ですので黒の間の着物の方がいいです。それに、この服装の方が動きやすいので」
刃ノ葉も隠せるからね
「ふ~ん…」
「そう…」
興味の無さそうに呟き顔を背ける黄桃と黄蘭に内心苦笑いが零れる。
ほんと…二人の護衛は大変だ
❋
…キー…
「何の用だ?」
繁火の中心にある大きな城壁に石垣と金色の装飾で彩られた城の木製の大きな城門から出て来た黄色と黒が混じった角麻柄の着物に黒の帯をした二十代前半ぐらいの男を見上げながら黄桃は堂々と口を開いた。
「先日、輸出した製品に問題がある事が分かったんだけどその製品について被害がないか知りたいんだ。もし、あったら僕達が謝礼金を払うから話をさせて欲しいと上に通して。鬼衆王の黄桃と黄蘭って言えば分かるから」
「鬼衆王!?わ、分かりましたっ!」
ザッザッザッザッ…
鬼衆王と言うなり青ざめ早足で城の中へと走って行った男を他所に、黄蘭は笑みを浮かべながら口を開いた。
「行こう!」
「うん!」
「え、待たなくていいんですか?」
「僕達は鬼衆王だから先に中に入ってても咎められる事はないもん」
「それに、直ぐに向こうからそれなりの地位の奴が来るから大丈夫だよ」
鬼衆王の権力様様だなぁ…
数分後、城の本殿まで着くと焦った顔で走ってくる五十代ぐらいの男が現れた。
「はぁ…はぁ…黄蘭様、黄桃様…お待たせしました」
目の前に来るなり息を整えながら声を上げた黄緑色の七宝柄の着物に緑の帯をし白髪混じりの黒髪に紫色の瞳を持ち顎髭を生やした男に、黄桃は瞳を金色にし笑みを浮かべた。
「突然、訪ねて来てごめんね?でも、急用だったんだ」
「話は下の者から聞きました。先日、輸出して下さった製品に問題があったんですよね?」
「うん、そうだよ。だから、その製品で被害がないか知りたくて…もし、被害があったのなら僕達が謝礼金を払うつもりだから話を聞かせてくれる?」
「分かりました。詳しい話は中で致しましょう」
「うん!」
「行こ行こ~!」
男は柔らかな笑みを浮かべ頷くなり中へと促すと黄桃と黄蘭は元気いっぱいに返事をし歩き出した。
「黄蘭様、あの方は一体…?」
男に聞こえない様に隣で歩く黄蘭に小さな声で話しかけると、黄蘭は前を向きながら小さな声で話し始めた。
「あの男は繁火の城で各国との貿易に関わってる奴だよ。名前は確か…曜朗だっけ?鬼の位は中ぐらい。性格はお金に貪欲でいけ好かない男」
ふむ…要注意な奴って事か…
黄蘭の言葉に頷きながら私の脳裏には紫音の言葉が過ぎっていた。
『…繁火の城の人間を信じてはいけないよ』
結局、紫音の言葉通りってわけか…
そう思うなり曜朗の後ろ姿を見ながら気を引き締めたのだった。
❋
「こちらで詳しい話を致しましょう」
本殿の二階にある客間の一室に通された私達は曜朗に促されるがまま座布団の上に座ると天井裏の複数の気配に内心顔を顰めた。
怪しさしかない…っ!でも、確実な証拠が無ければ問い詰める事は出来ないし行動に移すしかないか…
「曜朗様、厠を貸して頂けませんか?」
目の前に座ろうとした曜朗に声を掛けると一瞬、紫色の瞳で睨んだが直ぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「ええ、構いませんよ。場所はここから左に真っ直ぐ行き二回ほど右に行けば厠です」
「分かりました、ありがとうございます」
立ち上がり小さく会釈をすると部屋から出て行った。
誰かが着いて来る気配は無しか…まぁ、所詮人間の子供の護衛なんて警戒されないのが普通か。取り敢えず、私は私の仕事をしよう!
事前に黄蘭と黄桃と計画した話はこうだ。二人が繁火の城の者と輸出した製品に不良が見つかった話を口実に引き付けている内に武器を渡した犯人が誰か知っている可能性がある護衛になったばかりなのに牢屋に入れられた者を私が見つけ出し話を聞く。もし、その話が有益な情報では無かった場合は城の中をくまなく探すという計画なのだ。
だから、厠じゃなくて地下に行かないとね
私は部屋を出るなり曜朗に言われた道順ではなく地下へ行く道順へと走り出した。
それにしても…
「黄蘭様、黄桃様…着替える必要ありますか?」
サスペンダー付きの黒のハーフパンツに白いシャツに白の靴下と黒の革靴姿の黄蘭と黄桃を凝視するなり問いかけると、二人は当然かのような口振りで返答した。
「当たり前じゃん!城に行くんだよ?正装しないと失礼だよ」
「繁火は着物じゃなくても大丈夫だから寧ろ、こういう服の方がいいんだよ。着物じゃなくてね」
もしかして、嫌味…?
ドヤ顔で言う黄桃を他所に遠回しに毒を吐く黄蘭に内心呆れた視線を投げかけた。
「私はこの服装でいいです。御二方の護衛ではありますが元は日華様の護衛兼、世話役ですので黒の間の着物の方がいいです。それに、この服装の方が動きやすいので」
刃ノ葉も隠せるからね
「ふ~ん…」
「そう…」
興味の無さそうに呟き顔を背ける黄桃と黄蘭に内心苦笑いが零れる。
ほんと…二人の護衛は大変だ
❋
…キー…
「何の用だ?」
繁火の中心にある大きな城壁に石垣と金色の装飾で彩られた城の木製の大きな城門から出て来た黄色と黒が混じった角麻柄の着物に黒の帯をした二十代前半ぐらいの男を見上げながら黄桃は堂々と口を開いた。
「先日、輸出した製品に問題がある事が分かったんだけどその製品について被害がないか知りたいんだ。もし、あったら僕達が謝礼金を払うから話をさせて欲しいと上に通して。鬼衆王の黄桃と黄蘭って言えば分かるから」
「鬼衆王!?わ、分かりましたっ!」
ザッザッザッザッ…
鬼衆王と言うなり青ざめ早足で城の中へと走って行った男を他所に、黄蘭は笑みを浮かべながら口を開いた。
「行こう!」
「うん!」
「え、待たなくていいんですか?」
「僕達は鬼衆王だから先に中に入ってても咎められる事はないもん」
「それに、直ぐに向こうからそれなりの地位の奴が来るから大丈夫だよ」
鬼衆王の権力様様だなぁ…
数分後、城の本殿まで着くと焦った顔で走ってくる五十代ぐらいの男が現れた。
「はぁ…はぁ…黄蘭様、黄桃様…お待たせしました」
目の前に来るなり息を整えながら声を上げた黄緑色の七宝柄の着物に緑の帯をし白髪混じりの黒髪に紫色の瞳を持ち顎髭を生やした男に、黄桃は瞳を金色にし笑みを浮かべた。
「突然、訪ねて来てごめんね?でも、急用だったんだ」
「話は下の者から聞きました。先日、輸出して下さった製品に問題があったんですよね?」
「うん、そうだよ。だから、その製品で被害がないか知りたくて…もし、被害があったのなら僕達が謝礼金を払うつもりだから話を聞かせてくれる?」
「分かりました。詳しい話は中で致しましょう」
「うん!」
「行こ行こ~!」
男は柔らかな笑みを浮かべ頷くなり中へと促すと黄桃と黄蘭は元気いっぱいに返事をし歩き出した。
「黄蘭様、あの方は一体…?」
男に聞こえない様に隣で歩く黄蘭に小さな声で話しかけると、黄蘭は前を向きながら小さな声で話し始めた。
「あの男は繁火の城で各国との貿易に関わってる奴だよ。名前は確か…曜朗だっけ?鬼の位は中ぐらい。性格はお金に貪欲でいけ好かない男」
ふむ…要注意な奴って事か…
黄蘭の言葉に頷きながら私の脳裏には紫音の言葉が過ぎっていた。
『…繁火の城の人間を信じてはいけないよ』
結局、紫音の言葉通りってわけか…
そう思うなり曜朗の後ろ姿を見ながら気を引き締めたのだった。
❋
「こちらで詳しい話を致しましょう」
本殿の二階にある客間の一室に通された私達は曜朗に促されるがまま座布団の上に座ると天井裏の複数の気配に内心顔を顰めた。
怪しさしかない…っ!でも、確実な証拠が無ければ問い詰める事は出来ないし行動に移すしかないか…
「曜朗様、厠を貸して頂けませんか?」
目の前に座ろうとした曜朗に声を掛けると一瞬、紫色の瞳で睨んだが直ぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「ええ、構いませんよ。場所はここから左に真っ直ぐ行き二回ほど右に行けば厠です」
「分かりました、ありがとうございます」
立ち上がり小さく会釈をすると部屋から出て行った。
誰かが着いて来る気配は無しか…まぁ、所詮人間の子供の護衛なんて警戒されないのが普通か。取り敢えず、私は私の仕事をしよう!
事前に黄蘭と黄桃と計画した話はこうだ。二人が繁火の城の者と輸出した製品に不良が見つかった話を口実に引き付けている内に武器を渡した犯人が誰か知っている可能性がある護衛になったばかりなのに牢屋に入れられた者を私が見つけ出し話を聞く。もし、その話が有益な情報では無かった場合は城の中をくまなく探すという計画なのだ。
だから、厠じゃなくて地下に行かないとね
私は部屋を出るなり曜朗に言われた道順ではなく地下へ行く道順へと走り出した。
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