鬼の乙女ゲーム世界で裏チートで生き残りたいだけなのに

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繁火への旅

やりすぎはいけません

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 思わぬ事件の後、街にて皆で無事に朝餉を食べ終わり李と灯は宿屋に戻ると黄桃と黄蘭と共に私は目的である怪しい話の出処である店へと向かったのだった。

「ここが例の怪しい話の出処ですか?」

 街中にある一件普通の木造の建物に窓ガラスから見える沢山の時計に首を傾げる。

「そうだよ。朝餉の前にこの辺り周辺の店や人に聞き込みしたから間違いないよ」

 頷く黄蘭に、再度口を開き今更ながら質問する。

「そう言えば、その怪しい話の内容って何ですか?」

色々あったから聞きそびれたんだよね

「お前、話の内容も知らないで着いて来たの?」

 驚いた顔をしながら元の茶色の瞳で見つめ問いかける黄桃に視線を逸らしながら呟く。

「…はい」

「はぁ…それじゃあ、しーちゃんから何も聞かされてないって事か」

 まぁ、初めて聞かされた時は日華も居たし急だったから話すタイミングも無かったのかも…

 この場に居ない時雨を思いながら内心納得しているとそれまで黙って聞いていた黄蘭が口を開いた。

「発端は雪羅で武器を売っていた人間が居て話を聞いたら繁火から仕入れた物だって分かったんだ。それで、繁火の街を調べてみたら当たり前の様に武器を売っている店がある現状が分かったけどその武器を支給している人物は分からなかった。だから、しーちゃんは僕達を繁火に行かせて武器を支給して広めている人物を突き止めさせようってわけ」

 雪羅…武器を売る…あれ?それってどこかで…‥あ!新鬼月祭だ!暁と朱夏と三人で新鬼月祭に行った時に街で刃ノ葉で的当てをする店を出していたおじさんがいたっけ?確か、そのおじさんって雪羅から来たって言ってたし…それか!あの時はただの女中見習いだったから何も出来ないし関わる事はないと思って忘れようとしたんだよね…現に、今の話を聞くまで見後に忘れてたけど…

「今頃、しーちゃんは雪羅で武器の売買をしている奴らを取り締まってると思うよ」

「僕達は僕達の仕事をしないとだね」

「そうだね、どう壊そうか?」

「んー、死なない程度にしようよ」

「分かった!楽しみだね」

「うん!」

 聞き捨てならない言葉で話しながらお互いに笑みを浮かべる黄蘭と黄桃に先行きが不安になったのは言うまでもないだろう。

大丈夫かな…?

 ❋

…キー…‥バタンッ…

 古びた木製の扉を開け中に入ると店の奥から高らかな声が上げられた。

「いらっしゃい!少し、待っててくれ…っ」

 レトロな雰囲気の内装に周りにある時計を見渡していると、店の奥から声の主である白いシャツに焦げ茶色のズボンを履いた四十代ぐらいの黒髪の短髪に茶色の瞳を持つ男が現れた。

「ん?子供?」

男は私達の顔を見るなり驚いた表情を見せた。

「おじさん、ネジを売って欲しいんだけど?」

「っ…」

 黄桃は笑みを浮かべたままそう言うと男は目を見開き戸惑いの表情を見せた。

「子供には売れないから帰んな!」

「そんな‥っ!?どうしても欲しいのに…」

「僕達、お金だってちゃんと持って来たのに…」

 あからさまに落ち込む二人に男は腕を組み顔を背け瞼を閉じた。

「あーあ…せっかく持って来たお金が台無しだ」

「いつもより多めに貰ったのに意味がなくなっちゃったね」

 黄桃はそう言いながら中くらいの黄色の巾着袋を少し開けると中から沢山の純金鬼銭が見え黄蘭がすかさず声を上げた。

「そうだね。こんなに純金鬼銭がいっぱいあるのに無駄になっちゃったね」

「っ…!?」

 その言葉に瞼を閉じていた男は目を開けるなり慌てて声を上げた。

「お前達、ネジが欲しいんだろ!?」

「うん、そうだけど…」

「でも、駄目なんでしょ?」

 必死な顔で問いかける男に黄桃と黄蘭はあからさまに落ち込んだ顔で聞き返した。

「いや、駄目じゃない!そんな大金…ゴホンッ!ちゃんとお金を持って来たのならいいぞ。案内しよう!」

 見事に黄桃と黄蘭の手の上に転がされた男の姿に内心呆れた視線を投げかけた。

…‥キー…‥

 男はカウンターの床下を外すと地下へ続く石段があり促されるがままに下へと行くと中は壁一面に刃ノ葉や刀や銃が飾られていた。

「何がいい?」

 武器を見ながらニヤついた顔で振り向いた男に、黄桃は瞳を金色にし笑を零した。

「おじさん、凄いね!こんなに沢山あるだなんて思わなかったよ!」

「まぁ、この店は他より多めに仕入れているからな」

「ふ~ん、そうなんだぁ…」

「黄桃、どう…?」

 隣にいた黄蘭は男に聞こえない様に黄桃に話しかけると、黄桃は口角を上げ口を開いた。

「…黒」

 その言葉に黄蘭は笑みを浮かべ黄桃からお金が入った巾着袋を受け取ると男に近づいた。

「おじさん…」

「…?」

「ここにある物を全部頂戴!」

「は…はぁ!?い、いいいのか!?」

「うん!僕達、全部欲しいんだ!でも、このお金全部で足りるかな?」

「いや、こんな大金が全部だなんて多すぎ…ゴホンッ!いや、これ全部でいいぞ」

「良かった!じゃあ、このお金全部あげるね」

「ああ…」

 満面の笑みで両手を差し出した男に対し、黄蘭は笑顔のまま持っているお金が入った巾着袋を手の上に置くと男の視線が巾着袋に移った。

「ふっ…」

 黄蘭は口角をあげるなり隙をつくように巾着袋を持つ男の手に触れ力を込めた。

ギュゥゥ…

「あぁぁぁぁぁぁぁっ!?!!」

ドンッ!ボトボトボトボトボトボトッ…

 男の手の骨が折れぐにゃりと曲がるのと同時に持っていたお金が入った巾着袋が床に零れ落ちた。

「おじさん、知ってる?武器の売買って禁止なんだよ」

「な、何を言って…」

 痛みに悶えながら口籠もる男にすかさず自身が持つ刃ノ葉を太腿に付けたホルダーケースから取り出し手に取ると男の横腹に当てた。

‥スー…

「っ‥!?」

「おじさん、知ってる事全部吐かないと全身粉砕骨折になるかもしれませんよ?いや、最悪の場合死ぬ可能性もあるかも…」

「な…っ!?」

「信じるか信じないかはおじさん次第です」

「っ…」

 男は私の顔と目の前で手を曲げた黄蘭の顔を見比べるなり諦めた様に肩を落とし口を開いた。

「何が知りたいんだ…?」

「おじさんに武器を渡した者の名前」

「渡した奴の名前は知らない。だが、何処の関係者かは分かる…繁火の城だ」

「繁火の城?」

 男は言いにくそうにしながらも頷き話を続けた。

「毎月、城から来た者が人目を避けて武器を持って来る。持って来る奴は三~四人で月ごとに入れ替わりでやって来るんだ。それで、俺はその武器を他の店に流してるって訳だ。ついでに言えば、流し先は繁火だけじゃなく雪羅にも流してる」

「つまり、おじさんは武器を渡した者の名前を知らないし会ったこともないって事?」

 話終わった男に対し、黄桃が問いかけると男は小さく頷いた。

「ああ、知らない」

「困ったなぁ…名前くらいは知ってると思ったのに」

「っ…!?」

 黄蘭が悩ましげな顔でそう言うと男は焦った顔で慌てて口を開いた。

「ま、待てっ!?これは、最近聞いた話なんだが何でも繁火の城で護衛として入ったばかりの奴が牢屋に入ったって話を聞いたんだ!」

「ふ~ん…それで?」

「護衛として入ったばかりの奴が牢屋に入れられたんだ。何か手がかりになるかもしれないだろ?」

「はぁ…黄蘭」

「分かってるよ…黄桃」

 男の言葉に二人は落胆した表情を浮かべ言い合うと、黄蘭は男に対し笑みを浮かべた。

「色々話してくれてありがとう、おじさん」

「お、おう…なら、早く解放してくれ」

 未だに手に触れたままの黄蘭と横腹に刃ノ葉を当てたままの私を見比べながら懇願する男に、黄蘭は手を離しそれと同時に私も刃ノ葉を離した。

ドンッ‥

「はぁ…はぁ…」

 解放されたと同時にその場に崩れ落ちた男はぐにゃりと曲がった左手を右手で触れながら絶望に打ちひしがれた。

「これじゃあ、時計屋なんて続けられねぇよ…」

タンッ…

「おじさん、何言ってるの?」

 絶望する男に黄蘭は冷たい目で見下ろすと笑を零した。

「この店、無くなっちゃうのにそんな心配しても意味ないよ」

「は…?」

「残念だったね、おじさん」

 黄蘭の隣に黄桃が行くなり二人揃って笑みを浮かべた。

あ…やばいかも…

タッタッタッ…

 二人の姿に嫌な予感がし慌てて男を間に挟み二人の前に回り込む。

「駄目です!それ以上は駄目です!」

「いい所なのに…」

「…邪魔しないでよ?」

 怪訝な顔で見つめる黄桃と黄蘭に呆れた視線を投げかける。

「お二人の護衛兼、見張り役なので言わせて頂きますが…もしかしなくても、このおじさんを含めて店を壊す気ですよね?」

「それが何?」

「別にいいでしょ?」

「今、このまま店を壊したら私達も無事では済みませんよ?」

「僕達は無事だよ」

「うん、僕達は無事だよ」

それって、私はどうなってもいいって事ね…

 当たり前の様にさらりと返す二人に内心呆れながらも再度説得を試みる。

「じゃあ、私達の食費が削られてもいいって事ですね」

「は?」

「どういう意味?」

「考えてもみて下さい。この店を壊したらその後処理を含め周辺住民にも被害が及んだらその人達の治療費を桜鬼城で負担しなくてはいけないんですよ?潰れてもいい店でも壊したら桜鬼城の負担になります。つまり、桜鬼城から出るお金は私達の食費にも繋がる訳ですから食べる物が質素な物になるかもしれないし最悪の場合減らされるかもしれません。黄桃様と黄蘭様は食べる物が無くなってもいいんですか?」

「それは…」

「良くないけど…」

「私は絶対に嫌です!城での食べ物はどれも美味しいのに無くなるだなんて嫌です!なので、お店を壊すのは止めて下さい」

食べ物大事!

「…黄桃」

 黄蘭は隣に立つ黄桃の方を見ると、黄桃は顔を引き攣らせながら渋々頷いた。

「…分かった、店を壊すのは止めてあげるよ」

ふぅ…良かった…

「た、助かった…」

 同じく安堵の声を漏らす男に視線を移し再度口を開く。

「助かってはないですよ?」

「へ…?」

「この事は役所に報告しておきますので、自分の足で役所に行って自白して罪を償って下さい。あ、逃げようだなんて考えない方がいいですよ?私達は桜鬼城の者なのでどこまで逃げても捕らえられるのがおちですから」

「桜鬼城…?」

青ざめる男に見下ろしながら冷たく言い放つ。

「ご愁傷さまです」







































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