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秘密のお仕事
怪しい冷の秘密とは?
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「月華!あれ食べたい!豆大福!」
金色の髪を揺らし甘味の店を指差し声を上げる日華に冷静に返答する。
「走ったら駄目ですよ?」
「分かってるって!」
「あと、先に‥」
「行くのは駄目!‥だよね?はいはい、分かってまーす!」
はぁ…元気がいいのは良いんだけど…
街の中を手を繋いで楽しそうに辺りを見渡す日華に内心溜息と共に苦笑いが零れた。
成長はしたんだよね。昔みたいに、勝手に走り出す事はなくなったし好き嫌いも減ったけど悪知恵だけが増えたというか何というか…
背丈も伸び顔つきも母である咲羅に似てきた日華は今までの教育の影響か悪知恵が働く様になり見えない所で楽しようとするようになったのだった。
「…あ!月華、あれ見て!」
「ん?」
突然、足を止めた日華の指差す方を見ると梅柄の朱色と白が混じった着物に黒色の帯をし梅の形をした簪を挿した朱色の猫っ毛の髪にオレンジ色の瞳を持つ朱夏の姿があった。
「しゅ‥」
ザッ‥
「駄目ですっ!日華様!」
「んーっ!?」
朱夏に話しかけようとした日華の口を慌てて塞ぎ首を横に振る。
「よく見て下さい!恐らく、朱夏様の隣に居るのは竹緒です」
「…えぇ!?」
話が終わるなり口を塞ぐ手を外すと日華は目を見開き驚きの声を上げた。
「竹緒って例の朱夏の想い人の!?」
「はい、恐らくですが…」
朱夏の隣を歩く籠目柄の薄緑色の着物に紺色の帯をし茶髪に黒い瞳を持つ十一歳ぐらいの少年を見ながら頷くと日華は笑みを浮かべた。
「朱夏…幸せそうだね!」
「そうですね」
花が綻ぶ様な笑みを浮かべながら楽しそうに話している朱夏の姿に笑みを零した。
この四年で朱夏は大人びた表情を見せるようになった。それは、他の皆もそう…
同じ歳である冷と暁も一歳年上の朱夏と同じく時折大人びた表情を見せる様になり、四歳年上の紫音はその容姿に磨きがかかり女性達からの声が多くなった。
黄蘭と黄桃はあんまり変わらないけどね
九歳になった黄蘭と黄桃は少しは身長が伸びたものの変わらず天真爛漫で遠回しに毒を吐く性格のままだった。
それに…
「日華様、もうすぐ黄蘭様と黄桃様も帰って来ますね」
新鬼月祭を前に繁火へと仕入れに向かっている黄蘭と黄桃の事を日華に話し掛けるが日華は表情を曇らせ嫌悪感たっぷりに口を開いた。
「うわぁ…最悪…」
「そんなに嫌ですか?」
「当たり前じゃん!彼奴らが帰って来たら月華と二人っきりになれないもん!」
繋いだ手を握り締め頬を膨らませながら不満気に言う日華に苦笑いを浮かべる。
「それは、そうですが…」
一応、ゲームではヒロインである日華の攻略対象者だった二人なんだけどなぁ…
四年前の繁火での旅以降、黄蘭と黄桃はよく遊びに来る様になりその影響で日華と顔を合わせる事が多くなったせいか何故かお互い嫌悪感を抱く様になってしまった三人に内心複雑な気持ちになっていた。
私がゲームの内容と違う行動をしたせいで変わったって事なのかな?
「ねぇねぇ、そんな事よりあれ何?月華」
「…?」
グイグイと手を引っ張り意識を向けさせるなり道行く数人の男達が持つ一枚の紙を指差す日華に首を傾げながら凝視する。
あれは…
目を凝らしながら見えたその紙には着物姿の女性の絵が描かれていた。
「ねぇ、見えた?何だったの?」
「あれは、ただの絵ですよ。日華様が興味が湧く様な絵ではありません」
「ふ~ん…なら、いいや」
興味を無くしたのか男達から視線を外し甘味の店に視線を巡らせ始めた日華を見ながら内心安堵する。
ふぅ…良かった…
男達が持っていた紙の絵は着物姿の女性の絵。つまりは大人が見る遊郭の遊女かもしくは、春画である可能性が高かった。
子供の日華には見せられないからね。そう言えば、遊郭で思い出したけど最近冷の帰りが遅いんだよね…それに、何か私が知らない仕事をしているみたいで引っかかるし…
任務で長い間城を留守にする事はあるもののそれ以外は殆どが城の警備か街中の警備に回っていた冷が最近になっていつもより帰りが遅く酷い時は朝方まで帰って来ない日が続いていた。
もしかして、もうこの頃から時雨に…
そう思うなり不安な気持ちに駆られた。
「月華?どうしたの?」
「あ、いえ…」
心配そうに問いかける日華に慌てて首を横に振り平然を繕いつつ近くの甘味の店を指差した。
「日華様、あのお店に行ってみませんか?温かいぜんざいでも食べましょう」
「いいね!食べよう!」
瞳を輝かせながら手を引っ張り頷く日華を見ながらも内心では冷の事が頭から離れずにいた。
今夜、彼奴にかまをかけてみるか…
金色の髪を揺らし甘味の店を指差し声を上げる日華に冷静に返答する。
「走ったら駄目ですよ?」
「分かってるって!」
「あと、先に‥」
「行くのは駄目!‥だよね?はいはい、分かってまーす!」
はぁ…元気がいいのは良いんだけど…
街の中を手を繋いで楽しそうに辺りを見渡す日華に内心溜息と共に苦笑いが零れた。
成長はしたんだよね。昔みたいに、勝手に走り出す事はなくなったし好き嫌いも減ったけど悪知恵だけが増えたというか何というか…
背丈も伸び顔つきも母である咲羅に似てきた日華は今までの教育の影響か悪知恵が働く様になり見えない所で楽しようとするようになったのだった。
「…あ!月華、あれ見て!」
「ん?」
突然、足を止めた日華の指差す方を見ると梅柄の朱色と白が混じった着物に黒色の帯をし梅の形をした簪を挿した朱色の猫っ毛の髪にオレンジ色の瞳を持つ朱夏の姿があった。
「しゅ‥」
ザッ‥
「駄目ですっ!日華様!」
「んーっ!?」
朱夏に話しかけようとした日華の口を慌てて塞ぎ首を横に振る。
「よく見て下さい!恐らく、朱夏様の隣に居るのは竹緒です」
「…えぇ!?」
話が終わるなり口を塞ぐ手を外すと日華は目を見開き驚きの声を上げた。
「竹緒って例の朱夏の想い人の!?」
「はい、恐らくですが…」
朱夏の隣を歩く籠目柄の薄緑色の着物に紺色の帯をし茶髪に黒い瞳を持つ十一歳ぐらいの少年を見ながら頷くと日華は笑みを浮かべた。
「朱夏…幸せそうだね!」
「そうですね」
花が綻ぶ様な笑みを浮かべながら楽しそうに話している朱夏の姿に笑みを零した。
この四年で朱夏は大人びた表情を見せるようになった。それは、他の皆もそう…
同じ歳である冷と暁も一歳年上の朱夏と同じく時折大人びた表情を見せる様になり、四歳年上の紫音はその容姿に磨きがかかり女性達からの声が多くなった。
黄蘭と黄桃はあんまり変わらないけどね
九歳になった黄蘭と黄桃は少しは身長が伸びたものの変わらず天真爛漫で遠回しに毒を吐く性格のままだった。
それに…
「日華様、もうすぐ黄蘭様と黄桃様も帰って来ますね」
新鬼月祭を前に繁火へと仕入れに向かっている黄蘭と黄桃の事を日華に話し掛けるが日華は表情を曇らせ嫌悪感たっぷりに口を開いた。
「うわぁ…最悪…」
「そんなに嫌ですか?」
「当たり前じゃん!彼奴らが帰って来たら月華と二人っきりになれないもん!」
繋いだ手を握り締め頬を膨らませながら不満気に言う日華に苦笑いを浮かべる。
「それは、そうですが…」
一応、ゲームではヒロインである日華の攻略対象者だった二人なんだけどなぁ…
四年前の繁火での旅以降、黄蘭と黄桃はよく遊びに来る様になりその影響で日華と顔を合わせる事が多くなったせいか何故かお互い嫌悪感を抱く様になってしまった三人に内心複雑な気持ちになっていた。
私がゲームの内容と違う行動をしたせいで変わったって事なのかな?
「ねぇねぇ、そんな事よりあれ何?月華」
「…?」
グイグイと手を引っ張り意識を向けさせるなり道行く数人の男達が持つ一枚の紙を指差す日華に首を傾げながら凝視する。
あれは…
目を凝らしながら見えたその紙には着物姿の女性の絵が描かれていた。
「ねぇ、見えた?何だったの?」
「あれは、ただの絵ですよ。日華様が興味が湧く様な絵ではありません」
「ふ~ん…なら、いいや」
興味を無くしたのか男達から視線を外し甘味の店に視線を巡らせ始めた日華を見ながら内心安堵する。
ふぅ…良かった…
男達が持っていた紙の絵は着物姿の女性の絵。つまりは大人が見る遊郭の遊女かもしくは、春画である可能性が高かった。
子供の日華には見せられないからね。そう言えば、遊郭で思い出したけど最近冷の帰りが遅いんだよね…それに、何か私が知らない仕事をしているみたいで引っかかるし…
任務で長い間城を留守にする事はあるもののそれ以外は殆どが城の警備か街中の警備に回っていた冷が最近になっていつもより帰りが遅く酷い時は朝方まで帰って来ない日が続いていた。
もしかして、もうこの頃から時雨に…
そう思うなり不安な気持ちに駆られた。
「月華?どうしたの?」
「あ、いえ…」
心配そうに問いかける日華に慌てて首を横に振り平然を繕いつつ近くの甘味の店を指差した。
「日華様、あのお店に行ってみませんか?温かいぜんざいでも食べましょう」
「いいね!食べよう!」
瞳を輝かせながら手を引っ張り頷く日華を見ながらも内心では冷の事が頭から離れずにいた。
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