鬼の乙女ゲーム世界で裏チートで生き残りたいだけなのに

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シナリオの再編

責任取ってよね

『…‥お前が好きだ』

 そう言った暁の声が耳に残ったままその大きな背中におでこをつける。

トンッ…

「俺の気持ち…分かったんじゃねぇのかよ?」

「…分かったよ」

「じゃあ、何でこうなるんだ?」

 宿屋の一室にて、一つの布団の中で灰色の寝巻きを着た私は緋色の寝巻き姿の暁と横になりながら背を向ける暁の問いかけに小さく呟き返す。

「今日だけだから…お願い…」

「っ…」

ドサッ…バサッ…

 突然、振り向いた暁に囲われる様に両肩を押さえつけられるなり赤髪が揺れ至近距離に熱の篭った紅色の瞳が見つめられ戸惑いの表情を浮かべる。

「好きな奴と一緒に寝る状況に耐えられるわけねぇだろ」

「っ…」

 両肩から手が外され耳元に大きな手が置かれ覗き込む紅色の瞳に息が詰まる。

 私は暁の告白に答える事が出来ない。私は側室じゃなくて日華の護衛役兼、世話役だから。それに、もう恋愛はしないって決めたのに…

 唇をぎゅっと結ぶも紅色の瞳から目が逸らせず気持ちが揺らぐ。

でも…

ギュッ…

「っ…?」

 暁の右袖をぎゅっと握るなり戸惑う暁を他所に閉ざしていた口を開く。

「…口づけだけなら…いい‥よ…っ…」

「っ…」

離れたくない…傍にいて…

「これは、まじないだ…」

「…っ…‥ん…」

ギュッ…

 そっと触れた唇が離されるなり左目の眼帯が外され両瞼に熱の篭った柔らかな口づけが落とされ袖を握る手に力を込める。

「月華…」

「暁…」

何で、眼帯の事を知って…

「ん‥っ…」

 戸惑いの表情を浮かべるなり再度口づけられ甘い声が漏れると直ぐに離された唇が同じ様に両瞼に触れた。

 おまじない…ゲームでも攻略対象者達が愛する人にだけする眠る前のおまじないと称した口づけをヒロインにしてたっけ?…凄く温かい…‥

 肉体的にも精神的にも疲労があるせいかその温かな熱に眠気が誘われ両瞼に触れた唇が離されるなり袖を握る手を離しそのまま意識を手放した。

「…‥」

「…寝たか」

 小さな寝息が聞こえ小さく呟くと外した眼帯を枕元に置き右頬に掛かる黒髪をそっと耳にかける。

「効いたみたいだな」

 先程まで見せていた不安そうな瞳を思い出し安心した様に眠る月華の姿に安堵する。

 愛する人にする鬼のまじないは唇と瞼に口づけをする事で自身の妖力をほんの僅かだけ与えるもの。それは、愛する相手の心を安らがせる効果があるとされる…と昔からの話であったが、本当に効果があるんだな…

 覆いかぶさっている体をゆっくりと離し左横に移動すると横になり布団をかけ直し右肘を着き頭を支えながら月華の顔を見つめる。

 あんな顔をさせたのが俺じゃねぇのは気に食わねぇけど…

「意識するようになっただけでもマシか…」

 顔を赤くする月華の姿を思い出し満足気な笑みを浮かべるとその額にそっと口づけを落とした。

 ❋

…‥‥ん…‥

…ギュッ…‥

…‥温かい…

 意識が浮上するなり感じた湯たんぽの様な温もりに自然と頬が緩むと重い瞼をゆっくりと開ける。

「…‥ん…?」

 瞼を開けるなり緋色の襟を掴む自身の手と共に隙間から見える分厚い胸板が見え眠気が引いていく。

え…‥

「起きたか」

 突然、掛けられた声に襟から手を離し恐る恐る顔を上げると赤髪に目元に隈がある紅色の瞳と目が合い固まる。

 えっと…確か、私が今日だけは一緒に寝て欲しいって頼んでこうなったんだよね?あれ?でも…

 ふと、左目の眼帯がない事に気づき昨晩の出来事を思い返す。

 そうだった!?何故か知らないけど暁が左目の眼帯の事を知ってて理由をまだ聞いてないんだった!

「あ…暁、その…」

 咄嗟に左目に手を当て隠すと恐る恐る問いかける。

「何で、眼帯の事を知ってたの…?」

「去年の新鬼月祭でお前が倒れた時に知った」

「あ…‥」

あの時、眼帯外したまま寝てたからそれで…

「…嘘」

「え?」

「その前から知ってた」

「何で…」

「彼奴が居なくなった後、ずっとお前を見てたから…それでだ…」

「…‥」

その言葉に冷の顔が思い浮かび口を噤む。

‥ギュッ…ムニッ

「っ‥!?」

 不意に、左目を隠す手が握られるなり外されると指先で頬を摘まれ下げていた視線を上げ目を見開く。

「そんな顔をするな、彼奴は絶対戻って来る」

「何で、そう思うの?」

「何となく…勘だ」

「勘って…」

「それより、俺に言う事ねぇのかよ?」

 頬を摘む指先が離れ再度頬に触れるなり不服そうにそう言う暁に紅色の瞳を見ながら小さく呟く。

「ごめん…眠れなかったよね?」

「ああ、お前のせいで寝不足だ」

「うっ…」

やっぱり…

 暁の目元の隈を見るなり申し訳なさそうに視線を下げると頬に触れている大きな手が離れ肩へと触れた。

「はぁ…」

グイッ!

「っ‥!?」

バサッ…

 触れた肩がそのまま押され赤髪が揺れ大きな体が覆い被さるなり囲うように両耳元に両手が置かれ紅色の瞳が至近距離で覗き込む。

「月華」

「は…え…?」

 名前を呼ばれ戸惑いの声が零れると暁は真剣な顔で再度口を開いた。

「昨日の話の続きだが…」

「昨日の話…?」

「お前が桜鬼城に戻るかどうかの話だ」

「あ…」

「断言するが、お前が戻らなくても戻ったとしてまたいなくなっても俺が絶対見つけて連れ戻す。だから、諦めろ」

「そんなの勝手すぎるよ…」

 困った様にそう言うなり視線を逸らすと耳元に置かれていた右手が頬に触れそのまま指先が唇へと触れる。

「っ…」

「勝手で悪いかよ?…好きな奴とずっと一緒にいたいって思うんだから仕方ねぇだろ」

「あ‥」

ドタドタドタドタッ‥

「っ‥!?」

何!?

 近づいて来る足音に驚くなり暁と共に慌てて布団から抜け出し起き上がる。

 バサッ!バタバタッ…ドタドタドタドタッ‥バタンッ!

「暁様!月華様!只今、戻り‥ま…した?」

 勢いよく戸が開けられるなり飛び込んで来た黒髪に赤い瞳を持ち右頬に切り傷があり右耳に赤色の短冊の様なピアスをつけ赤色と紅色が混じった市松模様の着物に黒の帯をし羽織を着ては一本の長刀を腰に差した烈火に私と暁は一つの布団を挟み畳の上に座り込んだまま平然とした顔で見上げる。

「もしかして、お邪魔でしたか?」

「なっ!?」

「邪魔だけど邪魔じゃない!」

「そうだ!変な誤解をするな!」

 戸惑いの表情を浮かべる烈火に慌てて暁と共に否定すると、烈火は申し訳なさそうに口を開いた。

「まさか、朝からだとは思いませんでした。お邪魔してしまってすみません」

「え…」

ダンッ!

「馬鹿っ!変な誤解をするなと言っただろうが!」

 唖然とする私を他所に暁は立ち上がるなり声を上げると出入口付近にいる烈火に駆け寄った。

タッタッタッ‥

「しかし、布団が一つしかない部屋でお二人が居る状況はどう見てもそうとしか‥」

「あのなぁ、部屋は一部屋しか取れなかったからで布団は昨日色々あって仕方なくそうなったんだよ。だから、断じてお前が考えている事はねぇから勘違いするな!」

「んー…しかし‥」

タッタッタッタッ‥ギュッ…

「な…っ!?」

 立ち上がるなり暁の背中に抱き着くと暁から驚く声が上がり口を開く。

「暁…責任取ってよね」

「は?責任!?」

桜鬼城に戻るしかなくなったじゃん…馬鹿…

 衣服越しに鍛えられた体の感触を感じながらもその温かさに眠気が誘われる。

「暁様、おめでとうございます」

「本当に違うって言ってるだろうが!つか、責任って‥月華も何言ってるんだよ!?」

「…‥」

「月華?おい、まさか…」

 背中から感じる重さと抱き着いたまま微動だにしない月華に暁は青ざめた。

「起きろ!月華、起きろって!!!」





















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