執着系上司の初恋

月夜(つきよ)

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絆を結う

愛でるもの 二課飲み会

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美魔女谷口視点

主人が人の悪い笑みで冴木課長の後任人事を決めてから二ヶ月。
それにより、昔にちょっとばかり冴木課長と男女の関わりがあったと思われる安藤課長が二課にやってきて一ヶ月。
どんな事になるのかと様子見していたけれど・・。

今日は、冴木課長と安藤課長の送別会兼歓迎会。
長机の真ん中には美形な顔に甘やかな笑みを浮かべる冴木課長、その隣にはほんのり微笑む加藤さん。そんな糖分高めのカップルの前に、小馬鹿にした笑みを隠しきれない安藤新課長。
その安藤課長を私と山城君で挟む。

「酒のつまみにバカップル。・・胸焼けしそうね。」
シャンディガフを片手にため息混じりな安藤課長。

ため息の原因の目の前のカップルは・・。

「今日は寒かったから一層手が冷たいね?」
とテーブル下の加藤さんのひざ元へ手を伸ばし、甘い笑顔で話しかける冴木課長。
その距離15センチ。
ちょっと近すぎやしないかしら?
「て、手を握るのは・・。」
まだ羞恥心を捨てきれない29歳常識人加藤さん。
そのほおがふんわりと赤く染まる。
その様子を美形な狼がよだれを垂らして見ている・・。
よだれが頭に落ちてきそうよ?

胸焼け・・。
全くの同感だわ。
そして、どこか主人を思わせるその溺愛ぶり。
その溺愛重そうだけど、加藤さんが幸せならまあいいでしょう。
それに安藤課長も愛しい彼女を溺愛する冴木課長を見ても、ジェラシー的なものは感じられない。
うん、これなら主人の狙い通り?

「料理一通り頼みました!ここ海鮮が美味しいんですって!」
キラキラワンコこと宮本がカップルの隣に座ろうとする。
ああ、おバカさんねぇ。
「宮本、お前は谷口さんのとなりだ。」
さっきの甘い笑みはどこへ?ドスの効いた冴木課長の低音ボイスが響く。
加藤さんの隣に座ろうと中腰になった忠犬は、ボスの威嚇にピャッと俊敏に移動してきた。
「な、なんかすごい動機が・・。」
怒られてもどこかそれを喜ぶM気質な忠犬。
「いい彼女(飼い主)がいないと心配ねぇ。察しなさいよ。あの心の狭い溺愛上司の取り扱いぐらい覚えときなさい。」
「はい、彼女は可愛くて優しいので大丈夫ですっ!」
色素の薄い茶色の目を輝かせ女の子のようにキラキラと満面の笑みを浮かべる忠犬。
そう、飼い主の話は嬉しいのね?尻尾の幻覚が見えるわ。
「ちょっと、心が狭すぎやしないかしら、冴木課長。重い男は嫌われるわよ?ねえ、加藤さん?」
呆れたように言うのは安藤課長。
「あ、いや、ちょっと、困ります・・。」
「いいんだよ、あっちの方がドアに近いだろ?」
溺愛上司は困り顔の加藤さんさえ愛おしいらしい。
「・・加藤さん、明日からは私が上司だから。
苦しくなったらいつでもこちらに来てね。
待ってるわ。」
ほおづえをつき少しばかり首を傾げた安藤課長は、通常時は隠している小悪魔的な魅惑の笑みで加藤さんを魅了する。
「は、はい。」
ぽっとついその美貌に赤面する加藤さん。
・・それ、ダメなヤツよ?加藤さん。
「お、おまえ。」
とメラメラと対抗心を隠さない溺愛上司。
「明日から楽しみねぇ。」
とにっこり笑う安藤課長。

ううん、主人の狙い通り?かしら?
「そうですね。冴木課長は安心して一課に行って頂けますね?」
クスッと笑うのは冷静沈着男子山城。
「そうよ?安心して私に任せて。だいじーに、大切に、優しく甘やかしてあげるから。」
うふふと笑う安藤課長。
「「甘やかすはいらないでしょっ」」
これは皆の総意。
「あら、じゃあ厳しいのがお好み?」
意味ありげにペロリと唇を舐める安藤課長。

普通はないのかっ!?(皆の心の声)

「安藤課長?ほどほどに。面白いのは分かるけど。」
つい小言を言ってしまうのは私も歳をとったからかしら。
「ふふ、わかりますよね。でも気をつけます。」
こちらににっこり笑う安藤課長に他意は感じられない。
もしかしたら、思ってるより取り扱いしやすい子なのかしら?
「私、可愛い子見るとついかまいたくなっちゃうんですよ。」
ハイペースでグラスを空けた安藤課長はデキャンタに入った白ワインを自身のグラスに注ぎ、にこりと笑いながらこちらにも注ぐ。
「姉御肌なんですね。なんか分かります!」
忠犬宮本が笑う。
「・・姉御?うぅん、どうかしら。可愛いものを愛でるのが好きなの。」
白ワインの入ったワイングラスを片手に妖しく笑う安藤課長。
「め、愛でる?」
愛でるって一体?宮本と加藤さんの頭にはクエッションが。
そして、室内の様子をニマニマと冴木課長の奥となりで見ていた佐々木女史の頭には白百合が。
「まさかの禁断!?」
口からこぼれ出たセリフには気づいていないようだ。
全くねぇ、仕方がない子。
「ねえ、安藤さん。なんだかあなたって私の若い頃と似ているかもね?」
思わずデジャブを感じる憎めない存在。
「・・えっ、そ、そうですか?」
優しく微笑まれると少し恥ずかしいそぶりを見せる安藤課長。
どうやらまた一人、幸せにしたい可愛い子が増えたわね。




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