お腹を空かせた駄犬は

月夜(つきよ)

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それぞれのクリスマス

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おねえさん視点

ワンワンっ!
ビクッ!!
「か、可愛いワンちゃんですねー。」
ついへラリと笑う。
道行くワンコに吠えられ、なんとなくビクついてしまう。
どうしても思い出すのは忠犬ガクのこと。

、、べ、別に、悪いことしてないんだけどさ、無理やりじゃない、、し?
もう、会わないし、、。
息苦しさを感じてため息を漏らす。

今日はあの怒涛な日から2日経ち、ちょっと冷静に反省してる私。。
平日の今日は、あの子も会社でしっかり働いているだろう。そうやって、私の事など忘れていくんだろうな。
、、特製ロコモコを食べる時ぐらいは思い出すかも?

ガクの名刺は手帳に挟んであるが、なにも連絡はしていない。
きっと電話をすれば出るだろうし、メールも出来る。でも、もしあんなの一夜の過ちでしょ?なんて言われたら、けっこう、だいぶへこむ私が想像できる。
27才にもなったら、昔の男も何人かはいるけれど、彼氏じゃないのに寝たのは初めてだった。たしかにお酒のせいもあるけれど、寝たっていうか、あの時はガクを抱きたいと思ってしまった。

私、女でしたよね?そして、ガクもしっかり男でしたね。
はぁぁぁー。呆れたかな?
いや、エロ過ぎて引いたかも。
酔いに任せてだいぶ思うがままに、、や、やってしまった。
だって、ガクが可愛かったから。
今まで年下の子と付き合った事はない。
同い年もいるが、だいたい年上で年下の子の可愛さなんて知らなかった。
それともガクだから、可愛いと思った?あの子、確かに綺麗な顔してる。
タレ目がちの茶色い目が快感に震えて涙目になると、すごく、、、

あ、昼間からまた思い出してしまった。
きっと、モテるんだろうな。何も27才という微妙なお年頃の年上女なんて選ばないよなぁ。
自分で言ってて、胸が軋む。
自分の恋愛経験を振り返ってみても、ほんと男運ないわ。
トラウマってほどじゃないから余計に、、どうしたら良かったのか、うまくいかなかった理由を考えてしまう。

私の見た目は優しそうなお姉さんとよく言われる。
しかし、見た目って、中身と必ずしも一緒じゃない。私もそうゆう部類の人。
男兄弟の中で育った私は、負けず嫌いだし、口には出さない心の声は結構辛辣。
でも、優しくないわけでも、冷たいわけでも無いと思う。
ただ、可愛げがないらしい。
いつも、別れる時言われる言葉。
「可愛げがない。」
でも、大きな胸は男にはそれなりの需要があるらしく、身体目当てのどうしようもないのは結構寄ってくる。
どう考えたって長く付き合えそうにないし、楽しいお付き合いは出来なさそうだ。
それでも、この人ならと選んだ彼氏にセックスをした後に別れ話をされると、こいつも身体目当てだったのかと思ってしまう。
、、まあ、そこで捨てないでなんて泣きつかないし、逆に絶対泣かない私は可愛げがないんだと思う。
そんな事が続くと、出来るだけ大きな胸が目立たない様に専用のブラを着け、変な奴を寄せ付けないようになった。
そうして、余計にガードが強くなった私は彼氏ができず数年経っていた。そう、私はご無沙汰だった。
だから、もしガクに偶然でも会ったら、それがガクヘの言い訳になるだろうか。。いや、もう会うことはないのならそんな事考えなくてもいい、、。いやでも、、
見えないループに入り込み、私は休日のご飯を求めクリスマスの飾りでキラキラしたお店に入った。


ガク視点

おねえさんが何も残さず、きれいに俺の前から姿を消した。
俺は、社用スマホを片手に持って、おねえさんからの連絡を待った。
俺はおねえさんの連絡先は知らないけど、俺の名刺を渡したし、おねえさんからの連絡を待つしかない。
だから、土曜も待った。日曜も待った。なんの着信も知らせないスマホの画面を何度となく見つめ、ひたすら待った。
だけど、おねえさんからの連絡はなかった。

連絡を待ち続けた俺は、若干睡眠不足と精神的ダメージによって、打ちひしがれる様な気持ちで出社した。
ストライプのスーツを着て出社したら、やたらとストライプ好きなのって聞かれた。自分の服装をチェックすると、そういえばネクタイもストライプだった?ん?あれ、シャツも?
はぁぁ。別にいいんだ、着てれば。
会社で誰に俺を見てもらっても、今の俺の気持ちは浮上しないだろう。

すると、幸せそうなカップルが目に前にいた。
そうか、今日はクリスマス、、、幸せそうで何より、、。俺は、俺のクリスマスは、、。
サンタ、俺は悪い子じゃなかったはずだ。
周りに迷惑かけても頑張ってたのに。

、、こういうのがダメなのか?
ロマンスグレーってなんだかわかんないけど、年上って事だろ?
俺みたいな頼りないひよっこじゃ、おねえさんの相手にならないってこと?
おねえさんは俺のことを頑張ってるって褒めたくせに。。嬉しかったのに。

そんな俺に、会社の先輩は現実を見ろと言う。
現実?俺って捨てられたってこと?飽きられてポイってされたってこと?
ぐっさりと大きな刃物で心臓を切りつけられた気がした。

それでも、社会人である俺を仕事は待ってくれない。
いつもより集中できないから余計にミスしてしまい、課長には叱られ、連絡する約束をしていた工場の佐野さんには、電話で進捗の連絡よこせって怒鳴られる、、ほんと、ダメダメで自分が情けなくなる。
ああ、こんな時、お姉さんの笑顔とロコモコがいつも俺を癒してくれたのに。。

14時前、おねえさんのいないカフェに行く。
入り口を開けると、カウンター奥の調理スペースには見知らぬ男性スタッフがいた。
俺は、ホールの子に案内され奥まった二人席に一人で座り、メニューを見ると俺がいつも食べてた大きなロコモコがおススメって書いてあった。
なんか、その写真付きのメニューを泣きたい気分で眺めて、結局いつもの特製ロコモコを頼んだ。
出てきたロコモコはお姉さんが作ったのと見た目は同じで、とても美味しそうだ。
食べてみたら美味しいが、何か足りない。俺の心はあったかくならない。
これじゃない。これじゃないんだ。俺が欲しかったのは、、
ロコモコが涙でにじむ。
昼間っからカフェでサラリーマンが泣いてたら、色々心配されそうだ。
俺の職場はいい人ばかりだから、変な勘ぐりなどされたくない。
それでも、ごまかすようにかきこむロコモコはいつもよりしょっぱくて、腹は満たされたけど心が何も感じなかった。そんな俺が思うことは一つだけ。

おねえさんに会いたい。

また、笑顔でお腹空いたの?っていう優しい視線を俺に向けて欲しい。
頑張ってるって褒めてくれたじゃないか、
野菜とれって心配してくれたじゃないか、、
あんなにエロく骨抜きにしたくせに、綺麗にあっさりいなくなるなんて、、
逃げられた悔しさについスプーンを持った手に力が入る。

そんな時、後ろから「美味しかった?」俺に誰かが聞いた。
顔を上げると、愛想よく笑う大人の男、、確か店長さん。
あ、ネームプレートに店長って書いてある。
「、、はい。うまいっす。」
足りないと思うのは味じゃないから。

「その顔、しくじった?」
ニヤリと面白そうにこちらを伺う店長。
感じが悪い。人が今一番気にしてることを。

「あははっ!忠犬くん、怒ると怖い顔するんだな。」
楽しそうに笑う店長にもうこの店は来ないと思いつつ席を立つと、肩を掴まれた。この人も結構身長が高いから威圧感がある。

「ごめん、ちょっと意地悪した。あんまり君がへこんでるのが見えたから。」
ちっとも申し訳なさそうな謝罪にイライラとした。

「、、。まあ落ち着いて。はい、座って。」
店長は俺を立ち上がった椅子にまた座らせ、ランチが終わり、だいぶ閑散としてきた店内の隣の座席の椅子にガタンと音を立て、こちらに向いて腰掛けた。
一体なんなんだ。この人と話すことなんて何もないのに。
そう思う俺のことを、店長は座った椅子の背もたれに腕を乗せそこに顎を乗せると、呆れた様にこちらを見た。
「カッカすんな。少し、話を聞けよ。新メニューの発案に協力してくれたお礼にいい事教えてやる。
あいつ、客に誘われて飲みに行ったの、お前が初めてなんだぜ。スタッフとも、もちろん俺ともサシでなんてあいつは行かねえよ。
結構ガードが固いんだ。それなのに、お前の誘いに乗った。まあ、この店最後って事もあるな。
でもさ、あいつが新入社員で入ってきて5年。俺はあいつを見てきた。
、、くくっ!怒るなよ。上司としてだよ。
カウンターでお前食べてただろ?あれ、特別なんだ。あの席にランチ時に客を座らせるのは、ルール違反。
うるさいし、スタッフもガチャガチャ動く。だから、普通は案内しない。
そこに、お前ほぼ毎日座ってたんだ。
その意味、よく考えろよ。」

途中、イラっとしたが、この人がおねえさんを大事に思ってるんだとわかった。その上で俺に言ってくれてるんだ。

「お前が、あいつを大事にするっていうなら会わせてやってもいい。俺が出来るのはそれくらい。
でも、もし傷つけたら、、
お前、許さねえぞ。」

店長は凄んだ。工場の強面の佐野さんバリの柄の悪さ。

「お願いします!会わせてください!」
俺はすがる思いで頭を下げた。





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