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第四章 魔法の入門3 魔法試験

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 フレンテール魔法学院。
 ミウとラルドがグラウンドに着いた時からでも、ユナアは、その辺を走り回っていた。
「あれ? ユナアー! 見学しなくてもいいの?」
 ミウが一言。
 自由見学は大切な要素。何かを学べる必要な存在だ。
 ミウはユナアのことを何者なんだろうと思う。
「まさか……。このまま、見学しないっていうことないよね……」 
「いや、ずっと走り回っていると思うよ。基礎は大事だからね」
 ラルドは何も気にすることもなく言った。
 ユナアが気付いたらしく、にこっと、ミウ達に目をやる。そのまま、悠然と走っている。
「どうだった? 見学、楽しかった?」
「うん。とっても、いいこと学べてよかったよ」
 ミウは素直に言った。魔法は使えるのかが、心配になったけれど。
 ユナアはおそらく、見学をしないから、たくさんの知識があるのかなとミウはそう考えた。 
 アクの教え。
 猫は、人間とは違く本能的に運動したくなるのだろう。体は小さいけれど、極限の体力が付いている。人間の脳に近い猫もいるが、猫の感情と人間の感情が半分に混ざっている特長もある。普段は、猫は自由な考えが豊富。人間の言葉を話せる猫は少ないから、貴重でもある。
 そろそろ、見学をするのは終わりを向かえる時間だった。
 1ーA教室に戻ると、ルリンド教師が笑顔でこちらを見る。
「ミウさん、ユナアさん、ラルドくん、魔法を試す時間ですよ――」
(――えっ……!?)
 ミウはギクッとした。そして、息を飲む。
「さぁ、一人ずつ魔法の光を出して下さい。まずは、それだけです。順番を決めて下さい」
 最初にラルドが尻尾をぴしっと挙げる。
「一番、ボクからやる!」
「じゃあ、二番はワタシね。ミウは最後でいい?」
「え、あ。いいけど、最後で」
 ミウの考えでは、ずっと永遠に出番が廻って欲しくないと全力だった。魔法の光を出すと言っても、超能力が出たらどうしようかと、何回も呆れる程の思いが繰り返しに続いていた。
「そろそろ、誰か魔法の光を見せて下さい」
 すると、ラルドはふわふわした尻尾を顔の前に出す。魔法を使っていないのに、けっこうな尻尾の長さだ。ユナアも同様だ。ラルドの尻尾がゆさゆさ揺れたら、透明の魔力が吸収するかのように尻尾に近づいて来る。
 そして、一気に橙と緑の光の粒が撒き散らすように放出して、光の輝きも強くなり始めた。
 ――強い……! 
 ミウは一瞬、顔が強張った。
 実力室の生徒たちよりも、遥かに上だった。でも、アクに負けている。それでも、強い魔力を示している。
 ルリンド教師が、もう一つの指示をラルドに下す。
「瞳孔を光らして」
 言われるまま、ラルドの瞳孔が橙色と緑色は混ざり合うことなく光った。
 アクの通常魔法の魔力を越した。
 瞳孔が光ることは、持ち主の魔力の上限まで力一杯に出す事が、ミウは分かった。
 でも、何故かルリンド教師と生徒達は驚いていなかった。
 実力室の生徒全員の魔力を越しているのに、何で気が付かないのだろうとミウは思った。
「はい、やめ! 合格です」
 ルリンド教師の声で、ラルドは魔法の光を出すのをやめて、疲れたように息を吐く。
 そういえば、アクに貰った白い剣を持っていない事にミウは気付く。大事なアクに貰った白い剣を失くしたと頭の中に入った途端に緊張がさらに増した。
 次は、ユナアの出番だ。
 素早く、ユナアは尻尾をシュッと風を切るようにさせて、それと同時に瞳孔と光の粒が赤色と青色に光輝く。
 魔力の強さは、ラルドの方が上だけど、実力室の生徒達よりは強かった。
「はい。合格です」
 ルリンド教師は満足そうに言った。
 魔法洞窟で、ミウは一回だけだけれど瞳孔が光っている。瞳孔が光れば、魔法は確実に覚えている事になる。覚えている事が分かるけれど、どうやるのかは感覚がない。勝手に瞳孔が光ったからだ。
 すると、ユナアとラルドに肩をぽんっと軽く一回だけ、叩かれる。
 ミウは意識を取り戻した。一応、魔法の光を出すような行動をするように、両手を少し離すくらいで向かい合わせる。無意識に(魔力、出て)というふうに念じていた。それに、答えるかのように、少量の茶色の光が手の中で漏れた。後は、瞳孔を光らすだけだ。
 直ぐさまに、ミウは強く魔力が出るように念じる。
 ――突然。
 ミウの魔力が眩しく解き放ち、瞳孔が茶色に光り出す。生徒とルリンド教師は、光で目を閉じた。
(……そうか、念じればいいだけだったのね……)
「合格……? です」
 ルリンド教師は不満でもあるのか、疑問の様子があった。
(――何で、わたしだけ……!?)
 やはり、ユナアとラルドは「えっ」と驚く。すると、ユナアが口を開く。
「何で疑問符を付けたのですか?」
「……いえ、何でもありません。ユナア、ラルド。それに、ミウさん合格おめでとうございます!」
「やったぁ。ミウ、良かったね!」
 ラルドが元気そうに言った。
「それでは、教科書を持って来ますので、お待ち下さい」
 ルリンド教師は例の教科書を取りに行くために、教室から出て行った。
 すると、生徒達が歓迎するように騒ぎ始める。
「ミウちゃんって、どこの人なの? さっき前の魔法の光が凄かったね」
「魔法の素質ありそうだね!」
「ユナアちゃん、パートナーになって!」
「ラルドくん、パートナーにしたいよ!」
 そうしたら、ユナアとラルドは全力で「ごめんなさい!」と頭を下げて断る姿を見て、ミウは苦笑する。 
 でも、騒ぎ立てていない誰よりも美しい少女が一人いた。十二、十三歳くらいだ。その少女は机に頬杖を付き、ミウ達に興味がなさそうに視線をずらしていた。
 明るく、黄を帯びた金色の瞳と髪。美貌だが、目付きが鋭くついでに眉も鋭い。まるで、獣を思わせる野性味が出ている。いかにも、話し掛けたら凶悪になりそうな雰囲気だ。
 直接、胸に銀の鉄を覆っていて、それが余り目立たないように、ベストのようなものを着てある。過激なへそ出しだなと思った。全体的に赤色で統一するかのように服は装飾されていた。
 ミウはじっと、その美少女を見つめた。何かの、磁力みたいなもので、引き付けられている気がする。
 ――運命の人?
 そういう風に、ミウは見えた。
 すると、ルリンド教師が1ーA教室に戻ってきたようだった。息遣いが荒い。ミウたちのために急いで取って来た。三冊の分厚い教科書と言うよりは、本に近かった。
 一冊の教科書と言うよりはフレンテール魔法学院の専用、魔法書とミウは判断する。
 その、教科書魔法書は五百ページ以上ありそうだ。この本は誰かの想いがあって、魔力で作られたように思う。何故ならば、この本の魔力のおかげで完全ではないけれど、心がミウに分かったようだった。
 それを興味本意で開いてみると、全然に分からない文字が見えた。
 ミウは首を傾げる。
「分かんないよ……。これ」
「違うよ。これは解読して、魔法を覚えるんだよ」
 分からない、ミウにラルドは囁いてくれた。
(難易度、高くない……?)
「これは、この学院の魔法使いにとって、必ず覚えないといけないんだ。そうしないと、教科書に乗っている呪文・・なんだけど分からないよ。瞳孔が光る、最限魔法を使えれば出来るはずだよ。呪文を会得しないとね」
(……フレンテール魔法学院って、やっぱり高度な魔法の実力者だったのね。困ったな……)
 見習いと言っても、そこそこ強い魔力があるとミウは計測した。
「呪文って言うのは、意味が分からない言葉を使うよね。もしかして、魔法と呪文は本当は一緒のような気がするけど……少し違うみたいだね」
「そういうことだよ。魔法の正式の言葉より、呪文は誰にも通じない、自分の形式を埋め込むことができるよ」
 つまり、戦闘の時に呪文は相手に見切られないようにすることでもある。
 でも、
「誰にも通じない言葉? 通じる人もいるのかな?」
「魔法の属性のそういう雰囲気で分かる人もいるかも知れないね……ミウちゃん、大丈夫?」
 ラルドは何も知らなさそうなミウを見て心配してきた。聞いていた、ユナアもミウの事を心配していた。
「うん。大丈夫だよ。ありがとう」
 ミウは無理してでも、笑みを作った。それ以上に心配させたくないからだ。
 それから、ミウは席につき教科書魔法書を一頁を開きそれを、横に持ったり逆様にしたりもした。
 ミウを見ていた生徒たちはいて、頭に汗が付く。
 ユナアとラルドはミウより前の席にいるので、ミウが変なことをしているのに気付いていなかった。
「ねぇ……!」
 突然、ミウは背後から話し掛けられて、素早く振り返る。
 ミウの後ろの席に居たのは、目立たないようにしてた黄色い美少女だった。きつい目をしていたので、ミウは凍りつく。
「あ、あの……。何か用……?」
 その、黄色の少女は、まじまじとミウを見ている。
「……解読、出来ないの?」
 何も知らない世界で生きていく事は、ミウは大変だと改めて実感する。ミウはこれ以上に考えても仕方ないと思った。
(でも、誰か解読法を教えて――!)
 ミウはまじまじと見ていた少女は言う。
「わたしが解読法を教える。後でな」
 今の時間は、午前十一時過ぎ。
 そろそろ、お昼の時間だ。後、一時間も経てば授業は終わるだろう。
 出来る限り、解読方法を見つけながらある事を思い浮かべていた。
 初めての世界。初めての冒険。初めての戦い。
 それもわくわくするけれど、一番よかったのは、
 ――初めての出会い。
 それは、一瞬のようにだと思えるけれど実は思い出を一から想像してみると、けっこう長かったりする。
 アクに会いたい。どうしょうもなく、そして酷く会いたかった。
 ミウは時間が待ち遠しかった。そのおかけで、新たな目的が出来る。
 記憶を取り戻すことも大事だけれど、もっと大事なのは仲間だ。自分が何者か分からないけれど、今は自分を記憶がなくても探すのが重要なのが心にはっきりと身に染みた。たとえ、記憶を取り戻せなくても。
(――アクとゼンと一緒に旅をしたいなぁ……)

 フレンテール魔法学院。
 今、食堂にミウは居た。
 もくもくと、ミウは食べ物を口に運びせていた。
 周りには、かなり怖そうな人がいっぱいだった。多分、魔法についてなどの勉強を徹夜して励んでいるのだろう。皆は成績を伸ばし上を取ることが出来ないとなると、このフレンテール魔法学院に入る資格なしとされていると知っているからだった。
(あー……。どうしようかな)
 ミウは一気に食べ物を口に無理矢理、困ったように押し込みながら思った。
 水を飲み干し、さっさとミウは立ち上がり給食のトレイを片付けに行って教室に戻る。
 1ーAの見習い室に居た人は、ミウに話し掛けた黄色い金色の瞳と髪の長い綺麗な美少女たけだった。
 その少女は誰かの気配を感じて、ミウを見た。
 一見、何ともない顔をしていたが微笑ましい顔に変わる。
「……何だ、ミウか! こっちへ来い。解読法を教えるから」
「あの、名前は?」
「名前? わたしはミライだ」
 ミウはミライに遠慮がちに近づいた。
「まず、教科書を出して」
「うん」
 ミウは自分の机の中から教科書魔法書を出して、ミライの机の上に置く。席が近いから座って出来た。
 ミライはミウの教科書魔法書と言うよりも自分の本を見て、呪文を呟く。
 すると、直線のような光がミウの教科書魔法書に当たった。教科書魔法書が黄色の光で輝く。
 そして、光が小さく消えていく。
 ミウはその光で思い出したのだ。ゼンの黄の光は淡いけれど、ミライの光は何処か強かった。
「よし! これで、この本は読めるはずだ」
「読める? あ! 本当だ。一人でやっちゃったの?」
「そうみたい」
 急にミライは立ち上がる。
「わたし、もう帰るね。実は卒業しているんだ。今日の午前中だけ、授業にいさせて貰ってるから」
「ええ!? そうなの!? って、大丈夫なの? わたしの教科書を解読してくれて……」
「うん。多分な……。あの二匹の猫と上手くやっていけよ」
「えっ、ちょっと……待っ……」
 ミライに逃げられるかのように、テレポートを使われていなくなってしまった。
[テレポートというものは、正式に言えば『テレポーテーション』自分、他人を瞬間的に移動させる事]
「ここは、超能力を使っちゃ……え? わたしと同じ!?」
 ミウの驚きの声が響いた。
 突然、カチッとする音が鳴り、教室の電気が付いた。
「あら。そんなに大声を出して、元気ですね」
 ルリンド教師の明るい声だった。

 これから、本格的な魔法を使うために、ミウは強い決心が出来る。
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