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第二章

【第十話】「ブラコンvsシスコンvs主人公」

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「ふっ 貴様というやつは、どうしてそんな体たらくでいられるのだ? ええ?」
 顔を赤らめる【少年】をしばらく見つめてから、【審判】は静かに笑った。そして明らかに茶化した口調で、しかし常と寸分違わぬ面持ちで【少年】に問いかけた。
「貴様が雪白七子を好んでいるのなら、『付き合ってくれ』と男らしく告白でもすればいいだろう? まあ、貴様のようなヘタレにはできんだろうが」
 うん、まあ、煽ったとも言うが。
 しかし、ここまで言われて何も言い返せない【ヘタレ】間違えた【少年】ではない。赤面したままではあるが、毅然とした態度で【審判】に言い返す。
「ふざっけんな! それができたら苦労はないわい! あんさんにあたしゃの何が分かるんどすえ?」
「何だその多方面に喧嘩しか売らない怒り方は? 貴様がそんなだから由比ヶ浜結衣に泣くことになるのではないのか?」
「うわっ、売った! 『俺ガイル』界全体に喧嘩を売った? 買うわよいくら⁉︎」
「だから一体何なんだ、その突拍子もない『連れカノ』ネタは…… そのネタは私くらいの紳士でないと即座に反応できないからな わかったか、『義妹』?」
「ぐぬぬ……」
「だいだい貴様は……」
     ◇◆◇◆◇
 あいつが僕を煽った後も、なんてことのないくだらない会話が続く。いつまでも続く声のある静寂は僕の持ってきた答えを言わせまいとする【審判】の気遣いだったのではないのか、不意にそんな思考が脳裏をよぎった。ああ、だとしたら僕は、【少年】は何のために生まれたのか。何も望まなかったくせに、誰もに嘱望されたくせに。
 負の思考回路がショート寸前だったのだろうか、決して大きくはない声が驚きと怒りを孕んで聞こえた。
「失礼します、お兄様……っ⁉︎  なぜここにせ……【少年】君が? お兄様に何か用事でも?」
「ああ、よう【世界】」
 振り返って見てみるとその長い金髪と手足とを慌ただしく動かしている【世界】がいた。急いで来たのか何なのか、顔が少しばかり赤い。
 しかしここで【世界】が用があったのは僕ではない。だから目の前の巨体に、「おめしゃべれやコラ、可愛い妹が職場に来て何急に黙っとんじゃワレ」と視線で投げて問うてみる。すると、流石に目の前の馬鹿も現状を把握し始めたのか、ゴホゴホと咳払いをし始めた。どうでもいいけど咳払いうるせー。
「あっ、ああ、お前か? どうした? 何か嫌なことでもあったか?」
 なんで嫌なことがあったからっていちいち兄貴の仕事部屋に入ってくるなんて行動を取ると思ってんだよこのシスコンクソイケメンが、と内心毒突きながらも一応黙っといてやる。ほら、傍観者だから。もうね、僕の傍観者ぶりってったら梅ヶ枝食ってなくてもおばあさんには絶対に何も言えないレベル。
 なんてクッソどうでもいい「君すい」ネタを打ち込むことしばし。ようやく【世界】が喋り出した。
「えっと……あの……その……」
 訂正。喋ってなかったわ。なんて言ってないとしんどくなるような沈黙が流れた。もー何なの、おまいら? あれかなー、昨今流行りの「倦怠期」っつーやつかしらね? にしても兄妹で倦怠期って何なのん?
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