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しおりを挟む「え? ちょっ……!」
「嫌な思い出は私が忘れさせてみせます」
男が向かったのは予想通りベッドだった。しかもダブルだ。体格がいいからだろうか。
そのまま優しく降ろされた俺は、男にのしかかられた。
「あの、優しくしてください……ね?」
「はい」
男は目の前で自分の服を脱ぎ始めた。そこで気づいたのが、男の身体は鍛え上げられた筋肉で覆われているという事。胸の辺りに傷も残っているし、この身体はただの一般人が持つ物じゃない。意識して作られた身体だ。
「ずいぶんと、鍛えてますね……?」
「あなたをお守りするために鍛えてきました」
「……」
嘘なのか本当なのか、どっちなのか分からない。でも、絶対に腕力じゃ負ける。それだけは確かだった。
男が上半身を脱ぎ終わるまで見ていたが、俺も脱ごうと自分の服に手をかけた時、男がそれを遮った。
「私にやらせてください」
「はあ」
男は俺のボタンをゆっくりと外していたが、俺の身体を目にするなり、眉を寄せた。
「…これは……?」
「あ……」
「ルディ様、この傷はどうされたのです? こんなになるまでとは、かなりの深い傷だったのでは? それとも、医師の腕が悪かったのですか?」
「あ、いや…昔の勲章? みたいな?」
「勲章というと?」
「…娼館に来る客の中には、こういうのが趣味の奴もいたんです」
「なっ……」
「今は痛くないし、俺は男なんで気にしてませんから! この身体を抱くのが嫌なら俺は帰りますけど? って、おいっ!」
男はいきなり、俺の胸に顔を押し当てながら抱きついてきた。
「私は、どんなあなたでも愛しています! あなたにどんな過去があろうとも、この気持ちは変わりません……!」
あーそうですか……って、さりげなく「愛してます」って言ったよなこの人。そっか、愛、愛か…今まで言われた事なかったなあ。こんな俺でも言ってくれる人いるんだな。
「あ、ありがとう、ございます……」
んー…、思ったより嬉しいかも。尻は初めてじゃないけど、実は初めての場所もある。それをあげてもいいかなってくらいにはなってきた。
「グラインさん」
「はい」
「実は俺、セックスは初めてじゃないけど、他の事でまだ経験した事がないのがあるんです」
「な、なんでしょうか?」
「ここです」
俺は男の唇を指でなぞってみた。
今までセックスは数え切れないほど何度もやった。でも、ここだけは許した事がなかった。別にキスは好きな人じゃなきゃ嫌だとかじゃなくて、ただ単に、みんな俺の唇を愛撫するよりフェラして欲しいとか、尻に突っ込みたい奴が多かったって事なんだけど、結果的にはそんな感じになってしまった。
「俺、キスはまだした事ないんです。だから、あなたにあげます。俺のファーストキス」
「……」
男は呆然としている。まさかこの人もキスは嫌な奴じゃないだろうな。
「嫌ですか?」
「い、いえっ! 光栄でございます……!」
「んんっ……!」
男は感極まった様子で俺の唇を奪ってきた。すぐに男の舌らしきモノが入ってきたが、うーん、ヌルヌルして気持ちが悪い。なんかヒゲも当たって痛いし。最初はみんなこうなんかな。あ、最初は舌なんか入れないか。
「ぐ、グラインさん落ち着いてくださ……」
「落ち着けるわけがありません。あなたの方から初めてをくださると言われたのです。もっと、味わわせてください……!」
「はふ、ふ、んっ……!」
男の顔を押し返そうとしても、力で戻されてまたキスをされる。それを何度か繰り返すと、自分でも舌を動かせるようになった。 これはフェラと似ている。相手のどの部分が気持ちがいいのか知りたくなってきた。なのに、力を入れようとすると男の舌が絡んできて、自分でうまく動かせない。キスは男の勝ちってとこか。俺はそのまま男の好きなように吸われたり舐められたりして、キスが終わる頃にはぐったりとしていた。
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