オメガの騎士は愛される

マメ

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 リノ・アルムとの結婚式には、リオスの王や重鎮達はもちろん、リオスの騎士団も招待していた。彼が俺のモノになったという事、リオスがレガラドに完全に堕ちたという事を世間に見せしめるためだ。
 俺とリノ・アルムが神官の元へと歩いていく途中、リオスの騎士団の者達は、心底悔しそうな表情で俺を見ていた。きっとリノ・アルムは予想以上に慕われていたのだろう。俺がチラリと隣を見ると、目を伏せて騎士団の連中をあまり見ないようにしていた。自分が受け入れた事とはいえ、今まで苦楽を共にした仲間に「花嫁」となってしまった姿は見られたくなかったのかもしれない。
 たが、俺はその姿を見て、本当に彼が俺のモノになるのだという実感が湧いた。正直言って、心の底から歓喜していた。誓いのキスがなかったのが残念だが、結婚すれば嫌でも夫婦の営みが待っている。すぐには受け入れてもらえないのは覚悟しているから、彼の発情期のタイミングで身体を繋げる作戦でいた。



 そして、結婚式から数ヶ月が過ぎた。
 俺はまだ、リノ・アルムの元へと行けずにいる。遠征や他の国との交戦がが重なったためだ。これは予想外だった。
 彼につけた使用人には、彼の一日の行動を逐一報告するように伝えていた。彼は何かを求める訳でもなく、何か不満を漏らす訳でもなく、普通に生活しているらしい。隙を見て逃げようなどというような行動も取ってはおらず、穏やかに暮らしているとの事だ。
 彼は普段から発情を抑える抑制剤を飲み、発情期を管理しているらしい。レガラドの医師にそれを伝え、薬を処方されたと聞いていた。
 会えない日々がしばらく続き、今日こそはと思うとまた会えない。そんな状態にイライラして、俺のまとっている空気が殺伐とし始めた時、その情報は伝えられた。
「リノ・アルムが体調を崩した」
 それが伝わったのは、レガラドの王都からかなり離れた土地への遠征の日だった。俺はいてもたってもいられず、残りの業務を騎士団副長のカウイに任せ、慌てて王都へと戻った。カウイはかなり驚いていたが、説明は後だ。今はリノ・アルムの容態の方が大切だった。
 王都へ戻り、居住区へと向かう。体調が悪いというのはどのような状態なのか。倒れたのか、怪我をしたのか。早く会いたい。それだけが頭を占めていた。
 だが、部屋へと戻った俺が見たのは、ポカンとしながら俺を見つめる彼の姿だった。
「リノ!」
俺は咄嗟に彼の名を呼び、慌てて彼を抱き上げると、寝室に向かいながら彼に話しかけた。
「体調が優れぬというのはどういったご様子ですか? 頭が痛いのですか? それとも、熱が? 喉の様子は? いや、胃腸の調子でしょうか? 吐き気はないですか?」
「……」
 俺が詳しく聞こうとすると、彼は未だにポカンと俺を見つめていた。言葉も話せぬほどヤバい状態なのか? 俺はさらに焦って聞いていた。
「こ、言葉も話せぬほど苦しいのですか!? おい! 早くリノをベッドへ! なぜ一人にしていたのだ!」
「も、申し訳ございません……!」
 思わず使用人を叱ってしまうと、彼がか細い声で、ようやく口を開いた。
「ラミレス殿、私は大丈夫ですから……」
「何が大丈夫なのですか!? 体調が優れぬというのはこの国に来てから初めてではないですか! あなたの一大事に落ち着いていられますか!」
 そう、彼は大丈夫と言っているが、彼がレガラドに来てからというもの、体調を崩したという報告は一切なかった。今回が初めての事だ。それを、大丈夫と彼は言う。まだ気を使っているのだろうか。
「リノ! 答えてください! どこの調子が悪いのですか!」
 俺は彼を抱きあげたまま、激しく揺さぶった。苦しいなら早く言って欲しかったのだ。だが、彼から放たれた言葉は意外なものだった。
「いや、私は健康です」
「……は?」
「ですから、私は健康です。体調が優れぬというのは、その、嘘なのです」
「ど、どうして、ですか?」
「……退屈だったのです」
「退屈、とは?」
 話が見えない。退屈だから体調が優れぬと言った……意味がわからない。俺は彼を降ろし、静かに話し始めたのを黙って見ていた。
「あなたとの婚礼が終わってから、数ヶ月が経ちました。ですが、あなたは私に会うわけでもなく、夜になっても帰ってきません。私はこの国に来る前、ご存知かと思いますが、騎士でした。ですから、今のこの状態はとても苦しく、話し相手もいなくて、鍛錬もできずに暇をしていたのです。ですから、一人にして欲しいと、使用人の方にお願いいたしました」
「リノ……」
 彼の口調が戦場で会っていた時と違うような気がするが、俺は彼の「退屈だった」という言葉にショックを受けた。彼には優秀な使用人をつけていて、退屈しないように、ありとあらゆるモノを用意していた。だが、使用人には彼とあまり話をしないように命令していた。単純に、俺より使用人と仲良くなって欲しくなかったから。完全に俺のエゴに過ぎないが、それが彼を退屈にさせていたらしい。
 彼がこれからどうしたいか、確認する必要を感じた。
「……今日は深い話になるようだ。二人にしてくれ」
「は、はい!」
 俺は使用人達を部屋から下がらせ、彼とのこれからを考える事にした。
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