文字の大きさ
大
中
小
18 / 48
第一章 大樹の森
第十八話 兵は神速を尊ぶ
「でわぁ、皆さんが身に着けた力、ここでしっかりと見せてくださいねぇ」
「「「はいっ」」」
ハンター講習最終日、これから合否を決める最終テストが行われる。
まずはじめはユーリカとの近接対戦、順番は名前の順。
俺は初めの時と同じようにオフィーリアとレイチェルに順番を譲る。
「自らトップバッターを望むとはうれしいですねぇ、ヌィ君」
ユーリカの言葉が俺に死の宣告の様に刺さる、俺に拒否権は無い。
ナイフサイズの木剣を握り、覚悟を決めてユーリカの前へと出た。
「合格基準わぁ私に攻撃をあてることです」
いつもの笑顔でユーリカが呟く
「今までの訓練が無駄だったと思わせないでくださいねぇ」
だがその裏に隠された威圧感が今日は一層強く感じる。
「でわぁ、いつでもどぉぞ」
片手剣サイズのオーソドックスな木剣を手にしたユーリカが告げた。
ここで迷っていてもユーリカは隙なんて見せてくれない、
俺はいつもの訓練のつもりで飛び込んだ。
俺の初撃は簡単に受け停められ、即座にユーリカの反撃が襲う。
俺は剣を躱せるギリギリの距離まで後ろへ飛び、
間を開けずにナイフの間合へと飛び込む。
再び止めれられた俺の攻撃、そして今度は左から右への横なぎの反撃。
地面に伏せる勢いで避け、転がり、起き上がる勢いで飛び出し脇腹を狙う。
だがそれも木剣の束で止められ、俺は後ろへ跳んで剣の間合から離る
「んふふ……ふふ」
口角が上がりユーリカの微笑が増した……マズイ!!本能がそう告げる。
あれは狩りを楽しむ強者の笑みか!?
…いや違うな……もっと純粋な……子供がいたずらを思いついた様な顔だ。
来る!!
俺は無理やり躰を反らせる、
地面を蹴ったと思ったユーリカが次の瞬間には目前に迫る、
凄まじい風斬り音と風圧が今まで俺の躰があった空間を突き抜ける。
地面を転がり体制を整えた時にはダンッと地面を蹴る音、
次の一閃…風を斬る鋭い突き、俺はギリギリ左へと躱す。
ここで改めてこれは訓練ではないということを思い知らされた。
突きの速度もそうだが問題はその威力、
たとえ反応できたとしても何度も受け止められるモノじゃない。
それに普段のように時間いっぱい粘ればいいという訳でも無い、
合格の条件は一撃与えること……どうすればいい……
地面を蹴る音に続く深い踏み込みの鋭い突きを右へ躱す…
…が…ユーリカの左手にはいつの間にか短剣サイズの木剣が握られていた。
「くっ……」
鈍い衝突音が響く……辛うじて止めたが衝撃で大きく後ろへと弾かれる。
ユーリカの双剣攻撃を受けたのはこれが初めて。
だが、なぜか既視感を感じる。
風を斬る速さの片手剣での突きを躱しても、追撃の短剣での攻撃が襲う。
その威力は凄まじく、躱す事が出来ても体力がどんどん消耗させられる。
…だが…この攻撃の正体がわかった………次の一撃に賭けるっ!
地面を蹴り踏み込まれるユーリカ片手剣での突きが迫る。
その速度に追いつかなくては……
『速く、速く、速く動けぇ!!』
大きくしゃがみ込み曲げた脚に僅かにビリリと電流が走った。
ユーリカの突進に対し、俺も飛び出してその懐に突っ込んだ。
『撃て!』
左腕に電流が走り、その甲が片手剣を持つユーリカの右手首を跳ね上げる。
だが即座に振り下ろされるユーリカの左手の短剣。
それが俺へ届く前に……間合を詰め……潜り込み…
『振り上げろぉぉっ!!』
ナイフを持つ右手に走る電流。
速度を増し振り上げた右手のナイフが短剣を持つユーリカの左腕を叩く!
木剣のナイフがユーリカの革製の小手を叩く乾いた音が周囲に響いた。
「んふふ……今のはこれまでで一番良かったですよぉ……合格です」
「「「おぉぉぉおぉっ」」」「「「やったぁっ」」」
歓声が響く。
「ヌィ、やったよおめでとぉっ」
アンジェは自分のことにように喜んで飛びつき、俺は慌ててそれを支える。
そこでやっと俺も笑みが零れた。
「でも…合格できたのは途中からユーリカが遊びだしたからだけどね」
「え?後半攻撃の勢いは増してたよ?」
アンジェは目をぱちくりさせて首を傾げる。
「んふふ…気づきましたかぁ」
「うん…もう2回も戦った相手だから…」
ユーリカの攻撃はある魔獣を模したモノ、そう……あの鋭い突進は忘れない。
ボーパルバニー。
片手剣の突きは突進による切歯での攻撃、短剣は蹴りでの攻撃を模していた。
「んふふ…良く出来ましたぁ」
今のユーリカの表情は純粋に喜びの感情を示す微笑みだ。
俺は素直に頭を撫でられ、躰に心地よい疲労を感じながら戦いの場を後にした。
感想 0
あなたにおすすめの小説
「お姉様の刺繍は素人ね」と笑った義妹の婚礼衣装——裏地を見た女官十二人が、一斉に針を置いた
歩人(あゆと)「お姉様の刺繍は、素人の手習いに見えますわね」――王太子妃となる異母妹アデリーナは、王宮女官たちの前で姉ローゼを笑った。翌週の婚礼の朝。式典装の最終確認のため、十二人の女官が衣装の裏地を検めた瞬間――一人、また一人と、針を置いた。裏地に縫い込まれていたのは、女官たちが十二年間ずっと探していた一筆の銀糸。即位式の絹外套、二人の王女の婚礼ドレス、亡き王太后の弔意の喪服。王家儀礼衣装のすべての裏地に、同じ手で、同じ糸で、同じ銀の花が縫い込まれていた。「アデリーナ様、これは――あなた様の手では、ございません」縫い手は、ずっと一人だった。それを十二年間、誰の名でも呼べなかっただけのこと。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
娘を毒殺された日、夫は愛人と踊っていた――聖女と呼ばれた私は、王家を静かに崩壊させる
唯崎りいち異世界に転移し、“聖女”として王太子ジークフリートに嫁がされたフェリシア。
愛のない結婚の中で、唯一の救いは娘シャルロットだった。
しかし五歳の娘は、父から贈られたネックレスによって毒殺される。
娘が死んだ日。
王宮では祝賀会が開かれ、夫は愛人と踊っていた。
誰も娘の死を悲しまない世界で、ただ一人涙を流したのは、第八王子リュカだけだった。
やがてフェリシアは知る。
“聖女は子を産んではならない”という王家の禁忌と、娘の死の裏にある政治的思惑を。
――これは、娘を奪われた聖女が、王家を静かに崩壊へ導いていく物語。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもちアラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?
chocopoppo【毎日12:10更新!】
松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。
特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。
第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。