満月の額縁

夏野菜

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全ての生き物が眠りについている様な
密やかな12月の夜だった。
黒い幕で一面覆われた夜空は曇りのせいか星は見えない。
その暗闇を見守る様に月の光は控えめな
やさしさを放っていた。
6階建のマンションの屋上からでは
たいした夜景も見れないな、と日笠南は思った。
ジシャ、とシャッターを切るカメラの機械音が夜の静けさの中に響き、
デジカメを持ったまま恋人である広江洸は振り返った。
「見て南、いいの撮れた」
「本当!見せて」
「うん、ーーーあれ?なんか暗いな」
夜景モードにしたんだけど、と友達から
譲り受けたというカメラのボタンを慣れない手つきで操作する。
これか?これか?と唸りながら困惑している姿を見て、普段の何でもスマートにこなす洸を思い出し、もう随分と一緒に居るけれど新しい一面を見れた様で得をした気持ちになった。
「何か写真を撮りに行こう、夜景とか!」と言って洸の住んでいるマンションの
屋上に誘ったのは南からだった。
決して広いとは言えない屋上には大家さんの趣味でガーデニングが作られている。
そこは緑豊かな空間と都会の喧騒を忘れられるような開放感で2人のお気に入りの場所だ。
見渡せるものと言えばマンションと
たまにビル。大抵はマンションで、
部屋のほとんどは灯りが消えている。
けれど一晩中起きてる人だっているんだろう。
ひとりぼっちだと思っていても、こんな風に隠れるようにして起きている二人がいるみたいに。
諦めたのか、もうこれでいいやと洸は
徐に呟いた。再びカメラを構えた洸の隣に並ぶと「何か変な看板を見つけようよ」と南は言った。
こうやって隣に並ぶ距離感が
とても好きだ。真正面で見つめ合う
関係性もロマンチックで
心地いいが照れてしまう。
触れずともお互いの存在を感じて、
肩を並べる方が南にとっては
心地がよかった。
こうして一緒に過ごせる夜があるだけで
充分幸せだと思えてしまう。
 
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