同僚がヴァンパイア体質だった件について

真衣 優夢

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小ネタ ヴァンパイア友の会

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 ※ これは、時間軸がちょっとだけ未来のお話です。



「『ヴァンパイア友の会』……!?」



 僕は、あまりにあまりな名称が書かれたパンフレットに目を丸くした。
 それは、隣に座る令一も同じだったようで。
 僕達は、声もなく『なにこれ』と目で訴えた。


「ヴァンパイア友の会です!」

 
 海外から戻った上条さんが、元気よく返事する。

 
「その公開処刑みたいな名前なんですか?
 僕達の正体、暴露する会ってことですか?」

「あはは、ある意味そうかも~!」


 上条さんが、楽しそうにきゃたきゃた笑っている。
 いや、笑い事じゃないから。
 ぜんぜん笑えないから!


「ここはね、『コウモリカフェ』だよ!
 ドッグランのコウモリ版みたいな?
 保健所とかの許可とって、きちんと営業してるからだいじょーぶ!
 完全会員制、完全予約制。
 でもってここのコウモリは、全員ヴァンパイアってオチなんだ♪」

「はあ!?」


 とんでもない真実が明かされた。


 ヴァンパイアは、多くはないけど、そこそこいる。
 隠れているだけで、ちらほら存在するらしい。


「私も最近知って、もうびっくりー!
 カフェマスターがパートナーなんだって。
 趣味で始めたら、わらわら会員が増えたとか。
 最初にね、面接と書類審査するんだよ。
 『コウモリは、正しいショップから購入していないと危険な病気を持っている』
 『コウモリの性格によっては喧嘩して怪我をするから、事前に質問している』
 って言われるの。
 でね、ヴァンパイアしかわからない項目をこっそり混ぜてるんだよ!
 マスター、頭いい~!」

「はあ……」


 『ヴァンパイア友の会』という名前の、コウモリカフェ。
 雰囲気が良く清潔感のある普通のカフェだが、カフェスペースの三分の二が、広々としたコウモリスペースになっている。
 コウモリがくつろげて楽しく遊べる様々な品、至る所に落下用クッションを置き、見る側もほっこりするこだわりの作り。
 ヴァンパイア達は、ひとときコウモリの姿で文字通り羽を伸ばし、同族と語りあう。
 パートナー達はお茶を楽しみながら、飛び交うコウモリを眺めて愛でる。
 ……ということらしい。


「素晴らしいカフェだな」

「令一、なんでそんなに目をキラキラさせてるの!?
 まだ僕、行くって決めてないよ!?」

「何故だ!?
 お前をもっと広い場所で遊ばせてやりたいと、ずっと思っていたんだ。
 それに、他のヴァンパイアのコウモリ姿も見れるんだろう?
 きっと可愛いに違いない」

「令一……。
 僕、ペットじゃないよね?」

「桐生だって、同族と話したいだろ(ずいっ)」

「確かに、それはあるけど……。
 令一、ちょっと落ちついて。まだ安全確認が」

「私、会員だよ~。大丈夫だったよ?
 あと、小宮山先生に残念なお知らせで~す。
 『ヴァンパイア友の会』はコウモリカフェという名目なので、入るときは、ヴァンパイアがコウモリの姿になって、ケージかキャリーバックで入店しなくちゃならないんだよ~」

「本当にペット扱い!!」

「居心地が良くて桐生に似合うケージを買わなくては」

「令一が行く気満々の顔してる!!」



 コウモリカフェ『ヴァンパイア友の会』。


 カフェスペースは、カフェマスター特製ブレンド茶葉の香りに包まれている。
 コーヒー好きには、挽きたて特選コーヒーも。
 パートナー達は「本日のケーキ」や「特製サンドイッチ」を口にしながら、互いの苦労やのろけ話を談笑し。
 コウモリスペースでは、ヴァンパイア達が普段なかなかできない飛翔を楽しみ、時におもちゃとたわむれ、コウモリ用の寝袋でうたた寝し。
 その姿をほほえましく眺めるパートナーの憩いの場として、長々と愛されるカフェになるのであった。


 ちなみに、『コウモリは裸体なんですよ』ということで撮影禁止。
 パートナーたちは、可愛い姿を網膜に焼き付けるのに必死なんだという。



 
西村「……小宮山先生、このパンフレットはなんですか」

桐生「あ、いえ、ちょっとその、見つけただけで。
 なんとなくその、パンフレットを見せたくなっただけで、深い意味は」


 
 西村先生のコウモリ姿が見てみたい!!
 ……なんて、言えない。

 だって全く想像がつかなくて!
 この穏やかで渋みがあってお父さんみたいな人が、リスみたいな姿にだよ?
 もしかしてコウモリになっても、穏やかで渋かったりするの?
 み、……見たい。


 西村先生はパンフレットを持ち帰ってくれた。
 僕は期待でドキドキしてしまった。
 来ない確率99%。でも僕は、残り1%に賭けたい。


 令一が僕のコウモリ姿に固執する気持ちが、ちょっと解った今日だった。
 




     小ネタおわり。

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