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第1章
病院
しおりを挟む消毒液かなんかの匂いがする。
そういえば、病院にいたんだっけ。
目を開けると蛍光灯が光っていた。
あ。そっか。“見知らぬ、天井”ってやつか。
「ふっっ。」
吹き出してしまった。
両親が俺の顔を覗き込んでくる。
「ちょっと医者呼んでくるよ。」と父が離れていった。
痛いくらいに右手を握られていることに気がついた。母の目が赤い。「大丈夫よ。」と繰り返し呟いている。
眉間が熱い。胸が痛い。
“心配しないで”という声が出ない。
涙さえ拭う気力が沸かない。
帰りたい。
父と共に一人の男が入ってきた。もとい医者の男がはいってきた。
「起き上がれるかい?」
「はい。」
よかった声が出た。
ゆっくりと起き上がり、そのまま座った。
「これからのことを話しますね。まず、今日から入院してもらいます。おそらくはじめての発情期だと思いますので、発情日数の検査と必要であれば抑制剤の調整を行います。おそらく2週間弱の入院になります。何か質問はありますか。」
「息子は…その…発情期とやららしいが、先生やほかの奴らにこう。無理やりにとかはないんでしょうか。」
「それは大丈夫です。Ω病棟に入りますので、患者、スタッフともにフェロモンの影響はほとんどないです。そのため、面会には制限がありますのでご了承下さい。」
そうか。俺襲われたりする可能性あるんだ。病棟大丈夫たって本当は大丈夫じゃないかもだろ。もしかして、この男だって俺を。
変な汗がでてきた。体が震え始める。
男が立ってこっちを見た。
「大丈夫ですか?」と手を伸ばしてくる。
「さっ触るな!」
とっさに手を弾き、体を壁の方へ寄せた。首以外を覆うように布団を被った。
男は目を閉じこめかみを抑えるポーズをとった。
少しして男は1枚のカードを見せながらこう言った。
「大丈夫。僕もΩです。名前言ってませんでしたね。山西 至と言います。隆一さんの主治医になります。よろしくお願いします。」
保険証の性別欄:男性 Ω性
震えが治る。時には体がこんなにも自由がきかない物だと知らなかった。
「先生。ごめん。」
口が渇いて話しにくい。
「気にしてないよ。警戒を解いてくれてありがとう。もう少ししたら病棟へ行こうか。お父さんとお母さんは入院の手続きや準備をお願いします。詳しいことは看護師が説明しますので隣の部屋でお待ちください。」
「隆一じゃあ父さんたち少しは離れるからな。なんかあったら呼べよ。」
「うん。」
先生と二人きりかよ。どうしよう。
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