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二日目

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 午前七時。

「うわぁっ、おいしそーっ!!」

 食堂の大きなテーブルに並べられた、朝食にしてはなかなか豪勢な料理の数々をみて、ヒトミが歓声をあげる。

「これ、ユイがひとりでつくったの? 大変だったでしょう?」

 キョウコが申し訳なさそうに言うと、ユイは微笑んで首を振った。

「ううん、ユウトくんが手伝ってくれたから」

 言って、隣にたつユウトを見つめると、彼はすこし照れたような笑みをみせる。

「みんなのお口に合えば、いいんだけど」
「合う合うっ! こんなの、ぜぇったい美味しいに決まってるもんっ!」

 ヒトミは言って、さっそくオムレツやサラダ、コーンスープやパンなどを、次から次へと自分の皿に取り始める。

「レンくん達も、遠慮せずに食べてね」
「あ、ああ」

 ユイに促されて、レンとリクが料理をとって席につくと、少し遅れてユウトがレンの隣に坐った。

 その、瞬間――。

「っ!?」

 レンは、あの匂い――昨夜、ユイの股から溢れ出ていた愛液の、あの濃厚に甘くて、とても苦い、刺激的な匂いを鼻に感じて、驚愕に目を見開き、思わず隣に坐る男をまじまじと見つめた。

「ん? どうしたの?」

 こちらを振り向いて、柔和な笑みを浮かべるユウトをみて、レンはゆっくりとかぶりを振る。

「いや……、なんでもない」

 レンは、自分の皿に目を落として、混乱する頭で必死に思考する。

(ユウトの体からあの匂いがするということは、まさか……)
(あの後、ユイは……ユウトと……?)

 そんなレンの推測を知ってか知らずか、ユイは自分の正面に坐るユウトと優しく微笑み合いながら、上品に料理を口に運んでいる。

「……」

 暗い部屋で、全裸になったユイとユウトがベッドの上でからみ合い、喘ぎながら激しく乱れている様を想像した途端、レンの胸中で嫉妬の炎が渦巻き、同時に、股間のそれがふたたび熱く怒張しはじめた。

(くそっ……結局、寂しさを忘れさせてくれるモノが欲しかっただけで、相手は誰でもよかった、ってことか……)

 レンが、苛立ちに顔を歪めながらパンをかじっていると、目の前に坐るキョウコが、そんな彼を不思議そうに見つめる。

「ねえ、今日の予定は?」

 四人の女子の中で、ひとりだけばっちりメイクを済ませたアキが、オレンジジュースのグラスを揺らしながら言うと、ユウトがそちらを振り向いて、答えた。

「予定という予定はないけど……とりあえず、食材がもうあまりないから、僕たちはまた町のスーパーへ買い出しにいってくるよ」
「ふうん。で、その後は?」
「その後は、島の観光名所を巡ろうかと思ってるんだけど――」

 ユウトが言うと、ヒトミが素早く割って入った。

「だめだめっ! その前に、今夜の肝試しの下見にいかなくっちゃ」
「肝試しの下見……?」
「そっ! 今夜やるって言ったでしょ、肝試しっ! みんなで下見に行ったら本番が面白くなくなるから、倉橋、アンタだけついてきてよっ!」
「えっ、僕?」

 ユウトが困り顔でさりげなくユイを見つめると、彼女は微笑みを浮かべたまま、ちいさくうなずいた。

「……わかった。じゃあ、僕と真壁さんは、肝試しの下見にいくということで……、他のみんなは、どうする?」
「クルマもないし、ここで待ってるわ。あちこち動き回っても疲れるだけだし」

 キョウコがすまし顔で答えると、他のみんなもうなずいた。

「じゃ、決まりぃーっ! 下見がはやく終わったら、それから何するかはまたその時かんがえよーっ!」

 ヒトミがはしゃいで言った時、レンは、じっと見つめ合うユイとユウトの顔に一瞬、邪悪な影が横ぎったような気がして、ひとり胸騒ぎを覚えた。
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