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【終章】 英雄たち最後のセイ戦
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そして、翌朝――。
まだ日も昇らぬうちにひとり起き出して、すっかり身支度を整えた旺介は、天幕の中で全裸のままザーメン塗れで熟睡している三人の女たちを見下ろして、しずかに微笑んだ。
そのまま、物音を立てないようにそっと天幕を出て、連合軍の陣地の端まで歩いていった少年は、薄明の中にひとりの女が立っているのをみて、ニッコリ笑う。
「そろそろ来る頃じゃないかと思ってたよ」
少年が気さくに言うと、白いローブにほのかな黄金の光を纏わせたその美女は、ひょいと肩をすくめた。
「せっかくあの子たちにちゃんとお別れする時間をつくってあげたのに、何も言わずにこのまま去るつもり?」
「そういうのは苦手なんだよ。でも、ちゃんと手紙を残しておいたよ。もといた世界に帰る、って」
女は、呆れ顔でふんと鼻を鳴らした。
「まったく、悪い男ね。あの子たち、きっとすごく怒るわよ?」
「かもね……。さあ、いこう。はやくしないと、みんなが起きてきちゃうよ」
少年が急かすと、背の高い金髪金眼の女神は、すっと目を細めた。
「もし……あなたがこのままこの世界に残りたいと言うなら、そうさせてあげてもいいのよ? あなたには、魔王を倒してもらった借りがあるし」
「……」
一瞬迷う素振りをみせた少年は、まもなく、ゆっくりとかぶりを振った。
「それはオレも考えたんだけど……、やっぱりやめておくよ。ここは、オレの世界じゃない。いまはわりと気に入ってるけど、やっぱりオレのいるべき場所じゃないんだ。こっちには、マックもケンタもないしさっ!」
旺介がおどけてみせると、女神は真面目にうなずいた。
「……そう。わかったわ」
言って、少年とともに真直ぐ森へと向かって歩き出す。
「……ねえ、旺介?」
しばらくすると、女神は前を向いたまま、口を開いた。
その声には、彼女にしてはめずらしく、どこか不安そうな響きがあった。
「なに?」
「その……あたしがあなたを無理やりこの世界へ送り込んだこと、恨んでる?」
「……」
旺介は、女神の真剣な横顔を見つめて、ふっと微笑んだ。
「恨んでたよ、はじめはね……でも、いまはちがう。辛いことや悲しいこともたくさんあったけど、それ以上に楽しいことや嬉しいこともあったし……この世界で過ごした日々は、オレの最高の思い出だ。それに――」
「それに?」
「魔王の城であの三人の命を救ってくれたでしょ? あれで、ぜんぶチャラだよ」
「なんだ、気づいてたの」
女神は、少女のように悪戯っぽく笑った。
「あれ、ほんとはダメなのよ?」
「わかってる。ありがとう、アフロディテ。すごく、感謝してる」
「……」
女神は前を見つめたまま、そっと少年の手を握った。
「あたしも感謝してるわ。ありがとう、須佐野旺介。あなたを選んで、本当によかった」
「うん……」
まもなく、天から降りてきた一条のあたたかな光がふたりを包み込むと、女神は少年の顔を覗き込んだ。
「準備はいい?」
「ああ」
旺介は答えつつ、そっと後ろを振り返る。
「……みんな、ありがとう。さよなら」
少年が呟いた直後、女神は彼の手を引いて光の中へ飛び立ち、みるみるうちに空高く舞い上がって、曇天の遥か彼方へと飛び去っていった。
その後まもなく、それまで空を厚く覆っていた雲が嘘のように溶け消えて、いましも昇ったばかりの朝日が連合軍の陣地を明るく照らし出した。
【第一部 完】
※ここまでお付き合いいただき、ありがとうございましたっ! 続編発表の際にはまたよろしくお願いいたしますっ!
まだ日も昇らぬうちにひとり起き出して、すっかり身支度を整えた旺介は、天幕の中で全裸のままザーメン塗れで熟睡している三人の女たちを見下ろして、しずかに微笑んだ。
そのまま、物音を立てないようにそっと天幕を出て、連合軍の陣地の端まで歩いていった少年は、薄明の中にひとりの女が立っているのをみて、ニッコリ笑う。
「そろそろ来る頃じゃないかと思ってたよ」
少年が気さくに言うと、白いローブにほのかな黄金の光を纏わせたその美女は、ひょいと肩をすくめた。
「せっかくあの子たちにちゃんとお別れする時間をつくってあげたのに、何も言わずにこのまま去るつもり?」
「そういうのは苦手なんだよ。でも、ちゃんと手紙を残しておいたよ。もといた世界に帰る、って」
女は、呆れ顔でふんと鼻を鳴らした。
「まったく、悪い男ね。あの子たち、きっとすごく怒るわよ?」
「かもね……。さあ、いこう。はやくしないと、みんなが起きてきちゃうよ」
少年が急かすと、背の高い金髪金眼の女神は、すっと目を細めた。
「もし……あなたがこのままこの世界に残りたいと言うなら、そうさせてあげてもいいのよ? あなたには、魔王を倒してもらった借りがあるし」
「……」
一瞬迷う素振りをみせた少年は、まもなく、ゆっくりとかぶりを振った。
「それはオレも考えたんだけど……、やっぱりやめておくよ。ここは、オレの世界じゃない。いまはわりと気に入ってるけど、やっぱりオレのいるべき場所じゃないんだ。こっちには、マックもケンタもないしさっ!」
旺介がおどけてみせると、女神は真面目にうなずいた。
「……そう。わかったわ」
言って、少年とともに真直ぐ森へと向かって歩き出す。
「……ねえ、旺介?」
しばらくすると、女神は前を向いたまま、口を開いた。
その声には、彼女にしてはめずらしく、どこか不安そうな響きがあった。
「なに?」
「その……あたしがあなたを無理やりこの世界へ送り込んだこと、恨んでる?」
「……」
旺介は、女神の真剣な横顔を見つめて、ふっと微笑んだ。
「恨んでたよ、はじめはね……でも、いまはちがう。辛いことや悲しいこともたくさんあったけど、それ以上に楽しいことや嬉しいこともあったし……この世界で過ごした日々は、オレの最高の思い出だ。それに――」
「それに?」
「魔王の城であの三人の命を救ってくれたでしょ? あれで、ぜんぶチャラだよ」
「なんだ、気づいてたの」
女神は、少女のように悪戯っぽく笑った。
「あれ、ほんとはダメなのよ?」
「わかってる。ありがとう、アフロディテ。すごく、感謝してる」
「……」
女神は前を見つめたまま、そっと少年の手を握った。
「あたしも感謝してるわ。ありがとう、須佐野旺介。あなたを選んで、本当によかった」
「うん……」
まもなく、天から降りてきた一条のあたたかな光がふたりを包み込むと、女神は少年の顔を覗き込んだ。
「準備はいい?」
「ああ」
旺介は答えつつ、そっと後ろを振り返る。
「……みんな、ありがとう。さよなら」
少年が呟いた直後、女神は彼の手を引いて光の中へ飛び立ち、みるみるうちに空高く舞い上がって、曇天の遥か彼方へと飛び去っていった。
その後まもなく、それまで空を厚く覆っていた雲が嘘のように溶け消えて、いましも昇ったばかりの朝日が連合軍の陣地を明るく照らし出した。
【第一部 完】
※ここまでお付き合いいただき、ありがとうございましたっ! 続編発表の際にはまたよろしくお願いいたしますっ!
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