『クラスで一番モテない男が、幼なじみと“仮恋人契約”したら、本物の恋に気づいてしまった件』~報酬はプリン100個。彼女が部屋でだけ甘えん坊

月下花音

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第22話 閉じられた扉と親友が明かす秘密

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 月曜日の朝。
 隣の席は空席だった。

 玲奈は学校に来なかった。
 連絡もない。既読もつかない。
 家のチャイムを鳴らしても応答はなかった。

 俺たちの「契約」は昨日で終わった。
 だから、彼女が俺の前から姿を消しても、文句を言う権利はどこにもない。
 ただのクラスメイトに戻っただけだ。
 それなのに、胸に開いた穴は塞がるどころか、時間が経つにつれて広がっていくばかりだった。

「……はぁ」

 ため息をついて学食のテラス席で一人、冷めたうどんを啜っていると、ドカッと思い切りよく向かいの席に座る人物がいた。
 佐久間リオだ。
 玲奈の親友であり、この大学で一番怒らせてはいけない女。

「……元気ないじゃん、藤堂」

「見れば分かるだろ」

「まあね。玲奈もズル休みしてるし、相当こじらせたみたいね」

 リオは頬杖をつき、ジッと俺を値踏みするように見つめた。
 その視線には、いつものからかうような色はなく、どこか真剣な響きがあった。

「ねえ、藤堂。あんたさ、昨日のデートで何したの?」

「……プレゼントを渡した。契約外の」

「ふーん。で、玲奈は泣いて帰った」

「……なんで知ってるんだ」

「昨日の夜、電話越しの泣き声で鼓膜破れるかと思ったわよ。『優しくされたら忘れられない』『もう他人になんて戻れない』って、延々とね」

 リオは呆れたように肩をすくめたが、その目は笑っていなかった。

「……あの子、馬鹿だからさ。自分の気持ちに蓋をするのが上手になりすぎちゃってるのよ」

 リオがポケットから何かを取り出した。
 くしゃくしゃに丸められた、紙切れだ。

「これ、玲奈の部屋のゴミ箱から拾ってきた。……見なさいよ」

 投げ渡された紙を、俺は広げた。
 それは、覚えのある筆跡で書かれたメモだった。
 何度も書き直され、そして最後には黒く塗りつぶされている。

『契約更新の提案書』
『期間:無期限』
『条件:……ずっと、そばにいてほしい』
『報酬:私の全て』

 文字が、涙で滲んでいるように見えた。

「……なんだよ、これ」

 手が震える。
 喉が熱くなる。

「あの子、日曜日のデートでこれを渡そうとしてたのよ。でも、あんたが先に『いい人』ぶってプレゼントなんか渡すから、言い出せなくなっちゃったの。『自分だけが重い女になりたくない』って」

 リオの声が、俺の心臓を突き刺す。

「藤堂。あんたは契約だから優しくしたの? それとも、本気だったの?」

 問われるまでもない。
 答えはずっとここにある。

「……本気だ」

 俺は紙を握りしめて立ち上がった。

「契約なんて関係ない。俺は、あいつが好きなんだ」

 リオは、ニッと口の端を吊り上げた。
 満足そうな、悪魔的な笑顔。

「合格。……さっさと行きなさいよ。今頃あいつ、部屋で荷造りしてるかもしれないわよ? 『もう会わせる顔がない』とか言って」

「は!? マジか!」

「嘘か本当かは、行って確かめれば?」

 礼も言わずに俺は走り出した。
 うどんを半分残したまま。
 午後の講義も、周囲の目も、もうどうでもよかった。

 握りしめたメモ用紙が、俺の手のひらで熱を帯びている。
 これが、玲奈の本心。
 だったら、俺がやるべきことは一つだ。

 待ってろ、玲奈。
 もう「契約」なんて逃げ道は作らせない。
 正面から、その氷の壁をぶち壊してやる。

(続く)
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