【告白短編集】~どこにでもある日常の中に、最高の愛が隠れている~

月下花音

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第15話:旅行仲間の夜更かしで、君の夢を聞いた

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旅行サークルに入ったのは、二年前。

特に理由はなかった。ただ、旅に出たかったから。

新しい場所を見たい。新しい風を感じたい。そういった衝動で、入ったサークルだった。



そこで、会った。

明日香。

旅行サークルの副代表。毎月、旅行計画を立てている。いつも笑顔。誰からも好かれている。

僕は、最初、彼女を特別だとは思わなかった。

ただ、「旅行仲間」だ。

だが、やがて、気づいた。

いつの間にか、一緒に旅行計画を立てるのは、彼女とばかりになっていた。

いつの間にか、彼女のことばかり考えるようになっていた。



夏合宿。

大学のサークル仲間と、キャンプ場に来ていた。

昼間は、バーベキューで盛り上がった。

夜になると、みんなテントで寝た。

だが、僕と明日香だけは、起きていた。

焚き火の前で。



火が、パチパチと音を立てる。

煙が立つ。星空が輝く。

「綺麗ですね」

明日香が言った。

「ですね」

「都会では、こんなに星が見えないですね」

「そうですね」

「旅っていいなって、この時に思います」

彼女の横顔が、炎に照らされていた。

表情が、何とも言えなく柔らかかった。



「明日香は、旅が好きですか?」

「大好きです」

彼女は、迷いなく言った。

「知らない場所。知らない景色。知らない人。全部好きです」

「そうなんですか」

「はい」

明日香が、僕を見た。

「俊(しゅん)も、そうですか?」



「僕は……」

僕は迷った。

正直に答えるべきか。嘘をつくべきか。

「最近、旅で一番好きなことが変わりました」

「え?」

「景色を見ることより、その景色を君と一緒に見ることの方が好きになりました」

明日香は、黙っていた。



「これからの夢とか、ありますか?」

明日香が聞いた。

「ツアープランナーとか、仕事にしたいんです」

「そうなんですか」

「はい。旅行企画が好きで」

「そういう時、君のプランって、いつも楽しいですよね」

明日香は、ちょっと恥ずかしそうに笑った。

「ありがとうございます」

「でも」

彼女は、焚き火を見つめた。

「最近、気づいたんです」

「何に?」

「一人で旅するのも好きですけど、誰かと一緒に旅するのも、いいなって」



その言葉に、僕の心が高鳴った。

「誰かと?」

「はい」

明日香は、僕を見た。

「景色を見た時に『綺麗だね』って共有できる人。計画を一緒に立てられる人」



僕は、決めた。

「明日香。君の夢、叶えるのを手伝いたいです」

「?」

「ツアープランナーになるのを。でも、一人じゃなく、僕と一緒に」

明日香の目が、少し大きくなった。

「僕も同じです。旅をするなら、君と一緒がいいです」

明日香は、僕に身を寄せた。

肩が触れそうな距離。

「本当ですか?」

「本当です」



焚き火が、静かに燃えている。

「これからも、一緒に旅しますか?」

明日香が聞いた。

「ずっと」

僕は答えた。

「君の夢を、一緒に叶えるために」



星空の下で、二人は手を繋いだ。

旅行サークルから始まった恋。

それは、新しい景色を見つけるたびに、深まっていくんだと思った。

次はどこに行こう。君の隣なら、どこでもいい。

そう思った。
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