【告白短編集】～どこにでもある日常の中に、最高の愛が隠れている～

第43話：未来の夢で、君の隣を想像した

ベッドに横たわって、天井を見つめていた。

妻・佳奈子も、その横で、同じように天井を見つめていた。

二人とも、その日の疲労で、動く気力がなかった。だが、その沈黙は、不快ではなかった。むしろ、最も心地よい時間だった。

「五年後。どこにいると思いますか？」

佳奈子が聞いた。

「え？」

「五年後。私たちは。何をしてると思いますか？」

僕は、天井を見つめたまま、考えた。五年後。それは、今から見ると、遠い未来のように思える。だが、同時に、そう遠くない時間でもある。



「多分、同じ家にいる」

「何をしてます？」

「朝食を一緒に食べてる。君が作った朝食。それを、僕たちで一緒に食べる」

「ん。そっか」

「仕事から帰ってきて。君が待ってるんだ。玄関で」

「何してます？」

「デスクで本を読んでる。その本を、僕に教えてくれる」

「そっか」

「夜。二人で、寝る前に。その日のことを話す。くだらないことを笑い合う。それが、毎晩、続く」

佳奈子は、僕の手を握った。

「それ。本当ですか？」

「ああ。ずっと。想像してる。毎日、その光景を」



その後、毎晩、佳奈子は同じ質問を繰り返した。

「五年後は？」

「十年後は？」

「子どもたちが生まれたら？」

その度、僕は、その光景を言葉にした。

子どもたちの笑い声。公園での休日。両親との食卓。全てが、温かく、そして具体的だった。



そして、現在。

五年が経った。

僕たちは、本当に、同じ家にいた。

朝食は、一緒に食べていた。

僕が仕事から帰ると、佳奈子は、玄関で待っていた。

夜、二人で、その日のことを話す。くだらないことで笑い合う。

全てが、あの夜に想像した通りになっていた。



「あの時の夢。本当になったね」

佳奈子が言った。

「ああ」

「もっと、夢を見ようよ。十年後。二十年後。一生」

僕は、彼女の手を握った。

「ああ。ずっと、君の隣で、未来を想像しよう」



人生は、未来を想像することから始まる。

その想像が、現実を作り出す力を持つのだ。

愛する者の隣で見た未来が、最も美しい現在を作るのだ。