幼馴染に「つまらない」と捨てられた俺、実は学校一のクール美少女(正体は超人気覆面配信者)の「生活管理係」でした。

月下花音

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第二章 頂点の裏側で、俺は彼女を“壊れずに運用するシステム”になった

第22話:影でミオのファンに毒を植え付けた一週間

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 玲奈が消えて一週間。
 世界は平和を取り戻した――ように見えた。

 ネット上では新しい炎上が起き、古い話題は押し流されていく。
 それが健全な新陳代謝だ。
 だが、一部の人間だけが、奇妙な違和感に気づき始めていた。

『ねえ、レイちゃんのチャンネル登録者数、また増えてない?』
 某大手掲示板の、配信者スレッド。
 誰かが何気なく書き込んだ一文が、さざ波のように広がっていく。

『バグじゃね? 更新止まってんのに増えるわけない』
『いや、俺も見た。昨日は248万だったのに、今249万だぞ』
『切り抜きの再生数もおかしい。なんか……“意図的”に掘り返されてないか?』

 誰も証明できない。
 急激なバズり方ではない。botのような機械的な動きでもない。
 ただ、まるで潮が満ちるように、静かに、確実に数字が底上げされている。
 自然発生にしては不自然すぎる現象。
 だが、「誰かが操作している」という証拠はどこにもない。
 
 ――当然だ。
 操作しているわけではない。「流れ」を作ったのは俺だが、それを拡散しているのは、他でもない「彼ら自身」なのだから。

 俺は薄暗いリビングで、淡々とキーボードを叩いていた。
 画面には無数のウィンドウが開かれている。
 DMの下書きフォルダ。スプレッドシート。
 送信履歴はない。俺はただ「下書き」を作り、それを匿名のアカウントを経由して、意図したタイミングで「流出」させているだけだ。

 内容は単純だ。
 『レイの過去動画、今見ると伏線ヤバい』
 『ミオの発言とレイの表情、時系列で並べると意味深すぎ』
 肯定も否定もしない。
 ただの事実の羅列。
 だが、それを見た人間は思う。「自分だけが真実に気づいた」と。
 正義感は操作できない。だが、正義感が発生する「条件」は完璧に設計できる。

 その歪みは、確実にミオの周囲を侵食し始めていた。

『ミオちゃんの新企画、なんかパッとしないね』
『コラボ相手、なんで最近ビミョーな人ばっかなの?』
『なんかさ……レイちゃんいなくなってから、ミオちゃんの笑顔、怖くない?』

 直接的な批判はない。
 ただ、空気が濁っている。
 ミオというコンテンツを支えていた「清涼感」に、正体不明のカビが生え始めている。
 アンチが暴れているわけではない。
 ファンたちが、無意識に距離を取り始めているのだ。
 「なんか違う」「なんか怖い」。
 その言語化できない違和感こそが、俺が最も時間をかけて植え付けた毒だった。

「……湊」
 玲奈が起きてきた。
 昼過ぎ。彼女のバイオリズムは完全に崩れているが、今は修正しない。
 彼女はキッチンで水を飲むと、俺のそばに来て立ち止まった。
 そして、俺を見下ろして首を傾げる。

「今日は、何もしない日?」
 以前なら「今日は何するの?」か、あるいは「これやりたい」だった。
 だが今の彼女は違う。
 俺が許可しなければ、何も発生しないと思っている。
 自分の行動権限(イニシアチブ)を、完全に俺に譲渡している。

「ああ。今日は何もしなくていい」
 俺は彼女の腰に手を回し、座らせる。
「ただ、そこにいてくれればいい」
「……うん。分かった」
 玲奈は大人しく俺の膝に頭を預ける。ボサボサの銀髪から、微かに甘い香りが立ち上る。体温は低いままなのに、俺の服を握る指だけが熱い。
 その表情に、退屈や不安は見えない。
 ただ「待機モード」であるという事実だけを受け入れている。

 俺は彼女の髪を撫でながら、もう片方の手でニュースサイトを更新した。
 指先が滑って、意図しない広告をタップしかけた。画面に残った指紋の脂が光を反射している。俺はそれを神経質に袖で拭った。
 小さな記事の端に、追記があった。
 先週の炎上記事。
 『※関係者への再取材の結果、一部事実と異なる内容が含まれておりました。訂正してお詫び申し上げます』

 誰も謝罪会見はしていない。
 誰も勝利宣言はしていない。
 だが、風向きが変わった。
 世界が、玲奈を「叩いていいサンドバッグ」から、「触れ方が分からない危険物(アンタッチャブル)」として再定義し始めたのだ。

「……戻ったな」
 俺は小さく呟いた。
 玲奈が不思議そうに顔を上げる。
「なにが?」
「風だ。……もうすぐ、嵐になる」

 沈黙は、最強の声明だった。
 何も語らず、何も弁解せず、ただ静かに数字だけを伸ばし続ける不気味な存在。
 それがどれほど、敵にとって恐怖となるか。

 玲奈の登録者数、250万人復帰。
 ミオの登録者数、微減開始。

 勝利のファンファーレは鳴らない。
 ただ数字だけが、冷徹な事実を告げていた。
 
 ――さあ、狩りの時間だ。

 玲奈の登録者数、250万人復帰。
 ミオの登録者数、微減開始。
 誰も気づかないうちに、勝負はついていた。

(第22話 おわり)
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