5 / 5
第5話:元旦の既読スルー初詣
しおりを挟む
1月1日。
お昼過ぎ。
目が覚めると、頭がガンガン痛かった。
昨日の夜、泣きすぎて目がパンパンに腫れている。
鏡を見ると、そこには落ち武者がいた。
これが「花のセブンティーン」の元旦の姿か。
終わってる。
リビングに行くと、お節料理が並んでいた。
栗きんとんだけ食べた。
甘すぎて気持ち悪い。
「あかり、初詣行かないの?」
お母さんが聞いてくる。
「……行く」
家族と一緒に行くのは恥ずかしいし、家にいても気が滅入るだけだから、一人で行くことにした。
ジャージの上からベンチコートを着て、帽子を目深に被る。
完全防備。
誰にも会いたくない。
特に、リア充たちには。
近所の神社は、地獄のような混雑だった。
どこを見てもカップル。
手を繋いで、キャッキャと笑い合っている。
「今年はお互い受験頑張ろうね♡」
「合格したらディズニー行こうな」
そんな会話が聞こえてくる。
うるさい。
全員別れろ。
私のゆうたとの「ディズニー計画」が消滅した日に、よくそんなハッピーな話題ができるな。
神様、あいつらに天罰を下してください。
そんな呪いをかけながら、行列に並ぶ。
お賽銭を入れる。
5円玉がないから、10円玉を入れた。
『ゆうたから連絡が来ますように』
『復縁できますように』
……なんて、願うと思ったか?
『あいつがハゲますように』
『美咲先輩と喧嘩しますように』
『次のテストで赤点取りますように』
最低の願い事をした。
でも、これくらい許されるはずだ。
こっちは大晦日に振られてるんだから。
おみくじを引く。
カシャカシャと箱を振る。
棒が出る。
番号を巫女さんに伝える。
渡された紙を開く。
『凶』
……は?
凶?
元旦から?
『待ち人:来ず』
『失せ物:出ず』
『恋愛:諦めよ』
神様、ケンカ売ってる?
今の私に「諦めよ」とか、追い討ちにも程がある。
あまりにも救いがなくて、逆に笑えてきた。
そうだよね。
私の人生なんてこんなもんだよね。
スマホを取り出す。
ゆうたのLINE画面を開く。
『別れよう』
その下に、一言だけ送ってみた。
『分かった。今までありがとう』
未練がましい長文は送らない。
「いい女」ぶって終わらせてやる。
送信。
……既読がつかない。
ブロックはされてないみたいだけど、通知オフにしてるのか、あえて見てないのか。
どっちにしても、私の言葉は届いていない。
虚しい。
あんなに毎日LINEしてたのに。
「おはよう」から「おやすみ」まで、全部共有してたのに。
糸が切れた凧みたいに、どこかへ飛んでいってしまった。
『ピロリロリン!』
通知音が鳴った。
ビクッとする。
ゆうた訳ないのに、期待してしまう自分が憎い。
画面を見る。
『マナ』からだ。
『あけおめー! ことよろ!』
『てか、昨日大丈夫だった? ゆうた死ねって感じなんだけどw』
『今度カラオケ行って発散しよ! 奢るわ!』
……マナ。
持つべきものは友達だ。
涙がまた滲んできた。
でも、昨日の夜の涙とは違って、少し温かい涙だった。
『いく! 絶対いく! 喉潰れるまで歌う!』
返信すると、すぐに『了解(笑)』のスタンプが返ってきた。
即レス。
嬉しい。
やっぱり、私の居場所はここだ。
男なんて、どうせすぐいなくなる。
でも友達とカラオケのフリータイムは裏切らない。
神社の境内を出る。
空気が冷たくて、澄んでいる。
ゆうたのことは、まだ好きだ。
インスタ見たら辛くなるし、学校で会ったら気まずいと思う。
でも、スマホの通知が鳴らなくても、世界は終わらないって分かった。
むしろ、四六時中スマホ気にして、美咲先輩の影に怯えてた時より、息がしやすいかもしれない。
「……さむっ」
独り言をつぶやいて、私はベンチコートの前をしっかり閉めた。
凶のおみくじは、境内の木に強く結びつけてきた。
私の「最悪の恋」と一緒に、そこに置いてきた。
来年は、もう少しまともな美味しいケーキが食べられますように。
そう願いながら、私は一人で家に帰った。
ポケットの中で、マナからのLINE通知がもう一度鳴った気がした。
(おわり)
お昼過ぎ。
目が覚めると、頭がガンガン痛かった。
昨日の夜、泣きすぎて目がパンパンに腫れている。
鏡を見ると、そこには落ち武者がいた。
これが「花のセブンティーン」の元旦の姿か。
終わってる。
リビングに行くと、お節料理が並んでいた。
栗きんとんだけ食べた。
甘すぎて気持ち悪い。
「あかり、初詣行かないの?」
お母さんが聞いてくる。
「……行く」
家族と一緒に行くのは恥ずかしいし、家にいても気が滅入るだけだから、一人で行くことにした。
ジャージの上からベンチコートを着て、帽子を目深に被る。
完全防備。
誰にも会いたくない。
特に、リア充たちには。
近所の神社は、地獄のような混雑だった。
どこを見てもカップル。
手を繋いで、キャッキャと笑い合っている。
「今年はお互い受験頑張ろうね♡」
「合格したらディズニー行こうな」
そんな会話が聞こえてくる。
うるさい。
全員別れろ。
私のゆうたとの「ディズニー計画」が消滅した日に、よくそんなハッピーな話題ができるな。
神様、あいつらに天罰を下してください。
そんな呪いをかけながら、行列に並ぶ。
お賽銭を入れる。
5円玉がないから、10円玉を入れた。
『ゆうたから連絡が来ますように』
『復縁できますように』
……なんて、願うと思ったか?
『あいつがハゲますように』
『美咲先輩と喧嘩しますように』
『次のテストで赤点取りますように』
最低の願い事をした。
でも、これくらい許されるはずだ。
こっちは大晦日に振られてるんだから。
おみくじを引く。
カシャカシャと箱を振る。
棒が出る。
番号を巫女さんに伝える。
渡された紙を開く。
『凶』
……は?
凶?
元旦から?
『待ち人:来ず』
『失せ物:出ず』
『恋愛:諦めよ』
神様、ケンカ売ってる?
今の私に「諦めよ」とか、追い討ちにも程がある。
あまりにも救いがなくて、逆に笑えてきた。
そうだよね。
私の人生なんてこんなもんだよね。
スマホを取り出す。
ゆうたのLINE画面を開く。
『別れよう』
その下に、一言だけ送ってみた。
『分かった。今までありがとう』
未練がましい長文は送らない。
「いい女」ぶって終わらせてやる。
送信。
……既読がつかない。
ブロックはされてないみたいだけど、通知オフにしてるのか、あえて見てないのか。
どっちにしても、私の言葉は届いていない。
虚しい。
あんなに毎日LINEしてたのに。
「おはよう」から「おやすみ」まで、全部共有してたのに。
糸が切れた凧みたいに、どこかへ飛んでいってしまった。
『ピロリロリン!』
通知音が鳴った。
ビクッとする。
ゆうた訳ないのに、期待してしまう自分が憎い。
画面を見る。
『マナ』からだ。
『あけおめー! ことよろ!』
『てか、昨日大丈夫だった? ゆうた死ねって感じなんだけどw』
『今度カラオケ行って発散しよ! 奢るわ!』
……マナ。
持つべきものは友達だ。
涙がまた滲んできた。
でも、昨日の夜の涙とは違って、少し温かい涙だった。
『いく! 絶対いく! 喉潰れるまで歌う!』
返信すると、すぐに『了解(笑)』のスタンプが返ってきた。
即レス。
嬉しい。
やっぱり、私の居場所はここだ。
男なんて、どうせすぐいなくなる。
でも友達とカラオケのフリータイムは裏切らない。
神社の境内を出る。
空気が冷たくて、澄んでいる。
ゆうたのことは、まだ好きだ。
インスタ見たら辛くなるし、学校で会ったら気まずいと思う。
でも、スマホの通知が鳴らなくても、世界は終わらないって分かった。
むしろ、四六時中スマホ気にして、美咲先輩の影に怯えてた時より、息がしやすいかもしれない。
「……さむっ」
独り言をつぶやいて、私はベンチコートの前をしっかり閉めた。
凶のおみくじは、境内の木に強く結びつけてきた。
私の「最悪の恋」と一緒に、そこに置いてきた。
来年は、もう少しまともな美味しいケーキが食べられますように。
そう願いながら、私は一人で家に帰った。
ポケットの中で、マナからのLINE通知がもう一度鳴った気がした。
(おわり)
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
清掃員と僕の密やかな情状
MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。
青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。
肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。
44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる