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第7話:新機能実装:温泉
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戦闘のち、労働。
俺たちの日常はハードだ。
畑を耕し、家畜(バグってない普通の野兎)を飼い、井戸を掘る。
女神たちは泥だらけだ。
フィリアのドレスはボロボロ、ヘスティアのツナギは真っ黒、ソフィアの眼鏡はずれている。
「……風呂に入りたい」
誰かが呟いた。
全員の心の声だった。
水はある。燃料(木材)もある。
あとは「浴槽」と「給湯システム」だ。
「ヘスティア、岩をくり貫いて浴槽を作れるか?」
「お安い御用よ。……ハート型でいい?」
「丸型で頼む」
「フィリア、お湯の温度管理は?」
「はい! 植物の発熱作用を利用すれば、42度くらいでキープできます!」
プロジェクト『温泉』が発足した。
我々のモチベーションは最高潮に達し、わずか半日で露天風呂が完成した。
湯気が立っている。
硫黄の匂いではなく、フィリアが入れたハーブのいい香りがする。
「じゃあ、あたしたち先に入るわね!」
女神たちが服を脱ぎ捨て、お湯に飛び込む。
キャッキャとはしゃぐ声。
俺は岩陰で待機していた。
管理者として、周囲の警戒(覗き魔もバグ魔獣もいないが)をする必要がある。
決して、一緒に入ろうなどという邪念はない。
俺は紳士だ。そして枯れた社畜だ。
「……創さーん!」
フィリアの声。
「お湯加減、最高ですよ! 一緒に入りませんかー?」
「バカ! 何言ってんのよ!」
ヘスティアの慌てる声。
「でも、三人と創さんなら入れますよ? 広いし」
ソフィアの天然な意見。
「……遠慮しておく」
俺は岩越しに答える。
「男女混浴は風紀的によろしくない」
「誰も見てませんよー」
「神様ルールではOKなんですー」
誘惑がすごい。
俺の理性が試されている。
正直、何日も風呂に入ってない俺の体は限界だ。
温かいお湯に浸かりたい。
「……背中、流してあげますよ?」
フィリアが悪魔の囁きをする。
「創さん、肩凝ってるでしょう? 私のマッサージ、上手いですよ?」
ピクリ、と肩が反応した。
肩こり。SEの職業病。万年岩のように硬い俺の僧帽筋。
それを癒やしてくれるだと?
「……いや、ダメだ」
俺は首を振った。
ここで流されたら、管理者としての威厳が崩壊する。
それに、裸の付き合いをするには、まだ心の準備が……。
「創」
ヘスティアの声。いつもより真面目なトーン。
「……入んなさいよ。アンタが一番働いてるんだから」
「ヘスティア?」
「別に、変な意味じゃないわよ。……ただ、アンタが汚れたままだと、こっちが気を使うってだけ!」
不器用な気遣い。
俺は苦笑した。
「……わかった。入らせてもらう」
俺は服を脱ぎ、タオル一本で岩陰から出た。
湯気の中、三人の女神が肌を赤らめてこちらを見ていた。
俺は出来るだけ視線を上に向け(星空観察だ)、お湯に浸かった。
「……あぁ~」
声が漏れた。
極楽。
筋肉の緊張が解けていく。
「はい、創さん」
フィリアが俺の背中に回る。
柔らかい手が、凝り固まった肩を揉みほぐす。
「お疲れ様です……」
「……ああ、効く……」
俺は目を閉じた。
ヘスティアとソフィアも、俺の腕や足をマッサージし始めた。
ハーレム状態だが、そこにいやらしさはなかった。
あるのは、労働のあとの連帯感と、互いを労る温かさだけ。
俺は思った。
この瞬間のために、俺は転生したのかもしれない、と。
それくらい、このお湯は温かかった。
(つづく)
俺たちの日常はハードだ。
畑を耕し、家畜(バグってない普通の野兎)を飼い、井戸を掘る。
女神たちは泥だらけだ。
フィリアのドレスはボロボロ、ヘスティアのツナギは真っ黒、ソフィアの眼鏡はずれている。
「……風呂に入りたい」
誰かが呟いた。
全員の心の声だった。
水はある。燃料(木材)もある。
あとは「浴槽」と「給湯システム」だ。
「ヘスティア、岩をくり貫いて浴槽を作れるか?」
「お安い御用よ。……ハート型でいい?」
「丸型で頼む」
「フィリア、お湯の温度管理は?」
「はい! 植物の発熱作用を利用すれば、42度くらいでキープできます!」
プロジェクト『温泉』が発足した。
我々のモチベーションは最高潮に達し、わずか半日で露天風呂が完成した。
湯気が立っている。
硫黄の匂いではなく、フィリアが入れたハーブのいい香りがする。
「じゃあ、あたしたち先に入るわね!」
女神たちが服を脱ぎ捨て、お湯に飛び込む。
キャッキャとはしゃぐ声。
俺は岩陰で待機していた。
管理者として、周囲の警戒(覗き魔もバグ魔獣もいないが)をする必要がある。
決して、一緒に入ろうなどという邪念はない。
俺は紳士だ。そして枯れた社畜だ。
「……創さーん!」
フィリアの声。
「お湯加減、最高ですよ! 一緒に入りませんかー?」
「バカ! 何言ってんのよ!」
ヘスティアの慌てる声。
「でも、三人と創さんなら入れますよ? 広いし」
ソフィアの天然な意見。
「……遠慮しておく」
俺は岩越しに答える。
「男女混浴は風紀的によろしくない」
「誰も見てませんよー」
「神様ルールではOKなんですー」
誘惑がすごい。
俺の理性が試されている。
正直、何日も風呂に入ってない俺の体は限界だ。
温かいお湯に浸かりたい。
「……背中、流してあげますよ?」
フィリアが悪魔の囁きをする。
「創さん、肩凝ってるでしょう? 私のマッサージ、上手いですよ?」
ピクリ、と肩が反応した。
肩こり。SEの職業病。万年岩のように硬い俺の僧帽筋。
それを癒やしてくれるだと?
「……いや、ダメだ」
俺は首を振った。
ここで流されたら、管理者としての威厳が崩壊する。
それに、裸の付き合いをするには、まだ心の準備が……。
「創」
ヘスティアの声。いつもより真面目なトーン。
「……入んなさいよ。アンタが一番働いてるんだから」
「ヘスティア?」
「別に、変な意味じゃないわよ。……ただ、アンタが汚れたままだと、こっちが気を使うってだけ!」
不器用な気遣い。
俺は苦笑した。
「……わかった。入らせてもらう」
俺は服を脱ぎ、タオル一本で岩陰から出た。
湯気の中、三人の女神が肌を赤らめてこちらを見ていた。
俺は出来るだけ視線を上に向け(星空観察だ)、お湯に浸かった。
「……あぁ~」
声が漏れた。
極楽。
筋肉の緊張が解けていく。
「はい、創さん」
フィリアが俺の背中に回る。
柔らかい手が、凝り固まった肩を揉みほぐす。
「お疲れ様です……」
「……ああ、効く……」
俺は目を閉じた。
ヘスティアとソフィアも、俺の腕や足をマッサージし始めた。
ハーレム状態だが、そこにいやらしさはなかった。
あるのは、労働のあとの連帯感と、互いを労る温かさだけ。
俺は思った。
この瞬間のために、俺は転生したのかもしれない、と。
それくらい、このお湯は温かかった。
(つづく)
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◇
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