【短編集】バレンタイン・ノワール ~ハッピーエンドは売り切れました~

月下花音

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第3章:青春の残酷さ(スクールカーストと幼馴染)

#8:クラスで一番不器用なチョコレート Ep.03

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 陸は袋の中の隕石を見て、吹いた。
「ぶっ! なんだこれ、爆弾?」
「うるさいなー! 味は保証するから!」
 顔が熱い。
 恥ずかしい。でも、笑ってくれて嬉しい。

「サンキュ。嬉しいわ」
 陸の表情が優しくなる。
「たださ、俺、実は甘いのちょっと苦手なんだよな」

 えっ。
 時が止まる。
 リサーチ不足。
 致命的ミス。
 美波に聞けばよかった。
 いや、聞く余裕すらなかった。

「え、そ、そうだったの……?」
「うん。あんま自分からは食わないんだよね」
「ご、ごめん! 無理しないで! 捨てていいから!」
 泣きそうになる。
 嫌がらせじゃん、これじゃ。

「いやいや、捨てるわけねーだろ。お前が頑張ってくれたんなら食うよ。毒見してやる」
「毒じゃないし!」

 陸は笑って、ポイッと一つ口に入れた。
 モグモグする。
 長い。
 私の心臓がカウントダウンを始める。
 まずいって言われたらどうしよう。
 吐き出されたらどうしよう。

「……お、意外といける。うまい」

「ほんと!?」
「おう。コーヒー欲しくなるな。甘さもちょうどいいわ」

 よかった。
 食べてくれた。
「甘いの苦手」なのに、無理して食べてくれた。
 それって、脈ありってこと?
 少なくとも、嫌われてはいない。
 私のために、苦手なものを我慢して受け入れてくれる優しさ。
 これが愛じゃなくて何だというの。

「ありがとう、陸」
「おう。お返しは倍返しな」
「期待してる!」

 私はスキップしたい気分で家に帰った。
 ベッドにダイブして、足をバタバタさせた。
 いける。
 これは、いけるかもしれない。
 美波に報告しなきゃ。
『陸、食べてくれたよ! 甘いの苦手らしいけど、美味しいって!』

 既読はすぐについたけど、返信はスタンプ一つだけだった。
『👍』
 あれ? なんかそっけない?
 忙しいのかな?
 まあいいや。今日の私は無敵だ。
 陸の「うまい」という声を録音しておけばよかったと本気で後悔した。

(つづく)
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