【短編集】バレンタイン・ノワール ~ハッピーエンドは売り切れました~

月下花音

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第4章:特殊設定と変化球(スパイスを投入)

#11:バレンタインまでの恋人契約 Ep.04

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 2月13日。
 契約終了前日。
 瞬がいつになく深刻な顔で私を呼び出した。
「どうしたの? 作戦変更?」

「いや……あのさ、ストーカーの子なんだけど」
「うん」
「昨日、諦めるってLINE来たわ。お前とのツーショット見て、心折れたらしい」

 え?
 それって、つまり。
「もう、付き合うフリしなくていいってこと?」

「ああ。……今まで悪かったな、付き合わせちゃって」
 瞬は申し訳なさそうに頭を下げた。
 私の役目は終わった。
 バレンタインを待たずに、クランクアップだ。

「そっか。よかったじゃん、解決して」
 私は笑った。
 精一杯の演技力で。
「じゃあ、明日のチョコ渡しの儀式もなし?」
「……まあ、必要ないな」

 必要ない。
 私が夜なべして作ったビター生チョコ。
 綺麗な箱に詰めて、リボンまでかけたのに。
 行き場を失った小道具。

「分かった。じゃあ、これで解散だね」
「おう。あ、図書室の本の返却、約束通りやるから」
「うん、よろしく」

 あっけない幕切れ。
 もっとドラマチックな終わり方を期待していたわけじゃないけど、こんな事務的な終了通知はあんまりだ。
「ありがとう」とか「楽しかった」とか、そういうのはないの?
 ないか。
 彼にとっては、ただの「面倒ごとの処理」だったんだから。

 家に帰って、冷蔵庫の中のチョコを見た。
 綺麗にラッピングされた箱。
 これを明日、自分で食べるのか。
 あるいは、家族に「余った」と言って配るのか。
 虚しい。
 役が抜けない女優みたいに、私はまだ「瞬の彼女」の気分でいたかった。
 明日までは、彼の隣にいる権利があると思っていたのに。
 契約社会は非情だ。

(つづく)
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