渋谷カフェの人生哲学、お好き? ~一杯で変わる日常の味~

月下花音

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第30話「ブレンドが紡ぐ、新しい物語ってこんな感じです」

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「今日こそ完璧なシナモンブレンドを~♪」

 美咲は朝からウキウキ。

 昨日智也くんと約束したシナモンブレンド。
 カウンターでくるくる回りながら、ボトルを並べる。

「えーっと、シナモンと...バニラと...あ、オレンジも」

 でも案の定。
 手が滑ってボトルがコロコロ。

「あわわわ~」

 慌てて拾い集めると、なぜか全然違う香りが混ざってる。

「あれ?これペパーミント?」

 首をかしげながら嗅いでみる。

「...でもこれはこれで爽やか~♪」

 結果オーライな美咲であった。

 ☕☕☕

「よし、今度こそ」

 美咲がコーヒーを淹れながら、横目でアロマボトルをチェック。

「シナモン、バニラ、オレンジ...あ、ジンジャーも」

 でも手が滑って、なぜかローズマリーもポトン。

「あれ~?」

 首をかしげながらも、とりあえずブレンド開始。

「まあ、きっと智也くんにぴったりになるはず~」

 美咲の天然ブレンド術は今日も健在。
 狙ったものと違うけど、なぜか毎回大成功。

「あ、智也くんの足音♪」

 窓の外を見ると、いつものスーツ姿の智也が歩いてくる。
 今日はなんだか足取りが軽やか。

「おはよう~♪」

 美咲が手を振ると、智也も照れ笑いで手を振り返す。

 ハチ公像も一緒に見守ってる気がする。

 ☕☕☕

「美咲さん~、おはようございます」

 智也が元気よく店に入ってくる。

 今日はいつもよりネクタイが緩くて、なんだか軽やか。

「あ、智也くん」

 美咲がにっこり笑うと、智也がポケットからノートを取り出す。

「昨日、ラベンダーのこと考えてたら、いろいろ思い出しちゃって」

 ノートには子供みたいな字で「公園のベンチ」って書いてある。

「わあ~、智也くんの字、可愛い♪」

「え、可愛いって...」

 智也の顔が真っ赤。

「あ、でも約束のシナモンブレンド、作っちゃいました~」

 美咲がディフューザーをオン。

 すると...なぜかスパイシーな香りが。

「あれ?」

 美咲が首をかしげる。

「シナモン入れたつもりだったんですけど~」

「でも、いい香りですね」

 智也が深呼吸すると、目がキラキラ。

「なんか...キャンプファイヤーの匂いみたい」

「キャンプファイヤー?」

「子供の頃、学校の遠足で」

 智也の表情がほころぶ。

「みんなでマシュマロ焼いて、夜通し話したんです」

 間。

「あの時、初めて『一人じゃない』って思えたかも」

「わあ~」

 美咲が手をぱちぱち。

「ジンジャーって友情の香りなんですよ~♪」

「友情の香り?」

「そうそう!智也くんの心が『友達に会いたい』って言ってるんです」

 美咲がバニラクッキーを差し出す。

「あ、本当だ」

 智也がスマホを取り出してポチポチ。

「急に友達にメッセージ送りたくなってきました」

「『久しぶり、みんなで集まらない?』...送信」

「やった~♪」

 美咲が嬉しそうに手を叩く。

「香りって、未来の扉も開いてくれるんです~」

「美咲さんって...」

 智也が言葉を探す。

「本当に魔法使いみたい」

「えへへ~、でも今日は失敗ブレンドだったのに」

「失敗?これが?」

 智也が驚く。

「シナモンのつもりだったんです~」

「でも、僕にはぴったりでした」

 二人で顔を見合わせて、くすくす笑う。

「じゃあ、約束の公園散歩、今から行きませんか?」

「え、今から?」

「はい♪ ハチ公さんにも挨拶して~」

 智也が窓の外のハチ公像に手を振る。
 美咲も一緒に手をひらひら。

「行きましょう~♪」

 ☕☕☕

 代々木公園のベンチ。
 二人は並んで座ってる。

 美咲は小さなアロマポーチをぶらぶら。
 智也は友達からの返信を待ちながら、そわそわ。

「あ、返事きた」

 智也のスマホがピロン。

「『おお、懐かしい!今度の土曜どう?』って」

「やった~♪」

 美咲が嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。

「香りの魔法、効いてますね~」

「本当ですね」

 智也がほっこり笑顔。

「美咲さんのおかげで、忘れてた気持ちを思い出せました」

「でも...」

「でも?」

「美咲さんと一緒にいる時間も、すごく楽しいんです」

 智也の頰がほんのりピンク。

「え~、私も~♪」

 美咲も頰を染めて、もじもじ。

「智也くんと香りのお話してると、時間があっという間で~」

「そうですね」

 間。

「なんか...特別な時間みたい」

 二人の距離が、ちょっとだけ近づく。

 秋風が葉っぱをひらひら舞わせて、まるで祝福してるみたい。

「あ、見て見て」

 美咲が落ち葉を拾い上げる。

「この葉っぱ、ハート型♪」

「本当だ」

 智也が微笑むと、美咲がその葉っぱを智也の手に乗せる。

「はい、プレゼント~♪」

「ありがとうございます」

 智也が大切そうに葉っぱを握る。
 美咲がくすくす笑う。

「今度は本物のシナモンブレンド、作りますからね~」

「楽しみにしてます」

「でも、失敗ブレンドも案外いいかも~♪」

「そうですね。予想外の発見があって」

 二人でベンチに座りながら、夕日を眺める。

 ハチ公像が遠くで見守ってくれてるみたい。

「美咲さん」

「はい?」

「今日、すごく楽しかったです」

「私も~♪」

「また...一緒に公園散歩しませんか?」

「はい!今度はお弁当持参で~♪」

「お弁当?」

「私の手作り♪...でも、お料理も天然なんです~」

「それも楽しみです」

 二人の笑い声が、公園にふわりと響く。

 ☕☕☕

 香りが紡いだ新しい物語は、まだ始まったばかり。

 でも、二人の心には確かに何かが芽生えてる。

 友情の香りが運んでくれた、小さな恋の予感。

(第30話完 次話へ続く)

 次回予告:
 香りが運んでくれた、偶然の出会いです

 #渋谷クロスカフェ #特別編 #公園デート #友情の香り #ジンジャーブレンド #恋の予感
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