【完結】迷惑だけど、離れたくない。~傲慢なエゴイストはグイグイくる君に焦がれる~

たるとタタン

文字の大きさ
4 / 7

四話 嫉妬

しおりを挟む
俺は陽に依存しているのだろうか。

傲慢な王様が、陽だまりのような平民に、知らず知らずのうちに寄りかかっていたのだ。

そのぬくもりがなければ、自分は凍えてしまうということに、気づきもしないで。

ある晴れた日の午後。

どうしても仕事に集中できず、気分転換に事務所を出た玲は、近くの公園のベンチに座って、ぼんやりと空を眺めていた。

その時、聞き慣れた明るい笑い声が耳に届いた。

ハッとして視線を向けると、公園の向かいにあるカフェのオープンテラスに、見間違えるはずのない姿があった。

陽だった。

しかし、その隣には、見知らぬ若い男が座っていた。

陽は、その男と親しげに語らい、屈託のない笑顔を向けている。そ

の笑顔は、かつて自分だけに向けられていたはずのものだった。

男が何か冗談を言ったのか、陽は楽しそうに男の肩を軽く叩いた。

その光景を見た瞬間、玲の胸の内側で、どす黒い何かが燃え上がった。

「気に入らない……」

思わず呟いた。――嫉妬。それ以外の何物でもない。

玲がこれまでほとんど感じたことのない、原始的で、暴力的な感情だった。

なぜ、あいつは笑っているんだ。

俺があれほど傷つけたというのに。

なぜ、俺以外の男に、そんな顔を見せるんだ。

お前のその笑顔は、その存在は、俺のものだったはずだ。

勝手な言い分だと、頭の片隅では分かっていた。

自分があいつを突き放したのだと。

彼が誰と何をしようと、自分にそれを咎める権利などない。

だが、理屈では抑えきれない激しい感情が、玲の全身を支配した。

今すぐあそこへ行って、陽の腕を掴み、自分の元へ連れ戻したい。あの男から、引き剥がしたい。

そんな衝動に駆られ、立ち上がりかけた時、陽がふとこちらに視線を向けた。

二人の視線が、数メートルの距離を隔てて、絡み合う。

陽の顔から、笑顔が消えた。

その瞳に浮かんだのは、驚きと、怯えと、そして深い悲しみの色だった。

彼はすぐに目を逸らすと、隣の男に何かを囁き、足早にカフェの店内へと消えていった。

残された玲は、その場に立ち尽くすことしかできなかった。

拒絶された。

陽のあの目に、はっきりと拒絶の色が見えた。

それは、玲が彼に投げつけた言葉が、取り返しのつかないほど深く彼を傷つけたという、紛れもない証拠だった。

胸を焼くような焦燥感。

陽を失うかもしれないという、今まで感じたことのない恐怖。

一ノ瀬玲は、人生で初めて、自分の傲慢さが招いた取り返しのつかない過ちに気づき、打ちのめされていた。

「お前は……俺のことが好きだったんじゃないのか……裏切りやがって」

自業自得だと分かっていても、陽に弄ばれた様な気持ちになった。

あの陽だまりを、自分の手で永遠に失ってしまうかもしれない。

その事実に、彼は耐えられそうもなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

率先して自宅警備員してたら宅配業者に両思い判定されてた話

西を向いたらね
BL
[配達員×実家暮らしニート] ・高梨悠斗 (受け) 実家住みのニート。常に家にいるため、荷物の受け取りはお手の物。 ・水嶋涼 (攻め) 宅急便の配達員。いつ荷物を届けても必ず出てくれる受けに対して、「もしかして俺のこと好きなのでは…?」となり、そのままズルズル受けの事が好きになる。

宮本くんと事故チューした結果

たっぷりチョコ
BL
 女子に人気の宮本くんと事故チューしてしまった主人公の話。  読み切り。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸Twitterもぜひ遊びに来てください🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

勇者パーティーを追放された「生きた宝箱」、無愛想な騎士団長に拾われて宝石のように愛でられる

たら昆布
BL
勇者パーティーを追放された魔法生物が騎士団長に拾われる話

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―

たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。 以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。 ​「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」 トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。 ​しかし、千秋はまだ知らない。 レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

処理中です...