7 / 23
倒錯 マルセル
しおりを挟む
マルセルの囁きは、悪魔の呪文のように甘く、ゆきの理性を溶かしていく。
彼が男だと知った衝撃も、騙されていたという怒りも、彼の舌がもたらす巧みな快感の前では、たちまち霧散してしまう。
秘められた花園を丁寧に、執拗に味わう彼の行為は、羞恥を通り越して、背徳的な熱をゆきの全身に巡らせた。
「あ……っ、ふ……マル、セル……さん……」
「そう、その声……。マルレーヌじゃなく、ちゃんと僕の名前を呼んでくれたね」
顔を上げたマルセルは、恍惚とした表情で笑う。
その口元は濡れて艶かしく光り、ゆきは目を逸らすことができない。
彼はゆきが着ている瑠璃色のドレスを愛おしそうに撫でた。
「こんなに綺麗なのに、汚してしまうのは可哀想だ。……でも、君が僕に乱されていく姿は、何よりも見たいな」
彼はドレスの背中の編み上げをゆっくりと解き始めた。
しかし、すべてを脱がせることはしない。まるで贈り物のリボンを解くように、肌を少しずつ、焦らすように覗かせていく。
露わになった背中に、彼の冷たい指先が走り、ゆきの身体がびくりと跳ねた。
「ふふ、感じやすいんだね。僕のマルレーヌが言っていた通りだ」
彼はわざと「マルレーヌ」の名前を出し、ゆきを混乱させる。
女友達に身体の秘密をすべて知られていたかのような錯覚。その倒錯した状況が、言いようのない興奮を掻き立てた。
マルセルはゆきをうつ伏せにさせると、その背中に何度も口づけを落とした。
うなじから、肩甲骨へ、そして腰のくびれへと。彼の唇が辿った道筋が、燃えるように熱い。
「カイは力で君を支配し、キースは狡猾さで君を堕とした。……じゃあ、僕はどうしようかな」
彼はゆきを仰向けに戻すと、その手を取って、自身の硬く熱を帯びた男性の象徴へと導いた。
「っ……!」
初めて触れる男の熱量に、ゆきの手が震える。
「怖い?」
「……」
「大丈夫。君が望むまで、僕は入らない。……君が、僕を欲しくてたまらなくなるまで、こうして愛撫してあげる」
それは、地獄の始まりだった。
マルセルは約束通り、それ以上を求めることはせず、再びゆきの身体を隅々まで探ることに集中し始めた。
彼は、まるで聖域に触れるかのように、ゆきの胸の谷間に顔を埋め、その肌の匂いを深く吸い込む。
そして、硬く尖った蕾の先端を、舌先でつつくように優しく刺激した。
「んぅ……っ、ぁ……や……」
「嫌じゃないくせに。こんなに可愛く尖らせて」
指先では決して味わえない、濡れた舌の生々しい感触。彼は決して強く吸ったりはしない。
ただ、優しく、しかし執拗に、快感の縁をなぞり続ける。
じりじりと焼かれるような焦ったさに、ゆきは彼の髪を掻きむしりたい衝動に駆られた。
「もっと……してほしい?」
「……ん……」
「だめ。まだ早いよ」
彼は悪戯っぽく笑うと、今度はその唇をゆきのお腹へと滑らせた。おへその周りを舌でなぞり、くすぐったさと甘い疼きでゆきの身体を悶えさせる。
そして、彼の指は、再び下着のレースを押し分け、すでに蜜で濡れそぼった花園へとたどり着いた。
「すごいな。僕が触るたびに、どんどん甘くなっていく」
彼は一本の指で入り口をなぞり、もう一本の指で、その上にある硬い蕾を優しく弾いた。二方向からの刺激に、ゆきの腰がびくんと大きく跳ねる。
「あ、あああっ! そこ、だめ……っ!」
「どうして? ここが一番好きなんだろう?」
マルセルの言う通りだった。
そこは、カイもキースも知らなかった、ゆきだけの秘密の場所。
それを、まるで最初から知っていたかのように、彼は的確に攻め立ててくる。
「マルレーヌがね、教えてくれたんだ。ゆき様はきっと、ここを優しくされるのがお好きだって」
女の自分と、男の自分が、まるで共犯者のように囁き合う。
その倒錯した言葉が、ゆきの最後の理性を焼き切った。
「も、むり……イく……っ!」
「まだだよ」
絶頂の寸前、マルセルはぴたりと動きを止めた。熱い奔流が行き場を失い、身体の内側で渦を巻く。
「……なんで……」涙目で訴えるゆきに、マルセルは苦しそうな、それでいて恍惚とした表情を向けた。
「君があまりに可愛いから……。僕も、もう、おかしくなりそうなんだ……」
彼の額には汗が滲み、その呼吸は荒くなっている。
ゆきを焦らし、悦ばせるはずの行為が、彼自身の我慢の限界を試していた。
彼の瞳は、先ほどまでの余裕を失い、純粋な雄の欲望でぎらぎらと輝いている。
「ねえ、ゆき……」
「もう、我慢できない……。君の中に、僕の全部を注ぎ込んで、ぐちゃぐちゃに壊してしまいたい……」
それは、もはや懇願だった。
あれほどゆきを翻弄していた男が、今はただ、受け入れてもらうことを乞い願っている。
その姿を見て、ゆきの中に、今まで感じたことのない感情が芽生えた。
憐憫、庇護欲、そして、この美しい男を自分の手で救ってあげたいという、倒錯した母性。ゆきは、震える手を伸ばした。
そして、苦しげに喘ぐ彼の頬を、そっと撫でた。
「……マルセル……さん……」
その名前を呼んだ瞬間。
マルセルの瞳から、最後の理性が消え失せた。
彼が男だと知った衝撃も、騙されていたという怒りも、彼の舌がもたらす巧みな快感の前では、たちまち霧散してしまう。
秘められた花園を丁寧に、執拗に味わう彼の行為は、羞恥を通り越して、背徳的な熱をゆきの全身に巡らせた。
「あ……っ、ふ……マル、セル……さん……」
「そう、その声……。マルレーヌじゃなく、ちゃんと僕の名前を呼んでくれたね」
顔を上げたマルセルは、恍惚とした表情で笑う。
その口元は濡れて艶かしく光り、ゆきは目を逸らすことができない。
彼はゆきが着ている瑠璃色のドレスを愛おしそうに撫でた。
「こんなに綺麗なのに、汚してしまうのは可哀想だ。……でも、君が僕に乱されていく姿は、何よりも見たいな」
彼はドレスの背中の編み上げをゆっくりと解き始めた。
しかし、すべてを脱がせることはしない。まるで贈り物のリボンを解くように、肌を少しずつ、焦らすように覗かせていく。
露わになった背中に、彼の冷たい指先が走り、ゆきの身体がびくりと跳ねた。
「ふふ、感じやすいんだね。僕のマルレーヌが言っていた通りだ」
彼はわざと「マルレーヌ」の名前を出し、ゆきを混乱させる。
女友達に身体の秘密をすべて知られていたかのような錯覚。その倒錯した状況が、言いようのない興奮を掻き立てた。
マルセルはゆきをうつ伏せにさせると、その背中に何度も口づけを落とした。
うなじから、肩甲骨へ、そして腰のくびれへと。彼の唇が辿った道筋が、燃えるように熱い。
「カイは力で君を支配し、キースは狡猾さで君を堕とした。……じゃあ、僕はどうしようかな」
彼はゆきを仰向けに戻すと、その手を取って、自身の硬く熱を帯びた男性の象徴へと導いた。
「っ……!」
初めて触れる男の熱量に、ゆきの手が震える。
「怖い?」
「……」
「大丈夫。君が望むまで、僕は入らない。……君が、僕を欲しくてたまらなくなるまで、こうして愛撫してあげる」
それは、地獄の始まりだった。
マルセルは約束通り、それ以上を求めることはせず、再びゆきの身体を隅々まで探ることに集中し始めた。
彼は、まるで聖域に触れるかのように、ゆきの胸の谷間に顔を埋め、その肌の匂いを深く吸い込む。
そして、硬く尖った蕾の先端を、舌先でつつくように優しく刺激した。
「んぅ……っ、ぁ……や……」
「嫌じゃないくせに。こんなに可愛く尖らせて」
指先では決して味わえない、濡れた舌の生々しい感触。彼は決して強く吸ったりはしない。
ただ、優しく、しかし執拗に、快感の縁をなぞり続ける。
じりじりと焼かれるような焦ったさに、ゆきは彼の髪を掻きむしりたい衝動に駆られた。
「もっと……してほしい?」
「……ん……」
「だめ。まだ早いよ」
彼は悪戯っぽく笑うと、今度はその唇をゆきのお腹へと滑らせた。おへその周りを舌でなぞり、くすぐったさと甘い疼きでゆきの身体を悶えさせる。
そして、彼の指は、再び下着のレースを押し分け、すでに蜜で濡れそぼった花園へとたどり着いた。
「すごいな。僕が触るたびに、どんどん甘くなっていく」
彼は一本の指で入り口をなぞり、もう一本の指で、その上にある硬い蕾を優しく弾いた。二方向からの刺激に、ゆきの腰がびくんと大きく跳ねる。
「あ、あああっ! そこ、だめ……っ!」
「どうして? ここが一番好きなんだろう?」
マルセルの言う通りだった。
そこは、カイもキースも知らなかった、ゆきだけの秘密の場所。
それを、まるで最初から知っていたかのように、彼は的確に攻め立ててくる。
「マルレーヌがね、教えてくれたんだ。ゆき様はきっと、ここを優しくされるのがお好きだって」
女の自分と、男の自分が、まるで共犯者のように囁き合う。
その倒錯した言葉が、ゆきの最後の理性を焼き切った。
「も、むり……イく……っ!」
「まだだよ」
絶頂の寸前、マルセルはぴたりと動きを止めた。熱い奔流が行き場を失い、身体の内側で渦を巻く。
「……なんで……」涙目で訴えるゆきに、マルセルは苦しそうな、それでいて恍惚とした表情を向けた。
「君があまりに可愛いから……。僕も、もう、おかしくなりそうなんだ……」
彼の額には汗が滲み、その呼吸は荒くなっている。
ゆきを焦らし、悦ばせるはずの行為が、彼自身の我慢の限界を試していた。
彼の瞳は、先ほどまでの余裕を失い、純粋な雄の欲望でぎらぎらと輝いている。
「ねえ、ゆき……」
「もう、我慢できない……。君の中に、僕の全部を注ぎ込んで、ぐちゃぐちゃに壊してしまいたい……」
それは、もはや懇願だった。
あれほどゆきを翻弄していた男が、今はただ、受け入れてもらうことを乞い願っている。
その姿を見て、ゆきの中に、今まで感じたことのない感情が芽生えた。
憐憫、庇護欲、そして、この美しい男を自分の手で救ってあげたいという、倒錯した母性。ゆきは、震える手を伸ばした。
そして、苦しげに喘ぐ彼の頬を、そっと撫でた。
「……マルセル……さん……」
その名前を呼んだ瞬間。
マルセルの瞳から、最後の理性が消え失せた。
47
あなたにおすすめの小説
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる