食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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1章 食育に至った経緯

04 提案、受付嬢ならぬ受付坊ちゃん

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「……そんなにマズイか? オレはめっちゃ美味しいんだけど」
「うむ。ワシもこれぐらいで丁度よいぞ」
「僕には100%合いませんでした! 味が、味がない、なさすぎる!」

 残すわけにもいかず、なんとか口に無理やり詰め込んで完食。
 そのまま、これ以上なにかを言う前に店を出た僕たち。
 あぁ……故郷の味が恋しいんだけど。

「チカ、キミの食生活っていったい……」
「さっきもお話した通りです。家庭料理に飢えているのは認めますけど」

 コンビニ飯が結果的に多めだけど、そればっかりじゃない。
 部活帰りに、みんなとハンバーガーやラーメン食べたり。
 夏だったらアイスクリームを食べたりもするし。
 でも、そこまで変なものを食べているとは思えないんだよね。
 ごくごく、フツーの高校生男子が、普段通りに口にするものばかり。

「うん、僕は正常。普通に平凡な食生活」

 そう宣言したのだが、リベールさんとギルマスさんは互いの顔を見合わせ……

「どう思います?」
「んー……判断に困るな。リベール、心当たりは?」
「1つだけ。すいません、ギルドの調理場、借りられますか」
「それはかまわんが……キミの拠点にも台所ぐらいあるだろうに」
「いやー、確認のために量産したいなと」
「あいわかった。好きなだけ使いなさい」
「恩に着ます、ギルマスさん、というわけで!」

 なにが、というわけなのだろうか。
 完全に僕の意見を無視する気満々なやり取りを経て、リベールさんはこちらを見た。

「行こうか、ギルマスさんが統括する『冒険者ギルド』へ」
「待って。ギルマスさんの本名なのは理解したけど、職業もギルマス!?」

 新しいツッコミどころだけが、増えてゆく。
 あんまりな状況に混乱する僕の手を引き、リベールさんたちは冒険者ギルドへと向かったのであった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さて、リベールが準備している間に、キミの今後について相談しようか」
「あ、はい。餓死しそうなので帰りたいです」
「うん、潔いぐらい素直で実によろしい」

 今回ばかりは、自炊できない自分を恨む。
 卵かけご飯があれば、ぎりぎり生き残れたかもしれないけどさ。
 それができるの、日本だけだって僕、ちゃんと理解しているからね!?
 異世界にまで卵の消毒技術があるなんて、1ミリも期待していないから。

「となるとだ、戻る方法と当面の生活だが……」
「やっぱり冒険者になって、あちこち旅した方が良いですよね」

 ただの高校生である僕が、冒険なんてできるのか?
 何かすごい能力でもあれば行けるかもだけど、そんな感じは一切ないしな……

「いや、それは悪手だチカくん。実に非効率かつ分の悪い賭けが過ぎるぞ」
「と、いいますと?」
「まず簡単なダンジョンでも踏破には2~3日は要する」

 目的地へ向かうのに数日。
 ダンジョン攻略で2~3日。
 さらに戻って、入手したお宝の鑑定。
 これを毎回、コンスタントに達成できたとしても、1つの冒険で1週間以上かかる。

「正直、ハズレである場合の方が圧倒的に多いだろう。それを何度も繰り返して、いつキミは帰ることができる?」

 う、うわああ!?
 何十年もかかりそうというか、かかる、絶対に。
 それじゃあ僕、完全に餓死確定!?
 もしくは、この世界にある味がしなさすぎる、クソマズ飯に慣れて生きていくしかない!?
 ……それならいっそ、自分で食事改革を……
 あ、ダメだ。あくまでそれができるのは最低条件、料理上手、がいる。

「どっちに転んでも地獄。いっそ死にたい」
「落ち着きなさい、チカくん。あくまでこれは、キミが1人で何とかしようとした場合だ」
「僕が1人?」
「考えてごらん。ここは冒険者ギルドであり、ダンジョンに赴くやつらがワラワラいる」

 はっ! そうか!
 別に僕がダンジョンへ行かなくても、冒険者さんたちが攻略するわけで。

「彼らが持ち帰った宝物が必要であれば、交渉して買い取りとかできちゃいませんか!?」
「可能じゃな。もちろん、相応の金額こそ必要だがな」

 うん、それなら効率がいい。
 たくさん冒険者さんたちがいるんだから、彼らがほうぼうに散ってダンジョン攻略をする。
 僕はその吉報を待ちつつ、お金を稼げばいい!

「となると、働ける場所を探さないと……」
「そこで提案。我がギルドで働かないか? アイテムの鑑定も仕事のうち、すぐに欲しいものの情報が手に入る」
「おおおお!?」

 それはなんて、至れり尽くせり!
 ……なんだけど。

「いいんですか? というか、どうしてそこまで……」
「なーに、ダメな親を持つ者同士じゃないか。仲よくしよう」

 ギルマスさん、めっちゃいい人……!

「どうかな? うちのギルドで働かないかい? 衣住も保証するよ、職員用の寄宿舎もあるし」
「ぜひ、よろしくお願いします!」

 よし! これなら、ワンチャン餓死回避で元の世界に戻れるかもしれない。
 希望が見えてきた!
 ……あれ? でも、何気に「食」は保証されていないような。
 僕の反応から、ある意味は正しいからいいか。

「うむ、ぜひとも受付嬢として頑張ってくれたまえ」
「はい!……はい?」

 うけつけ、じょう?
 えーっと、ギルマスさんがつけているネックレスの翻訳機能、壊れた?
 聞こえてはならない単語が、僕の耳に届いた気がするんだけど。

「わ、わんもあぷりーず」
「もう一度? で、あっているのかな。受付嬢、キミの場合は坊ちゃんでもあるかな?」

 わー、わー、わー!?
 聞き間違えじゃないし、翻訳誤りでもないんだけどー!?
 え、なに、まさか……

「じょ、女装してとかじゃないですよね? ふっつーのギルド職員的な」
「それがのぉ……我がギルドは慢性的な受付嬢不足での」
「えぇぇ……」
「なかなか手のかかる冒険者も多くて。そこで、キミには最前線で頑張ってもらいたい。もちろん給料は弾もう」

 普通の雑務とかそういうのじゃなくて!?
 これ、僕になんの利点が……

「冒険者は、圧倒的に男性が多い」

 うん、それはイメージとしてある。

「男にモノを強請るなら、男より女」

 ……う、うん。

「もちろん、男でも強請れるが……異世界から来たとか、毎回事情説明が大変じゃろうて」
「あー……」

 タイパとコスパの視点で、女であった方が楽なのか。
 そうだよな、冒険者が圧倒的に男が多いなら、かわいくおねだりできる方が良い。
 で、女の方が油断もするから、やりやすい。
 もちろん、女性の冒険者がいないわけじゃないけど……

(いざとなれば、男に戻って自然と会話すればいいだけだしな、うん)

 つまり、僕の羞恥心さえなんとかなればよいわけで。

「餓死したくないので、やります!」
「うむ、よろしく頼むよ、チカくん」

 がっちりと握手をする、僕とギルマスさん。
 シミュレーションゲームが得意だし、受付嬢業務もなんとかなるはず。
 だいたい、ゲームと同じ感じになるだろうし。
 うん、なんとかなるさ、きっと!

「話が終わったかー? チカ、ちょっとこっちに来てくれ」
「リベールさん?」

 丁度よいタイミングで、今まで不在だったリベールさんが戻ってきた。
 彼は満面の笑みを浮かべつつ、

「キミが食べられるものを用意した! 食べてくれ!」
「……は?」

 なにごと!?
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