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1章 食育に至った経緯
05 リベールの手料理
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「さぁ、チカ! 遠慮せずにどうぞ!」
「……あの、僕、食欲がミリもわかないんですけど」
目の前に並べられたのは、本来なら大喜びしたいメニュー。
大人も、子供も、大好きなカレーライスだった。
ちょっと、想像しているモノより、しゃばしゃばしているけど。
「スパイスカレー、と言った方が良いのかな? これ」
「その通り! 多種多様のスパイスを使った、オレ特製カレーだ」
え? スパイスって存在するのか、この世界。
味が全然しないから、むしろ逆にないものだとばかり。
……けど、スパイスだけあっても意味ないんだよな。
(スパイスカレーって、塩みたいな調味料がないとまともに味がしなかったはず)
だって、スパイスそのものには味がないんだよ。
風味付けというか、カレーっぽい香りになるだけというか。
「というか、なんで3皿も……」
「チカの好みがどれか分からないから、少しずつ味変をしてみてた」
見た目の違いはないけど、そうなのか。
う、うーん、スパイスのおかげで少し食欲は戻ったかも。
「ちなみに、おすすめの食べ方は左から順番だ」
「わ、わかった。いただきます」
まずは左側の皿にあるカレーをひと口。
……えーっと
「やっぱり無味です」
口の中にスパイスの風味だけが広がり、味が全くしない。
玉ねぎとか、お肉も入っているのに……なにをどう頑張ったらこうなるんだよ。
ダメだ、脳内食欲ゲージがめっちゃ下がっている。
「そっか。じゃあ次、真ん中どうぞ」
「うえぇぇ」
うわぁ、いやな顔もせずに、笑顔のままなリベールさんの圧がやばい。
顔が整っているせいもあるんだろうけど、余計になんというか、有無を言わせないというか。
カリスマ性? なのかな。
いや、僕に向かって発揮するもんじゃないか。
「ほらほら、次は気に入るかもだぜ」
「……わかりました! こっちも食べます!」
意を決して、真ん中のカレーをひと口。
……って、あれ?
「ん? ちょっと味がする?」
うん、今までと比べたら断然いい。
限りなく無味に近いけど、味があるっぽいなー、って、わかるというか。
「そっかそっか。じゃあ最後、右の皿をどうぞ」
何か納得した表情を浮かべつつ、リベールさんは次を促してくる。
じゃあ、右のやつを……
「ッ! 今までで一番マシです!」
「なるほどな。うん、だいたいわかってきた」
というか、調味料の違いなのかな。
僕の口に合うものを、彼が探してきてくれた、とか?
(もしそうなら、ギルマスさんが言うようにお人好し、なのかも)
おいしい、ぐらい言えば良かったかな。
と、少し申し訳なさを覚えていると……
「よしっ、これで決定だな」
「なにをでしょうか」
「チカ、キミの食生活は当面の間、オレが管理する!」
………………………………………???
唐突なリベールさんの宣言に、僕は頭上に疑問符を大量発生させる。
「えっと、どういう経緯でそうなったんで、しょうか」
「今回の感想でわかった。正直、こんな状態のキミを放置するのはオレの信条が許さない!」
信条!?
え、今までの中に、リベールさんのそれがわかる瞬間、ありましたっけ。
お人よし、ぐらいしかなかったよ!?
「絶対に、キミにこの世界の食事で『美味しい!』と言わせて見せる!」
……あ、ちょっとわかった。
これあれだ。
料理漫画でよくある、異世界の人に自国の料理を『うまい!』って言わせる系のやつ。
今の僕は、それの食べさせられる異世界人の立場なんだと思う。
「満足させるには、餓死されてはいけないしな。というわけで! オレがキミを全力で食育する!」
「いやいや、お気持ちだけで結構ですから!」
ほら、人間、水だけで最低1週間は生き残れるって実績があるし。
つまりは、週1でマズイ食事を我慢して食べるだけで、なんとかなるはず。
リベールさんは冒険者なわけだし、むしろダンジョンへ行ってもらった方がいいといいますか。
「遠慮はしなくていい! 大丈夫、キミのことはオレが絶対に守る!」
あぁ、僕が女の子だったらキュンとするセリフが聞こえてきた。
しかしながら、現状は「マズイより1歩マシな料理を毎日食べさせる」宣言なわけでして。
「嫌です! 餓死はしたくないけど、美味しくないごはんを毎日食べる苦行も嫌です! 拷問です!」
「本当に心配しなくていいんだ。オレは、チカが心配なだけなんだ」
ダメだ、話がかみ合わない。
彼の中では、僕を食育するのは確定事項、テコでも揺るがないという状況。
つまり、ここで僕が取れる行動は……
「……ま、まずい料理が1回でもあったら、全力で拒否して逃亡します」
妥協案を出すしかなかった。
本音を言っていいですか?
女装するより、食育のほうがはるかに嫌。
この感想を持つ異世界転移者は、後にも、先にも、僕しかいないだろう。
これだけは確信できる事実であった……
「ああああ……嫌だ。餓死はしたくないけど、したくないんだけど……!」
こうなったら、1日でも早く元の世界に戻らねば。
決意を新たにした僕の、異世界生活はこうして幕を開けたのであった。
「……あの、僕、食欲がミリもわかないんですけど」
目の前に並べられたのは、本来なら大喜びしたいメニュー。
大人も、子供も、大好きなカレーライスだった。
ちょっと、想像しているモノより、しゃばしゃばしているけど。
「スパイスカレー、と言った方が良いのかな? これ」
「その通り! 多種多様のスパイスを使った、オレ特製カレーだ」
え? スパイスって存在するのか、この世界。
味が全然しないから、むしろ逆にないものだとばかり。
……けど、スパイスだけあっても意味ないんだよな。
(スパイスカレーって、塩みたいな調味料がないとまともに味がしなかったはず)
だって、スパイスそのものには味がないんだよ。
風味付けというか、カレーっぽい香りになるだけというか。
「というか、なんで3皿も……」
「チカの好みがどれか分からないから、少しずつ味変をしてみてた」
見た目の違いはないけど、そうなのか。
う、うーん、スパイスのおかげで少し食欲は戻ったかも。
「ちなみに、おすすめの食べ方は左から順番だ」
「わ、わかった。いただきます」
まずは左側の皿にあるカレーをひと口。
……えーっと
「やっぱり無味です」
口の中にスパイスの風味だけが広がり、味が全くしない。
玉ねぎとか、お肉も入っているのに……なにをどう頑張ったらこうなるんだよ。
ダメだ、脳内食欲ゲージがめっちゃ下がっている。
「そっか。じゃあ次、真ん中どうぞ」
「うえぇぇ」
うわぁ、いやな顔もせずに、笑顔のままなリベールさんの圧がやばい。
顔が整っているせいもあるんだろうけど、余計になんというか、有無を言わせないというか。
カリスマ性? なのかな。
いや、僕に向かって発揮するもんじゃないか。
「ほらほら、次は気に入るかもだぜ」
「……わかりました! こっちも食べます!」
意を決して、真ん中のカレーをひと口。
……って、あれ?
「ん? ちょっと味がする?」
うん、今までと比べたら断然いい。
限りなく無味に近いけど、味があるっぽいなー、って、わかるというか。
「そっかそっか。じゃあ最後、右の皿をどうぞ」
何か納得した表情を浮かべつつ、リベールさんは次を促してくる。
じゃあ、右のやつを……
「ッ! 今までで一番マシです!」
「なるほどな。うん、だいたいわかってきた」
というか、調味料の違いなのかな。
僕の口に合うものを、彼が探してきてくれた、とか?
(もしそうなら、ギルマスさんが言うようにお人好し、なのかも)
おいしい、ぐらい言えば良かったかな。
と、少し申し訳なさを覚えていると……
「よしっ、これで決定だな」
「なにをでしょうか」
「チカ、キミの食生活は当面の間、オレが管理する!」
………………………………………???
唐突なリベールさんの宣言に、僕は頭上に疑問符を大量発生させる。
「えっと、どういう経緯でそうなったんで、しょうか」
「今回の感想でわかった。正直、こんな状態のキミを放置するのはオレの信条が許さない!」
信条!?
え、今までの中に、リベールさんのそれがわかる瞬間、ありましたっけ。
お人よし、ぐらいしかなかったよ!?
「絶対に、キミにこの世界の食事で『美味しい!』と言わせて見せる!」
……あ、ちょっとわかった。
これあれだ。
料理漫画でよくある、異世界の人に自国の料理を『うまい!』って言わせる系のやつ。
今の僕は、それの食べさせられる異世界人の立場なんだと思う。
「満足させるには、餓死されてはいけないしな。というわけで! オレがキミを全力で食育する!」
「いやいや、お気持ちだけで結構ですから!」
ほら、人間、水だけで最低1週間は生き残れるって実績があるし。
つまりは、週1でマズイ食事を我慢して食べるだけで、なんとかなるはず。
リベールさんは冒険者なわけだし、むしろダンジョンへ行ってもらった方がいいといいますか。
「遠慮はしなくていい! 大丈夫、キミのことはオレが絶対に守る!」
あぁ、僕が女の子だったらキュンとするセリフが聞こえてきた。
しかしながら、現状は「マズイより1歩マシな料理を毎日食べさせる」宣言なわけでして。
「嫌です! 餓死はしたくないけど、美味しくないごはんを毎日食べる苦行も嫌です! 拷問です!」
「本当に心配しなくていいんだ。オレは、チカが心配なだけなんだ」
ダメだ、話がかみ合わない。
彼の中では、僕を食育するのは確定事項、テコでも揺るがないという状況。
つまり、ここで僕が取れる行動は……
「……ま、まずい料理が1回でもあったら、全力で拒否して逃亡します」
妥協案を出すしかなかった。
本音を言っていいですか?
女装するより、食育のほうがはるかに嫌。
この感想を持つ異世界転移者は、後にも、先にも、僕しかいないだろう。
これだけは確信できる事実であった……
「ああああ……嫌だ。餓死はしたくないけど、したくないんだけど……!」
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決意を新たにした僕の、異世界生活はこうして幕を開けたのであった。
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