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7章 大規模異世界召喚
07 決着
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「リベール、この人は……」
「チカ。あぁ、叔父上が作った母上の偽物だ」
うわ、やっぱり。
めっちゃひどいことするな、エスピオン王弟殿下。
亡くなった母親とそっくりな存在を盾とか……
あー、僕自身はわからないけど、ゲームとかの感覚ならわかる。
「それに。母上は確かに美しかったが、それはディルが生まれるまでのこと」
「え? あ、あー!」
そうだった。
ディルの年齢は15歳ってことは、第一次の頃じゃん。
で、そこからこの国の食事文化が一気に異世界に浸食。
数年かけて、生活習慣病が発症して……だったわけで。
「私の記憶にある母上は、ふくよかでしたね」
「俺様も同じく」
……なるほど。
肖像画か何かで、昔の母親の姿は知っているので見間違えはしない。
けれども、見慣れている方の姿は、また別という。
(僕でいうところの、両親が若い頃の写真を見た時の感覚か……)
面影はあるけど、って感じね。
それでも、母親は母親だから……
「ムカつきはしたでしょ?」
「まぁな。けど、おかげでまだ何とか出来た」
剣を鞘に収めつつ、リベールは顔を伏せる。
そのまま、ゆっくりと倒れた亡き母に似た存在に一礼した。
「あんまり、無理しなくていいよ」
「……大丈夫だ。国母であった母上の」
「だーかーら! それ! 王子様的な思考!」
僕はリベールの背中を軽く叩く。
「今は、普通に、ただの息子としての感情だけでいいって!」
「……チカ」
「少なくとも、ここにはそれをとがめる人はいないから」
それを聞いて、リベールの目から涙がこぼれる。
「………偽物だと、分かっていても……母上を斬りたくはなかった」
「うん。それでいいんだよ、リベール。普通の親子なら絶対そうだから」
うらやましいよな、うん。
普通の親子関係ってさ。
本当なら、この中では僕が一番それを享受していても不思議じゃないのに。
「本気で険悪な親子じゃなきゃ、その気持ちは当然だよ」
「……ッ」
突然、リベールに抱き着かれる。
僅かに肩が震えているのを見て、僕は彼の背中に手を回し軽く叩く。
ふと、視界に彼の母親の姿をした何かと目が合った、気がする。
少しだけ悲しげに、それでも、嬉しそうな雰囲気は……
(まさか、体は違うだけで……)
その仮説に対する答え合わせは、出来なかった。
まばたきをした次の瞬間、彼女の体はサラサラと砂のように溶けて消えたのだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
いろいろあって、今回の第二次大規模異世界召喚を無事阻止することが出来た。
いやぁ、大変だったよ。
「はい、チカ。あーん」
「……リベールさん? だいぶ怒ってますよね? なにこの罰ゲーム」
「いいから食べろ。はい、あーん」
現在、僕はどこにいるかって?
自室のベッドですよ!
いやほら、右腹を勢いよく貫通されたじゃん?
いくら魔術で回復したとはいえ、一度負った怪我を体は覚えているわけで。
ベッドの住人強制中である。
「……アフェク! ディル! 静観してないで助けてー!」
「どうぞどうぞ、おかまいなく。俺様、馬には蹴られたくないんだわ」
「ディル兄様に同じく」
というか、なんで僕の部屋にしれっと3兄弟が集合しているんだよ!
おまけにリベールに至っては、弟たちガン無視で僕に果物を差し出してるし。
リンゴっぽいね! 正式名称は何か知らないけど、異世界のリンゴ!
「チーカー?」
「あー……もー、はい! 食べます!」
ぱくっ、と一口。
うん、みずみずしくておいしいねー(棒読み)
甘味がもうちょっと欲しいと思ったのは、やはり僕の馬鹿舌ゆえか。
クッキーの件もあるから、今後は本当に、リベール作の料理以外は気を付けよう。
「それでさ、あの後どうなったわけ?」
「叔父上は今頃、破壊と再生の繰り返しで発狂中だろう」
「素直に喋れば解放されるぞ。と、ラテジア殿たちを筆頭に洗脳中です」
言い方……
あの後、エスピオン王弟殿下は国王陛下の前に、無事突き出された。
そのまま罪状を読み上げられて、しかるべき裁きを内密に受けた形である。
さっすがに国民全員に通達できる内容でもないし、ね。
「問題こそ山積みだが、まぁ今回はこれで一件落着だろう。はい、あーん」
「……リベール。まじめに話そうよ。はむっ」
とはいえ、彼の言う通り問題はまだまだある。
けど、それは未来の僕や彼らが頭を悩ませることであるわけで。
今は素直に、怪我の治療に専念しなければならないのが現状だ。
「いや、普通に自分で食べるって――――!」
「チカ。あぁ、叔父上が作った母上の偽物だ」
うわ、やっぱり。
めっちゃひどいことするな、エスピオン王弟殿下。
亡くなった母親とそっくりな存在を盾とか……
あー、僕自身はわからないけど、ゲームとかの感覚ならわかる。
「それに。母上は確かに美しかったが、それはディルが生まれるまでのこと」
「え? あ、あー!」
そうだった。
ディルの年齢は15歳ってことは、第一次の頃じゃん。
で、そこからこの国の食事文化が一気に異世界に浸食。
数年かけて、生活習慣病が発症して……だったわけで。
「私の記憶にある母上は、ふくよかでしたね」
「俺様も同じく」
……なるほど。
肖像画か何かで、昔の母親の姿は知っているので見間違えはしない。
けれども、見慣れている方の姿は、また別という。
(僕でいうところの、両親が若い頃の写真を見た時の感覚か……)
面影はあるけど、って感じね。
それでも、母親は母親だから……
「ムカつきはしたでしょ?」
「まぁな。けど、おかげでまだ何とか出来た」
剣を鞘に収めつつ、リベールは顔を伏せる。
そのまま、ゆっくりと倒れた亡き母に似た存在に一礼した。
「あんまり、無理しなくていいよ」
「……大丈夫だ。国母であった母上の」
「だーかーら! それ! 王子様的な思考!」
僕はリベールの背中を軽く叩く。
「今は、普通に、ただの息子としての感情だけでいいって!」
「……チカ」
「少なくとも、ここにはそれをとがめる人はいないから」
それを聞いて、リベールの目から涙がこぼれる。
「………偽物だと、分かっていても……母上を斬りたくはなかった」
「うん。それでいいんだよ、リベール。普通の親子なら絶対そうだから」
うらやましいよな、うん。
普通の親子関係ってさ。
本当なら、この中では僕が一番それを享受していても不思議じゃないのに。
「本気で険悪な親子じゃなきゃ、その気持ちは当然だよ」
「……ッ」
突然、リベールに抱き着かれる。
僅かに肩が震えているのを見て、僕は彼の背中に手を回し軽く叩く。
ふと、視界に彼の母親の姿をした何かと目が合った、気がする。
少しだけ悲しげに、それでも、嬉しそうな雰囲気は……
(まさか、体は違うだけで……)
その仮説に対する答え合わせは、出来なかった。
まばたきをした次の瞬間、彼女の体はサラサラと砂のように溶けて消えたのだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
いろいろあって、今回の第二次大規模異世界召喚を無事阻止することが出来た。
いやぁ、大変だったよ。
「はい、チカ。あーん」
「……リベールさん? だいぶ怒ってますよね? なにこの罰ゲーム」
「いいから食べろ。はい、あーん」
現在、僕はどこにいるかって?
自室のベッドですよ!
いやほら、右腹を勢いよく貫通されたじゃん?
いくら魔術で回復したとはいえ、一度負った怪我を体は覚えているわけで。
ベッドの住人強制中である。
「……アフェク! ディル! 静観してないで助けてー!」
「どうぞどうぞ、おかまいなく。俺様、馬には蹴られたくないんだわ」
「ディル兄様に同じく」
というか、なんで僕の部屋にしれっと3兄弟が集合しているんだよ!
おまけにリベールに至っては、弟たちガン無視で僕に果物を差し出してるし。
リンゴっぽいね! 正式名称は何か知らないけど、異世界のリンゴ!
「チーカー?」
「あー……もー、はい! 食べます!」
ぱくっ、と一口。
うん、みずみずしくておいしいねー(棒読み)
甘味がもうちょっと欲しいと思ったのは、やはり僕の馬鹿舌ゆえか。
クッキーの件もあるから、今後は本当に、リベール作の料理以外は気を付けよう。
「それでさ、あの後どうなったわけ?」
「叔父上は今頃、破壊と再生の繰り返しで発狂中だろう」
「素直に喋れば解放されるぞ。と、ラテジア殿たちを筆頭に洗脳中です」
言い方……
あの後、エスピオン王弟殿下は国王陛下の前に、無事突き出された。
そのまま罪状を読み上げられて、しかるべき裁きを内密に受けた形である。
さっすがに国民全員に通達できる内容でもないし、ね。
「問題こそ山積みだが、まぁ今回はこれで一件落着だろう。はい、あーん」
「……リベール。まじめに話そうよ。はむっ」
とはいえ、彼の言う通り問題はまだまだある。
けど、それは未来の僕や彼らが頭を悩ませることであるわけで。
今は素直に、怪我の治療に専念しなければならないのが現状だ。
「いや、普通に自分で食べるって――――!」
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