ゾンビが蔓延る世界で必要なのは貴族令嬢としてのマナー?いいえ、戦闘力です。

うえだ

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7話

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ダンスが終わってアレンにエスコートされながらバルコニーへと向かうグレイシア。
バルコニーは誰もおらず、静かな空間が流れていた。

「グレイシア嬢。先程はありがとう。私は噂や身分で貶めようとする此処がずっと嫌だったんだ。そんな人たちにも関わり合いたくなくてずっと素っ気ない態度を取っていた自覚もある。そんな時にグレイシア嬢だけが私の事をあんな風に言ってくれて…凄く嬉しかったし…たった1人で大人数に立ち向かうそんな君が気高くて誰よりも綺麗だった」
「そ、そんなこと…」

べた褒めされてる…恥ずかしい…!!
グレイシアは真っ赤な顔を見せまいと俯かせて首を振った。

「謙遜しないで。1人であんな事はなかなか出来ない。そんな君に一目惚れしたと言った君は嫌な気持ちになるかな?」
「え…?い、いえ、そんな、嫌な気持ちだなんて…」


一目惚れ?
今そう言って下さったの?
なら、私もちゃんと言うべきだわ


「私は元々アレン様にお会いしたかったのです。お強いとお噂は聞いていたので…そうしたらその…ものすごくお顔も好みですし紳士ですし…私も一目惚れしたようなものですわ…」
「グレイシア嬢…凄く嬉しいよ。この見た目で嫌いな人達が寄ってくるのも嫌だったが、グレイシア嬢が好みだと言ってくれるならこの見た目で良かったかな…」


アレンは優しく笑う。
アレン様は私にだけ特別に接して下さって居るんだわ。
なんて嬉しいこと。
結婚どころかお付き合いでさえ諦めていた私になんて素敵な出会いなんでしょう。

「結婚と婚約を前提にお付き合いして頂けますか?」


アレンは跪いてグレイシアの白い手を取って愛を乞うた。
その姿はまるで物語の王子様のようだった。

「えぇ、是非よろしくお願い致します」


もちろんグレイシアは満面の笑みで応えた。

「嬉しいよ。近々ユール家当主様に婚約の話をしよう」
「まさかわたくしが婚約するだなんて思ってもみませんでしたわ」

グレイシアはくすくすと鈴が転がるような声で笑った。
そんな美しくて可愛らしい少女を目の前にアレンは手を出さない様にグッと堪えた。


「私もだよ。…グレイシアでも本当にいいの?辺境に嫁ぐ事になるけど…ユール家は娘のグレイシアだけでしょう?それに令嬢は辺境には来たがらない。今は特に命の危険があるしね。勿論グレイシアの事は守るけれど」

アレンは眉を下げながら少し迷った様に言った。
グレイシアが辺境に嫁ぐとユール家は跡取りがいなくなってしまう。
それに辺境の地は危険だ。
ご令嬢が喜んで来る場所ではない。
それを踏まえての言葉だったが、不安そうな表情をするアレンとは違い、グレイシアは目をぱちくりとさせた後緩やかに笑った。


「わたくし、そもそも誰とも結婚するつもりありませんでしたの。女侯爵にでもなるつもりだったんですけどね…両親は結婚して欲しいみたいで…最悪、相手は誰でもいいから結婚してとまで言われていましたの。跡取りは遠縁の親戚を養子にするでもわたくし達の息子でも良いのです。それともう一つの辺境の地は令嬢に危険って云うのはわたくしに関しては全く問題ございませんわ!」


グレイシアは満面の笑みで2つの問題点を答えた。
そう、辺境の地に行く事は王家の剣である私にとってまっっったく問題ない。
寧ろ、アレン様の背中を守るつもりなのだけれども。


「後継問題は分かったけど、辺境の地に行く事が全く問題ないっていうのは…?その、分かっているかとは思うんだが、ゾンビが居る場所だよ?」
「えぇ、存じておりますわ。アレン様が守っているから此処は平和なのですから。わたくしの噂は先程聞いたでしょう?」
「あぁ…変わり者令嬢、野蛮な令嬢…だったかな?」
「えぇ、それには理由がございまして…」

グレイシアが話を続けようとしたその時、ホールから「きゃー!!」「いやぁー!!」と叫び声と共にグラスの落ちる音、周りが走る音が聞こえた。
何事かと、グレイシアとアレンはホールを見渡した。
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