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2 誰の所為だ?!
しおりを挟む自邸に戻った俺は、ぐったりと居間のソファーに横たわっていた。
行儀が悪いが許して欲しい。疲れた……主に精神的に。
そこへ弟が現れた。
「兄上。どうでした? オリーヴ嬢とは話が弾みましたか?」
能天気に俺に声をかけてくる弟のロイク。くそっ、コイツの所為で!
◇◆◇◆◇◆
――1ヶ月前――
久しぶりに夜会に出た俺は、華やかな美人を見つけた。
情熱的な赤い髪、キラキラ輝く金色の瞳、大輪の薔薇のような笑顔――ドンピシャ、俺の好みのタイプだ。
猛禽類のようなギラギラした女達に囲まれることに嫌気が差して、長らく夜会に出席していなかったが、今日は来て良かった!
俺は一緒にいた弟ロイクに尋ねた。
「おい、ロイク。あの綺麗な令嬢は誰だか知ってるか?」
「えっ?」
ロイクは俺の視線の先を辿ると、
「ああ。あそこでスイーツを食べてる女性たちなら、ベルモン伯爵家の姉妹ですよ。18歳と17歳だっけな。1つ違いで仲の良い姉妹だそうですよ。二人とも私の婚約者のクラリスと親しいんです」
「そうなのか? あの綺麗な方の令嬢は姉か? それとも妹か?」
俺の問いに、ロイクは何の躊躇もなく言い切った。
「綺麗な方が姉のオリーヴ嬢ですよ。そうじゃない方が妹です」
「そうか。ベルモン伯爵家のオリーヴ嬢だな? 間違いないな?」
「はい。間違いありません。クラリスの親しい友人ですから、間違えようがありませんよ」
好みのタイプの女性を見つけて、俺は浮かれていたのだと思う。
この時、完全に失念していたのだ。弟ロイクの偏った美意識のことを――
◇◆◇◆◇◆
簡単に言えば、ロイクは極度の ”地味顔好き” だった。いわゆる ”ジミ専” というやつだ。
半年前、ロイクがとあるパーティで一目惚れした(兄弟揃って一目惚れ体質!?)令嬢は、おそろしく地味な女性だった。正直に言うと、もはや ”地味” を通り越して ”貧相” という印象すら受けた――さすがに口には出さなかったが。ロイクはこの令嬢に心底惚れ込み、彼女へ猛アタックをした。そうして、めでたくロイクの婚約者となったのが、アルノー伯爵家のクラリス嬢である。ロイクの目には、何故だかこの地味な令嬢が大変な美人に見えるらしい。
ロイクが、
「兄上。いくらクラリスが綺麗だからと言って、彼女に手を出さないでくださいよ」
と、俺に本気の牽制をしてきた時は本当に驚いた。
「そんな事をする訳がないだろう(んな地味女にキョーミねぇよ!)」
そもそも弟の婚約者に手を出すような男だと思われてるのか? 俺は。
弟よ。お兄ちゃんは悲しいぞ。
つまりだ。ロイクは嘘をついた訳ではない。俺の尋ね方が間違っていたのだ。
「綺麗な方の令嬢は姉か? 妹か?」と、いう俺の問いに、ロイクは己の感性に従い正直に「綺麗な方が姉のオリーヴ嬢で、そうじゃない方が妹です」と、答えたに過ぎない。ロイクから見れば「綺麗」なのは確かに黒髪黒眼の地味なオリーヴ嬢であり、華やかな色彩の(一般的な感性で言うところの)美人である妹のコラリー嬢は「そうじゃない」方なのだ。
ロイクの所為ではない。俺の雑な確認の仕方がいけなかったのだ。全て俺が悪い。
はぁ~、どうするべ~よ?
謝罪して婚約を撤回するチャンスは、初めてベルモン伯爵家を訪れた今日しかなかった、と思う。
なのに俺は言い出せなかった。
「本当に私でよろしいのでしょうか?」と、不安そうな目で俺を見つめたオリーヴ嬢に、とてもじゃないが「よろしくない! 私が一目惚れしたのは妹だ!」なんて言える訳ないだろう。
俺は鬼でも悪魔でもない。人間の心を持っている。何の落ち度も無いオリーヴ嬢を傷付けることなど出来ない。落ち度があったのは俺なのだ。
だが、このままオリーヴ嬢と婚約関係を続ければ、いずれ彼女と結婚することになる。
結婚だぞ! 結婚!! 一生、連れ添うんだぞ!?
どうすればいいんだ!?
俺が一人で身悶えしていると、ロイクが冷たい声で言った。
「兄上、欲求不満ですか? あまりガツガツするとオリーヴ嬢に嫌われますよ」
ちげぇ~よ!!
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