6 / 27
6 美醜逆転世界!?
しおりを挟む侍女のアンナが、やや呆れた口調で口を挟む。
「トメ様ったら、ご自分の事を『平凡』だなんて。そんな事を仰ったら、この国の女性達の反感を買ってしまいますわ。トメ様は本当にお美しいのですから、変な謙遜はなさらない方がよろしいですよ。ねぇ、ジルド様?」
アンナよ。何故、護衛のジルドに振る?
「ええ。私もそう思います。誰がどう見てもトメ様はお美しいのですから、『平凡』などと仰っては嫌味と捉えられてしまいます。お気を付けください」
えええぇ~!? この人たち本気で言ってるの!?
ここで彩音はある可能性に思い至った。
も、もしかして、ここは――美醜逆転世界!?
自分で立てた仮説に慄く彩音。
その日、アンナとジルドに王宮の中を案内してもらいながら、彩音は周囲を注意深く観察した。
この世界は美醜逆転世界なのか? いや、きっと違う――彩音の容姿はあくまで”凡庸”なだけであり、決して醜くはないはずだ。醜くはないはずだ。大事なことだから繰り返す。とにかく、確かめなければ。
先程から見ている限り、王宮にいる人間は美男美女率が異常に高い。
⦅ これって美醜逆転世界ではないって事じゃない? ⦆
彩音から見て美しい男女が多いのだ。普通に考えて王宮に不細工ばかり揃っている訳がない。つまり、彩音の感じる「美しい」と、こちらの世界の「美しい」は同じなのではなかろうか?
そんな事を考えながら歩いていると、回廊でポ~ッと頬を染めて何かを見つめている数人の若いメイドを見かけた。彼女達の視線の先をたどると、すごいイケメン騎士が警備をしている。
ふむふむ。彩音が「すごいイケメン」と感じる男性が、この世界でも女性を惹きつけている。うん、大丈夫だ。美醜逆転していない。
いや、ちょっと待て……そうだ! ラノベによっては「男性のみ美醜逆転」とか「女性のみ美醜逆転」とかいう変則的な美醜逆転世界もあったはず! う~ん、まだ安心は出来ない。
気分転換を図ろうと、彩音が「少し外を歩きたいわ」と言うと、アンナとジルドは王宮の東庭に連れ出してくれた。すると、庭の隅っこで3人の侍女が何やら揉めている。際立って美しい一人の侍女が、他の二人から詰られているようだ。彼女らは、庭にやって来た彩音達に気付いていない。
「貴女、ちょっと美人だからって、いい気にならないで!」
「私は、そんなつもりはないわ」
「ふん! 男どもにチヤホヤされて調子に乗ってるじゃないの!」
「どこが調子に乗ってるって言うの? 貴女たちは、美しい私に嫉妬してるだけじゃない! このブス!!」
「「何ですってぇー!?」」
「……ゴホンッ!」
ジルドが、わざとらしく咳払いをする。3人の侍女は一斉にこちらを見て、次の瞬間青褪めた。
「黒髪に黒眼!?」 「「聖女様!?」」 「「「失礼しましたー!!」」」
彼女達はそう叫ぶと、慌てて去って行った。
彩音はホッとした。この世界が美醜逆転世界ではないと確信できたからである。先程、彩音が「際立って美しい」と思った侍女は、どうやら美しさ故に嫉妬されている様子だった。つまり、彩音の感じる「美しい」と、こちらの世界の「美しい」は合致するということだ。
間違いない。やはり美醜逆転していない。良かったー!
きっと、この世界で彩音が「美しい」と認識されるのは、より遠い遺伝子を求める人間の生物としての本能の所為だろう――彩音は、そう結論付けた。
「トメ様、申し訳ございません。あのような見苦しい場面をお見せしてしまって。同じ王宮侍女として恥ずかしい限りでございます」
そう言って、アンナが彩音に頭を下げる。
「アンナが謝る事じゃないわ。それに女性の多い職場ではあんな事は日常茶飯事でしょう? 別に見苦しいなんて思わないわ。よくある事よ」
そう、よくある事なのだ。彩音は中・高一貫の女子校育ちだ。女子の世界はいつもゲリラ戦である。食うか食われるかなのだ。おそらくだが、きっと男子校よりもキツイと思う。
男って何だかんだ単純で可愛いとこがあるものね。
中・高と男子校に通っていた弟の学校話を聞いていても、そう感じた。
女子の世界は厳しい。ぼぉ~っと生きてたら生き残れない。女官や侍女やメイドといった女性がわんさか居る、この王宮もなかなか大変そうだ。女子校と違って男性が一緒に居る分、余計ややこしいかもしれない……。
27
あなたにおすすめの小説
召喚聖女の結論
こうやさい
ファンタジー
あたしは異世界に聖女として召喚された。
ある日、王子様の婚約者を見た途端――。
分かりづらい。説明しても理解される気がしない(おい)。
殿下が婚約破棄して結構なざまぁを受けてるのに描写かない。婚約破棄しなくても無事かどうかは謎だけど。
続きは冒頭の需要の少なさから判断して予約を取り消しました。今後投稿作業が出来ない時等用に待機させます。よって追加日時は未定です。詳しくは近況ボード(https://www.alphapolis.co.jp/diary/view/96929)で。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/937590458
聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います
菜花
ファンタジー
ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
【完結】平民聖女の愛と夢
ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。
乙女ゲームのヒロインなんてやりませんよ?
喜楽直人
ファンタジー
一年前の春、高校の入学式が終わり、期待に胸を膨らませ教室に移動していたはずだった。皆と一緒に廊下を曲がったところで景色が一変したのだ。
真新しい制服に上履き。そしてポケットに入っていたハンカチとチリ紙。
それだけを持って、私、友木りんは月が二つある世界、このラノーラ王国にやってきてしまったのだった。
【完結】慈愛の聖女様は、告げました。
BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう?
2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は?
3.私は誓い、祈りましょう。
ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。
しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。
後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる