13 / 24
13 イベントとやらを阻止
しおりを挟むマーガレット様のおっしゃる、リリヤとバルド様の「出会いイベント」なるものを潰さなければいけない。何処で、どういうイベントが起きるかを、マーガレット様から詳しく聞いている私に抜かりはなかった。
その日、私とバルド様が並んで歩いていると、目の前でリリヤが転んだ。今のは絶対ワザとですわよね。
私はサッと動くとリリヤの手を取って助け起こす。
「大丈夫ですか?」
「えっ?」
焦るリリヤ。私はにっこり笑って、そのままリリヤを彼女の取り巻きの男どもに引き渡した。一丁上がりである。
「何だ、あの女。フローラに礼も言わなかったな」
バルド様が不機嫌そうにおっしゃる。
「本当に。礼儀知らずですわね~。おほほ」
数日後。いつものように私とバルド様が並んで歩いていると、目の前でリリヤがハンカチを落とした。
私は急いでそれを拾うと、リリヤに声をかける。
「リリヤさ~ん。ハンカチを落とされましたわよ」
振り返ったリリヤが私を睨みつける。ほほほ、バルド様に拾わせようたって、そうはいきませんわよ。
「はい。ハンカチ」
私は、にこやかにリリヤにハンカチを手渡す。
「なんで貴女が……」
ブツブツ呟くリリヤ。
リリヤのこの態度を見て、バルド様がキレた。
「おい、お前。フローラに拾ってもらって礼も言わないのか? 本来、身分が上の者が下位の者の落とし物など拾わないのが当たり前だ。フローラは優しいから、お前ごときのハンカチを拾ってやったというのに、礼も言わないとはどういうつもりだ。俺の婚約者を侮辱するなら、ただでは済まさないぞ!」
リリヤの取り巻きの男子生徒達が慌てて間に入る。
「殿下、申し訳ありません。姫、いえリリヤはまだ貴族社会に慣れていないだけなのです!」
「殿下、リリヤに悪気はないのです!」
「殿下、どうかお許しください!」
必死である。貴方達、皆、婚約者がいらっしゃいますわよね? なのに、そんなにリリヤに入れ込んで…。女子生徒達が荒ぶるのも当然だわ。
更に数日後。私とバルド様がまたまた並んで歩いていると、突然、近付いて来たリリヤが、
「私、何だか気分が……」
と言ってヨロめいた。ワザとらしいったら、ありゃしない。
リリヤがバルド様の腕に縋ろうとしている! と気付いた私は、咄嗟にバルド様に抱きついた。
「!? どうした? フローラ?」
「バルド様~。私、急に眩暈がしてぇ~。あん、クラクラして立っていられませんわぁ~。助けて、バルド様~」
バルド様にしがみついたまま、超甘ったるい声を出す。我ながらキモイ。
「フローラ! しっかりしろ! すぐに保健室に連れて行ってやるからな!」
バルド様は焦った様子でおっしゃると、私を横抱きにして抱え上げた。キャッ! 逞しい!
バルド様に抱き上げられたまま、ちらとリリヤを見ると、取り巻きの男どもに、
「姫、気分が悪いの?」
「大丈夫か?」
と心配されていた。私の視線に気付いたリリヤが、ものすごい目でこちらを睨んでくる。どうやら怒りに燃えているようですわね。私はリリヤにだけ見える角度でベェ~ッと舌を出してやった。へんっ! ざまぁ!
「『出会いイベント』とやらを全て潰しましたわ」
放課後、西庭でマーガレット様に報告する私。
「フローラ、やったわね。これでリリヤはバルド殿下と親しくなるキッカケを失ったわ。もう大丈夫よ。殿下がリリヤを好きになる可能性は限りなく低くなったわ」
「マーガレット様! 私、頑張りましたわ!」
「偉いわ、フローラ。よく頑張ったわね」
わ~い! 褒められましたわ! マーガレット様に褒められると、木に登ってしまいそうである。
私もマーガレット様も、この時点で油断しきっていた。もう何も起こらない。安心安全な学園生活が送れると信じていたのだ。
ところが、その後暫くして、奇妙なことが起こり始めた。
移動教室などでうちのクラスが教室を留守にした後、戻ると必ず私の物が無くなっているのだ。それは教科書だったりペン入れだったり運動着だったりした。どう考えても、私への嫌がらせだろう。
私はその度に担任教師に届け出た。こういう事はいつ何処で何が無くなったか正確な記録を残すのが大事である。担任に届け出れば学園側に記録が残る。
ただ、私は担任には一つ一つ全てを報告したが、バルド様にはこれらの嫌がらせについて一切話さなかった。私が嫌がらせをされていると知れば、バルド様がおとなしく学園の調査を待つはずがない。犯人探しに乗り出した挙句、最終的に犯人が血祭りに上げられる可能性が高い。バルド様は王太子なのだ。権力者なのである。アブナ過ぎる。
しかし、とうとうある日、バルド様に見られてしまったのだ。ビリビリに引き裂かれた私の教科書を。その日、移動教室の後、自分の教室に戻った私は、無くなった物がないかチェックしていた。すると、机の中にあった私の教科書が引き裂かれてボロボロになっていたのだ。周りに見られないよう、すぐに机の中に戻そうとしたのだが、運悪くバルド様に見つかってしまった。
「おい、それどうしたんだ?」
「えっ? あの……」
咄嗟に言葉が出て来ない。バルド様が私の手からボロボロの教科書を取り上げる。
「これ、お前の教科書だろ? 誰がこんな事を!?」
「……」
「フローラ。大丈夫か? これって嫌がらせだろ? 畜生! 誰だ!?」
「……」
「フローラ。もしかして初めてじゃないのか?」
仕方ない。白状しますわ。
「……はい。破られたのは初めてですが、ここのところ学園で私の物が無くなるという事が続いておりまして……」
「続いてた? なぜ俺に言わなかった?」
「担任には全て報告してありますの。学園側に調査を任せようと思いまして。その……バルド様はきっととてもお怒りになると思ったので、言わない方がいいかな~なんて」
「フローラが嫌がらせなんかされたら怒るに決まってるだろ!」
「はい……」
まぁ、そうですわよね。
「もっと俺を頼れ! 俺はお前の婚約者だろ?」
「はい」
「お前が心配するような暴走はしない。怒りに任せてムチャクチャな事をしたりはしない」
本当かな~? 犯人を見つけても、いきなり処刑とかやめてくださいね。
「あの、この教科書を持って担任に届け出に行きます。バルド様、一緒に来てくださいますか?」
「勿論だ。今までの記録を俺も見せてもらうぞ。いいな?」
「はい」
私とバルド様は、連れ立って担任の元へ行った。
200
あなたにおすすめの小説
無口な婚約者に「愛してる」を言わせたい!
四折 柊
恋愛
『月の妖精』と美貌を謳われるマルティナは、一年後の結婚式までに無口で無表情の婚約者トリスタンに「愛してる」を言わせたい。「そのためにわたくしは今、誘拐されています!」
生贄は囚われの愛を乞う~棄てられ令嬢と狼将軍~
マチバリ
恋愛
美しい見た目ゆえ、領主の養女となったレナ。
有用な道具に仕立てとする厳しい教育や義兄の異常な執着にうんざりしながらも何もかもを諦めて生きていた。
だが、その運命は悪政を働く領主一家を捕えに来た<狼将軍>と呼ばれる男の登場により激変する。
私は愛する婚約者に嘘をつく
白雲八鈴
恋愛
亜麻色の髪の伯爵令嬢。
公爵子息の婚約者という立場。
これは本当の私を示すものではない。
でも私の心だけは私だけのモノ。
婚約者の彼が好き。これだけは真実。
それは本当?
真実と嘘が入り混じり、嘘が真実に置き換わっていく。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字は存在します。
*不快に思われれば、そのまま閉じることをお勧めします。
*小説家になろうでも投稿しています。
逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます
黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。
ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。
目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが……
つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも?
短いお話を三話に分割してお届けします。
この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。
それを愛とは呼びたくない
有栖紫苑
恋愛
リィアディにはちょっとした前世の記憶があった。
前世のようにはならない!!
そう意気込んだものの、夜会で見覚えのある瞳とかち合ってしまい……。
怯えて逃げる公爵令嬢とそれを追いかけ回して愉しむ皇子のラブコメディ。
長期連載用で書いていたものを短くしたものなので、読みづらい部分があるかもしれません。
「小説家になろう」様にも重複投稿しております。
恋の締め切りには注意しましょう
石里 唯
恋愛
侯爵令嬢シルヴィアは、ウィンデリア国で2番目に強い魔力の持ち主。
幼馴染の公爵家嫡男セドリックを幼いころから慕っている。成長につれ彼女の魔力が強くなった結果、困った副作用が生じ、魔法学園に入学することになる。
最短で学園を卒業し、再びセドリックと会えるようになったものの、二人の仲に進展は見られない。
そうこうしているうちに、幼い頃にシルヴィアが魔力で命を救った王太子リチャードから、
「あと半年でセドリックを落とせなかったら、自分の婚約者になってもらう」と告げられる。
その後、王太子の暗殺計画が予知されセドリックもシルヴィアも忙殺される中、シルヴィアは半年で想いを成就させられるのか…。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。なろうサイトでは番外編・後日談をシリーズとして投稿しています。
あなたより年上ですが、愛してくれますか?
Ruhuna
恋愛
シャーロット・ロックフェラーは今年25歳を迎える
5年前から7歳年下の第3王子の教育係に任命され弟のように大事に大事に接してきた
結婚してほしい、と言われるまでは
7/23 完結予定
6/11 「第3王子の教育係は翻弄される」から題名を変更させて頂きました。
*直接的な表現はなるべく避けておりますが、男女の営みを連想させるような場面があります
*誤字脱字には気をつけておりますが見逃している部分もあるかと思いますが暖かい目で見守ってください
王妃候補は、留守番中
里中一叶
恋愛
貧乏伯爵の娘セリーナは、ひょんなことから王太子の花嫁候補の身代りに王宮へ行くことに。
花嫁候補バトルに参加せずに期間満了での帰宅目指してがんばるつもりが、王太子に気に入られて困ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる