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転生超人 仮面ブレイバー

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「きゃああああああああああああああ!」

薄暗いスラムの通り、そんな場所に似つかわしくない格好の女性が必死に何かから逃げる。
そんな女性の後ろからは、女性をあざ笑うかのように下卑た笑いを零す影が徐々にその距離を詰める。

「フフフフフ、待ってたんです、ずっとぉ! サロンでこの私を笑い者にしたクソどもをこの手で好きに出来る瞬間を! さぁ惨めに、滑稽に、出来の悪い演目の様に逃げ惑いなさい! ほらほら、もっと必死に逃げなければ、貴女の身体から血と言う血を頂きますよぉ♪」

 女性の必死の逃走も空しく、気付けば女性は袋小路に迷い込んでいた。背後に逃げ場などなく、目の前からは目を赤く光らせ、鋭い牙を見せつけるように笑う男が少しずつ近づいてくる。

「お、お願いよエドワード! ワタクシは、ワタクシだけは貴方の味方ですわ! ですから!」
「私の味方? 私の味方は、魔王様ただお一人! もう逃げ場等ありませんよ? この私の髪型を笑いモノにし、社交界で恥をかかせた罪を償いなさい!」

 そう激高し、エドワードと呼ばれた男が女性に手を伸ばした瞬間、エドワードの脇をすり抜ける様に一陣の風が吹き、次の瞬間エドワードは何物かに腕を掴まれる。

「なっ!? 何者!?」
「事情はよく知らない、だが、これ以上はダメだ…」
「邪魔を… するなぁっ!」

 エドワードは掴まれた腕を振り払うように強引に暴れると、エドワードの腕を掴んでいた男はすぐに手を放し、襲われていた女性の前に立つ。

「あ、貴方は…?」
「貴様! 何者だ!」

背後の女性と正面に立ち警戒するエドワードの質問に、男は黙って右手に持っていた物を腰に当てる。
腰に押し当てられた物からは帯が飛び出し、その帯は男の腰に当てられた物を固定する様に巻き付く。
男は両手を前に突き出し手を広げると、その手をくるりと回転させ左手で拳を作り腰に、右手を真っ直ぐと伸ばし左斜め上へと掲げる。

「何者だと言っている!?」
「…」

 尚も自分を無視する男に、エドワードは怒りをあらわに怒鳴ると、男は今までの沈黙を破壊するほど気合の入った声で叫んだ。

「変! 身!!」

 男がそう叫んだ瞬間、まばゆい光が男を包み込み、思わずエドワードは右手で光を遮るように覆い隠す。
 そして光がやむと、目の前には漆黒のレザーアーマーで身を包んだフルフェイスのヘルムを被った男が立っていた。

「な、何かと思えば… そんな装備で私に勝てるとでも?」
「…」
「私… 無視をされるのが一番嫌いなんです!!」

 エドワードが怒り、漆黒の男に飛びかかろうとした瞬間だった。

「かひゅっ…」
「…ブレイバー… パンチ…」

 エドワードの胸には男の拳が刺さっていた。
 そして男がエドワードから拳を引き抜くと、エドワードは眩い光に包まれ始める。

「何故!? 再生しない!? 再生しないぞ!? 私は不死身のはずだ! どんな傷でも再生するんだ! なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだーーーーーーーーーーー! 貴様! 貴様貴様貴様貴様あああああ! 何者だぁあああああああああああああああ!」

 そんな叫びを最後に、エドワードは消滅し、漆黒の男は、ただ静かにその場を立ち去ろうとする。
 そんな男を、先程迄襲われていた女性が熱のこもった瞳で見つめながら声を掛ける。

「貴方様は… いったい…」

 数秒の沈黙
 女性のゴクリと唾をのむ音が聞こえるのではないかと錯覚するほどの静寂
 漆黒の男は、女性に背を向けたまま、わずかに振り向くそぶりをし、赤く輝く瞳が特徴的なフルフェイスのヘルムの中でただ一言だけ答えた。

「仮面… ブレイバー」






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